会議室に置かれた水晶
そうして、死体を幾つか見た後、シュラインは二人の方を見て言った。
「傷の付き方的に、魔物による強襲だと考えるのが妥当ですね」
「魔物?」
アルテミスは耳を疑った。
まさか、こんな室内で魔物に襲われるだなんてーーと信じられなかったからだ。
「これ……」
そう言ってシュラインが見せてきたのは、腕に付いた噛み痕。
「一応、検視にも出しておきましょう」
それから、シュラインは丁度駆けつけた警察に引き渡した後、第一発見者を別の部屋に案内した。
そして、第一発見者の彼女は一番最初に震えた声で言ったーー
「急に、魔物に襲われたんです」
それを聞くシュラインの姿はとても良く落ち着いていた。
「それで……それでーーあの人は私を庇って」
「では、その前に彼が何がしていたかはご存じで?」
アリスの質問に、彼女は首を横に振った。
「でも、部屋に魔物が居た痕跡は無かったよね」
* * *
これ以上彼女も答えられなさそうだったので、アルテミス達は被害者が居たという部屋に足を運んだ。
「別に、魔物臭もしませんね……」
不思議そうに、アリスは言った。
その後、部屋のあらゆる所を探ってみたが、特に魔物が隠れられそうな場所は無かった。
でも、アルテミスが不思議に思ったものがある。
それは、棚の中に置かれていた『水晶』であった。
「何でこんな所に……」
その声を聞いたシュラインとアリスは、アルテミスに近寄って、アルテミスと同じく水晶を見つめた。
「確かに、会議室らしきこの部屋に水晶が置かれているのは少し変ですね」
少し見つめていると、アルテミスは水晶の下に刻まれたある紋様がちらっと見えていることに気がつく。
「ねぇ、シュライン。さっき使ってた手袋。貸してくれない?」
「えっ……あれは、汚いのでもう使わないでください」
シュラインは引き気味に言う。
「じゃあ、違う手袋とかもってない?」
そう聞くと、シュラインはカバンの中から新品の手袋を取り出し、アルテミスに差し出した。
その手袋を付けたアルテミスは、ゆっくりと水晶を持ち上げ、その土台の裏を見る。そして、ため息混じりに言った。
「やっぱり……」
「どうかしました?アルテミスさん」
アリスが不思議そうに尋ねる、すると、アルテミスよりも先にシュラインが答えた。
「よく、魔女が使う手口ですよ。この紋様は呪術です。恐らく、遠隔で幻想の魔物を召喚。そして、襲わせた」
(何で、この人こんな魔女に詳しいの……?)とアリスが思ったのも束の間。
後ろの扉が大きな音を立てた。
すぐに後ろを振り返ると、そこに居たのはユーラを確保させに行かせた警備員達。
「ーー間に合わなかった?」
諦め半分で、シュラインが尋ねると、警備員達は申し訳なさそうに頷いた。
「今すぐ、ユーラを探しに行きましょう」
きっぱりと言ったシュラインは、そのまま早足で外へと出ようとした。
「何で、そんなにユーラにこだわるんです?」
どうやらアリスはまだ、ユーラに感情移入しているようだった。




