突然の死亡事件
トイレに着くと、シュラインは本当にトイレの個室に入っていった。
それから、トイレを済ませたシュラインは手に石鹸を取り、手を洗い始める。
「本当に、トイレ。行きたかったんだ……」
引き気味にアルテミスが言うと、何か文句があるのか、と言いたげにシュラインはこっちを見てきた。
「それで、シュライン……うーん、ラデル?ユーラに何かあったの?」
「えぇ、それはとても良く分かりやすかったですよ。長年死ぬ思いで魔女と戦ってきた私に勝てるとでも思っているのでしょうか」
ユーラが、シュラインの正体を知るはずも無いのに……。
「全てが嘘で塗りつぶされたようなあの動き。しかし、それは洗練されたものでは無かった」
暗い声で冷静に言う彼女。
ーーでも、その時。
誰かが、廊下で悲鳴をあげた。そして、二人は目を見合わせる。
現場にいたのは思ったよりも悲惨な人の姿だった。その周りには何人かの人が屯っていてーー。
「そこを離れなさい」
いつもより厳しめな声で言ったシュラインは人の間を割りあって倒れ込んだその人に近づく。
「Heel」
小さい声でシュラインは詠唱し、何度も魔法をかけ続けるも、その人が回復する様子は全くと言って良いほどに無かった。
謝りつつ人の間を割り込むアルテミス。床に倒れ込んだその人を見た時に何気なく発した最初の一言は「あ、死んでるね」だった。
空気を読まない発言に周りは騒然とし始め、周りは混乱状態となっていった。
それを聞いたシュラインはアルテミスを睨みつけて、誰にも聞こえないくらいの声で呟いた。
「これだから魔女は……」
その後、すぐさま駆けつけた警備隊により、周りの人たちを一旦引かせることに成功。
そのまま、アリスを呼び、第一発見者とその死体。そして、魔女探偵事務所一同は近くに開いていた会議室に集まった。
「アリスさん。ユーラさんはどうしました?」
「……普通に、席を少し外すから待っててと」
平然と答えるアリスに対して、シュラインは顔をしかめた。そして、警備員に言う。
「今すぐ上級第三会議室へ行ってユーラを取り押さえてきてくださいませんか?」
でも、警備員は困った顔をした。
「我々の地位ではどうにでも……」
「つべこべ言わずに早く取り押さえてくださいます?」
イラつき気味にシュラインは笑顔で尋ねた。
「は、はぃ!」
そのまま警備員は一斉に走り出していった。
「それでは、遺体の確認からですね」
早速準備に取り掛かろうと手袋を装着したシュラインにアルテミスは尋ねた。
「聞き込み調査が先じゃないの?」
「聞き込み調査なんて時間があればいつでも出来ます。死体は時間経過で腐敗など、変わってきてしまうのでこちらが先ですよ」
何故、こんなにも慣れているのか、そう思ったのはアリスただ一人だけであり、それと同時に尊敬を覚えた。
(お金持ちで、探偵経験も豊富っ!私を養ってくれないでしょうか……)
「でも、シュライン。私もアリスもそういうことやったこと無くってさ……」
気まずそうにそう告げたアルテミスを見てシュラインは優しそうに言った。
「大丈夫です。そんな大したことをするわけでは無いので……二人とも見といてください」




