1年以内に魔女探偵事務所は魔女名探偵事務所となります!
アルテミスの目の前に出された紅茶。
その中には毒が入ってるんじゃないかと思えるほど、空気は張り詰めていた。
「それで、契約放棄の代価っていうのは……」
不安気な声で、アルテミスは尋ねる。
「どうやら、心当たりがあるようで……。それにしても、あれから何があったのかは知りませんが、人間と随分仲良くしているみたいですね『魔女』なのに……」
それから、レインはアルテミスを見下す様に睨みつけた。
いつだって魔女は差別の対象、これくらい慣れたものだ。でも、レインの言い方にはやはりムカつく。
こちらの事を完全に下に見ているのだ。
そういえば、昔からこいつはそういう奴だった。外には良い顔をして、中には恐ろしい物を抱えている。
前の総責任者に思い入れがあったせいか、絶対にこの人だけには総責任者にはならないで欲しいと思っていた。
だって、こういうことをしていると、結局どういう結末になるのか、アルテミスは十分良く分かっていた。
アルテミスだけではなく、魔女なら誰だって分かるはずだ。
「ところで……契約放棄の件やその他色々含めて、貴方には残り、5億円の負債がありますが。そんなのが払えるほどお金持ちになっているとはお見受けできませんね」
レインは鼻で笑った後、大きく息を吸ってから言った。
「どうします?また、シアトル財閥で雇ってあげても……」
「結構ですっ!誰が、こんな意地汚い所で働きますか」
「は?」
レインは、耳を疑った。
(何が、シアトル財閥が意地汚い所だって?)
「それに、稼ぎはありますので。まぁ、稼げてはいないですけど……」
「そうかそうか、『魔女』は別の財閥にでも泣き寝入りしたんだな。それで、さっきの小娘達にいじめられたと」
何故、自己完結させようとするのか……。これは、一周回って人を悪い立場に持っていく才能が伺える。
「いじめ、というのは心当たりが無いんだけど」
「だって、先ほど下で二人の少女に……」
「あれは同僚ですってば」
「同僚?会社勤めでもしているのか?」
「どうも、魔女探偵事務所の事務所長兼探偵のアルテミスですが、な に か?」
それを聞いたレインはアルテミスを嘲笑った。
「君が探偵?無理だろ……どうせ、すぐ破産して潰れるに決まってる」
「何言ってんの!魔女探偵事務所はこれから街一番……いや、やっぱそれは嫌だな……。誰もが名前を知っている探偵事務所になる予定なんですっ!」
アルテミスは勢いよく椅子から立ち上がり、レインに訴えた。
「じゃあ、分かったよ。本当に名探偵事務所になったら負債の件は帳消しにしてやる。でも、逆に破産した時はシアトル財閥で働いて貰うからな。期限は1年間……いや、可哀想だから3年間……」
「いや、1年間で良いですっ!」
ムキになったアルテミスは勢いだけでそう言った。
「やけに強気だな……まぁ、3年あってもお前には無理だと思うが」




