本来の要件
「ってわけで……」
やっとレインから解放され、アリス達と合流したアルテミスは、気まずそうに今までの話を全て伝えた。
「え、アルテミスさんってシアトル財閥で働いてたんですか!」
アリスは目を輝かせた。
「まぁ『魔女』だけどね……」
「でも、私のお母さんですら、そこら辺の下流貴族との契約しか結べませんでしたよ」
それは、ある意味お母さんを侮辱しているようにも受け取れるがーー。
それよりも、隣でアルテミスを睨んでいるシュラインこと、魔女暗殺屋が気になって仕方がない。
(殺意を感じる……)
「それで、アルテミスさん!シアトル財閥はやっぱりお金持ちなんですか?良い人が多くて?人望も手厚いですし……」
「まぁまぁ、その話は良いよ……」
アルテミスはそう言って、話を濁す。
「良くない!ですけど、そもそも、何故私たちはシアトル財閥に来たんでしたっけ?」
「引っ越すためですよ。リット・シアトルさんの聞き込み調査をしに来たのでしょう」
落ち着いた声で、微笑んでシュラインは言う。
「そうでした!……でも、アルテミスさん、レインさんとはあまり関係が良くなさそうですよね。話し方が……」
確かに、アルテミスがレインの愚痴をちょくちょく話しつつ伝えていたが、関係が良くないどころじゃない。大っ嫌いである。
「でも、良い人が居るよ。シアトル財閥で人間性のかけらもないのはレインだけだから」
自慢げにアルテミスは言った。
ーー「って訳で、僕が呼ばれたんですか?」
目の前に立っていたのは、温厚そうな男性。シアトル財閥本家の血を引き、確かリットといとこの関係だったはずだ。
「それにしてもあなた方、とても運が良いですね。僕、普段はこっちではなくて、地方の方で働いているんですよ。でも、今日は偶然シアトル財閥本部に居たのです」
温厚な声で言う彼に、アリスは冷たく尋ねた。
「それで、貴方は誰なんです?」
「僕の名前は、『シアトル・デューラ』です。少し呼びづらいので、もしよければユーラとでもお呼びください」
微笑んで言う彼に、親しげにアルテミスは尋ねた。
「それで、ユーラ君。リットちゃんについては詳しいでしょ?」
「ユーラ君ではありません。もう大人なので……」
「じゃあ、ユーラさん」
いじけたようにアルテミスはボソッと返した。
「えぇ、いとこであり、幼馴染ですから……」
少し、悲しげにユーラは声のトーンを落とす。それもそうだ、死去したとなれば、彼がどれだけの苦痛に襲われたのか。
「……大丈夫ですか?」
ユーラの目から滴る涙を見て、アリスはハンカチを渡した。
「えぇ……」
「それで、リットさんのことですが……」
シュラインがそう呟くと、アリスはシュラインの方を見て、悲しげに言った。
「今じゃないでしょ!」
それを聞いたシュラインは一瞬ユーラを睨みつけて、その場から立ち上がった。
「ねぇ、アルテミスさん。私、お手洗いに行きたくなってしまって……、一人では怖いので一緒に付いてきてはくれませんか?」
まぁ、なにかしら話したいことがあるのは分かるが……いくら何でも、人柄が変わりすぎなのではなかろうか。
アルテミスが、アリスの方を向くと頷いたので、アルテミスはシュラインの言われるがまま付いていくことにした。




