職種の違った同業者
そんなこんなで無事、メボラスホテルにやってきたアルテミス達。
確かに、歩いて20分程と、少し遠くはあったが『レウス』さんの言っていた通り、凄く綺麗な宿であった。
そして、中に入ったアルテミス達は早速従業員に歓迎される。
「ようこそ、お越しいただきました」
「す、凄い」
そう言って目を輝かせるアルテミス。今までの宿は目を伏して、冷たい目線でこちらを見てくる人が大半だったのにも関わらずーー。
「アルテミスさんって安上がりで良いですね」
冷たい目線でアルテミスを見るアリスはボソッと呟いた。
「えーっと、2名様でよろしいですか?」
そう尋ねる従業員にアルテミスは困惑した。確かにさっきまで3人居たはずなのだが……。
「あああアルテミスさんっ!シュラインさんが居ませんよっ」
「え?」
さすがに、シュラインがいきなりどこかへ行ってしまう程、自由奔放な人だとは思っていなかった。
その時、どこかから誰かがこちらに歩いてくる音がした。
「あっ!シュラインさん何してるんですか?それに、その服……」
確かに、シュラインの方を見ると違和感があった。
私服ではなく、いつのまにかドレスにハイヒールを履いていたのだ。そして、微笑んで言う。
「ごめんなさい、少しお手洗いに……」
「本当……びっくりさせないでください」
ため息混じりにアリスは言う。
「ごめんなさい。服を汚してしまったもので」
「それは仕方ないですがーー」
それから、アリスを宥めるように従業員は言う。
「えーっと、では3人ですね。お部屋は3人分ご用意出来ますが」
「それでは、私とアルテミスさん。アリスさんの個室でよろしいでしょうか」
微笑みながら言うシュラインにアリスは尋ねる。
「全員個室でも良くないですか?」
「でも、アリスさん。アルテミスさんが一人だと何をしでかすか分かりませんよ?不安じゃないんですか?」
「それもそうですね」
納得の様子を浮かべるアリス。
その3人の輪の中で一番呑気に見えて、一番震えていたのはアルテミスであった。
* * *
「ってことでアルテミスさん……」
「ななななんですか?」
無事チェックインしたアルテミス。そして、部屋に入って最初に言われたこの一言。アルテミスは覚悟を決めて返事をした。
「一緒に魔女を暗殺しましょう」
「は?」
魔女が魔女を暗殺するとは一体ーー。アルテミスは一瞬固まった。
「実は今日、この宿に魔女が泊まっているんです。この後のディナーでその魔女を暗殺するんです。そして、ついでに先ほどのレウスさんもぱぱっとやっちまいましょう」
その笑顔にはどこか狂気じみたものが入っていてーー。
「あれ、レウスさん?あの人なら、大丈夫そうだったけど」
「まぁ、依頼主の件については大丈夫ですけど。あの人にはまた違った罪があるのですよ。知っていますか?あの人の過去を」
そう尋ねられるも、アルテミスは全く身に覚えがなかった。
「全然?」
「あの人、職種の違った、私の同業者です」
「それってどう言うこと?」
アルテミスさんの質問に、ラデルは簡潔に言った。
「普通の暗殺者ってことです。まぁ、私の考察を聞いてください」
暗殺者ポイント:
その一、結婚していない
その二、理由に同情を求める部分が多すぎた
その三、表情とシュラインの勘
「それに、気になりませんでしたか?何故、少し離れたここの宿を勧めたのか」
「だって、ここ、コスパが良いんでしょ?」
その返事に、ラデルはため息を吐く。
「全然分かってませんね。ここら辺は高級住宅街があるおかげかどこも景気が良く、コスパが良いホテルなんてどこにでもあります。お金持ちが多いせいか魔女が沢山居てこまっちゃいますよ。元々、ここに住んでいたくらいですし」
「じゃあ、さっき突然着替えた理由って」
「えぇ、丁度依頼されていた魔女が居たので……でも、邪悪な物が服に付いてしまったのです。ですから、仕方ないので社交用の服に着替えたのですよ」
その言葉に、余計にアルテミスの背筋が凍る。
「逃げて良い?」
「ダメです」




