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ようこそ魔女探偵事務所へ  作者: 大拓 陽
The Secret Kept by the Embers

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32/35

職種の違った同業者

 そんなこんなで無事、メボラスホテルにやってきたアルテミス達。

 確かに、歩いて20分程と、少し遠くはあったが『レウス』さんの言っていた通り、凄く綺麗な宿であった。


 そして、中に入ったアルテミス達は早速従業員に歓迎される。

「ようこそ、お越しいただきました」


「す、凄い」

 そう言って目を輝かせるアルテミス。今までの宿は目を伏して、冷たい目線でこちらを見てくる人が大半だったのにも関わらずーー。


「アルテミスさんって安上がりで良いですね」

 冷たい目線でアルテミスを見るアリスはボソッと呟いた。


「えーっと、2名様でよろしいですか?」

 そう尋ねる従業員にアルテミスは困惑した。確かにさっきまで3人居たはずなのだが……。

「あああアルテミスさんっ!シュラインさんが居ませんよっ」


「え?」

 さすがに、シュラインがいきなりどこかへ行ってしまう程、自由奔放な人だとは思っていなかった。


 その時、どこかから誰かがこちらに歩いてくる音がした。

「あっ!シュラインさん何してるんですか?それに、その服……」

 確かに、シュラインの方を見ると違和感があった。


 私服ではなく、いつのまにかドレスにハイヒールを履いていたのだ。そして、微笑んで言う。

「ごめんなさい、少しお手洗いに……」


「本当……びっくりさせないでください」

 ため息混じりにアリスは言う。

「ごめんなさい。服を汚してしまったもので」


「それは仕方ないですがーー」

 それから、アリスを宥めるように従業員は言う。

「えーっと、では3人ですね。お部屋は3人分ご用意出来ますが」


「それでは、私とアルテミスさん。アリスさんの個室でよろしいでしょうか」

 微笑みながら言うシュラインにアリスは尋ねる。


「全員個室でも良くないですか?」

「でも、アリスさん。アルテミスさんが一人だと何をしでかすか分かりませんよ?不安じゃないんですか?」


「それもそうですね」

 納得の様子を浮かべるアリス。

 その3人の輪の中で一番呑気に見えて、一番震えていたのはアルテミスであった。


 * * *


「ってことでアルテミスさん……」

「ななななんですか?」

 無事チェックインしたアルテミス。そして、部屋に入って最初に言われたこの一言。アルテミスは覚悟を決めて返事をした。


「一緒に魔女を暗殺しましょう」

「は?」

 魔女が魔女を暗殺するとは一体ーー。アルテミスは一瞬固まった。


「実は今日、この宿に魔女が泊まっているんです。この後のディナーでその魔女を暗殺するんです。そして、ついでに先ほどのレウスさんもぱぱっとやっちまいましょう」

 その笑顔にはどこか狂気じみたものが入っていてーー。


「あれ、レウスさん?あの人なら、大丈夫そうだったけど」

「まぁ、依頼主の件については大丈夫ですけど。あの人にはまた違った罪があるのですよ。知っていますか?あの人の過去を」


 そう尋ねられるも、アルテミスは全く身に覚えがなかった。

「全然?」


「あの人、職種の違った、私の同業者です」

「それってどう言うこと?」

 アルテミスさんの質問に、ラデルは簡潔に言った。


「普通の暗殺者ってことです。まぁ、私の考察を聞いてください」


 暗殺者ポイント:

 その一、結婚していない

 その二、理由に同情を求める部分が多すぎた

 その三、表情とシュラインの勘


「それに、気になりませんでしたか?何故、少し離れたここの宿を勧めたのか」

「だって、ここ、コスパが良いんでしょ?」

 その返事に、ラデルはため息を吐く。


「全然分かってませんね。ここら辺は高級住宅街があるおかげかどこも景気が良く、コスパが良いホテルなんてどこにでもあります。お金持ちが多いせいか魔女が沢山居てこまっちゃいますよ。元々、ここに住んでいたくらいですし」


「じゃあ、さっき突然着替えた理由って」

「えぇ、丁度依頼されていた魔女が居たので……でも、邪悪な物が服に付いてしまったのです。ですから、仕方ないので社交用の服に着替えたのですよ」

 その言葉に、余計にアルテミスの背筋が凍る。


「逃げて良い?」

「ダメです」


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