契約放棄
「嫌だ〜、行きたく無い!」
シアトル財閥の持つビルの前で、アルテミスはそう駄々をこねていた。そもそも、アリスが無理やり連れてくるのがいけないのだ。
「何故、そんなに嫌がるんですか……アルテミスさん。シアトル財閥と話す夢でも見たんです?」
何故、シアトル財閥と話すのが前提として夢と定義付けられているのかは、気にはなる所だが……とにかく、なんとしてでも入りたく無いのだ。
ーー駄々をこね続けるアルテミスをビルの最上階から遠目で見ていたのは、シアトル財閥の総責任者『レイン・シアトル』であった。
そして、彼は言う。
「あの娘を連れて来い、他のは来客室だ」
彼の命令を聞いた部下は、即座にビルの下へと魔法用エレベーターを稼働させた。
そして、彼らがアルテミスの居る入口に付いた時、無言で少女から奪いさり、お姫様だっこでアルテミスを持ち去っていったのだ。
それを見たアリスは一瞬何が起きたのか戸惑ったが、もう一度下を見ると、そこにアルテミスは居なかった。
「これはもしかして、お持ち帰りされてしまったのでしょうか」
何が起きたのか、何となく察して行ったシュラインであったが、何となく場を誤魔化すようにそう言ってみた。
すると、背後からもう一人の部下が近づいてきて言う。
「どうぞ、こちらへ……」
でも、アリスは黙ってはいられなかった。
「アルテミスさんはどこにやったんですか!」
「アルテミスさんは、我々シアトル財閥との魔女契約を放棄し、此処を出て行きました。その対価を払ってもらうため、しばらくは面会することが出来ません。
真剣な顔で言う部下に、アリスはそれを信じたが、それでも、情報量が多すぎて良く分かって居なかった。
* * *
一方で、アルテミスは、叫び声を上げていた。
「ぷぎゃーー!お願い、離してってば〜、私何もしてないよ!?」
でも、アルテミスを持ち上げたままの部下達は、何振り構わずそのままレインの元へとアルテミスを届ける任務を遂行させた。
「ご苦労さん」
と、レインは円満な顔で言う。
それを見て、やっとお姫様抱っこから会報されたアルテミスは背筋をピンと伸ばした。
「さっそくだけど、契約の件について話そうか。『魔女』さん」
レインの顔は笑っているのにも関わらず、目に光など一切無い。その瞳はアルテミスを従順させるような黒い霧のようなオーラを放っていた。




