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ようこそ魔女探偵事務所へ  作者: 大拓 陽
Crimson Hidden in the crystal

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22/37

黒歴史

 それから、消えた少女を探す依頼はどこへいったのやら、魔女探偵事務所は多忙を極めていた。

 占い師の親族を探すための文献を集め、調査していたのだ。


 そんなの、どうだって言いわけない。だって、アリスはあの日から事あるごとに背筋が凍って、今すぐここから引っ越したいのだから。

 この間なんか、アルテミスがコーヒー豆を挽く音だけで気絶しかけた。


 毎晩毎晩、占い師に呪われるのではないかと、不安で仕方が無いのである。

 よく思えば、アルテミスがこんなに頭がおかしいのだって、それが原因なのでは……。

「は?今、何か私に良くない考えを持ったでしょ。そんなの、窓の外に、投げ捨てておいて」


 部屋を箒で綺麗に掃き掃除していたアルテミスは、アリスを睨みつけた。なんで、こういう時だけ、勘が働くのか、意味が分からない。

「そんなこと、ありません……。それよりも、それ、飛行用の箒じゃありません?」


「そうだけど……。何が問題なの?」

 まぁ、言われてみれば、特に問題は無いのだが……。

「なんか、気持ち悪いなって……」


 その時、部屋の角でシュラインが叫んだ。

「あった!ありましたよ」

 シュラインは、文献調査を始めてから3分でそれを見つけ出した。どうやら、魔女暗殺屋で身につけた反射神経は立てじゃ無いようだ。


「どれですか?」

 恐る恐る、本の中を覗き込むと、そこにはこう書かれていた。

『占い師である呪13N〈本名:リット・シアトル〉はーー〉


(呪13N…のろいさん…)

 その言葉をアリスは何回も頭の中で反復した。

 名前が、おかしくて、もしかしてNはずっと続いていき、無量大数までの呪いをかけられるんじゃないのか……。


 そうしている内に、いつの間にか固まっていたアリスを、シュラインは叩き起こす。

「大丈夫ですか?」

「だだだだだだいじょうぶ……ででででです」


 これは絶対に大丈夫などではない。

 シュラインもそんなこととっくに分かってたし、最近夜中にトイレに行けなさそうにしているのも目撃していた。


 何故、シュラインがそんなことを知っているのか。それは、誰にも分からない。

「シアトルって、もしかして、あのシアトル財閥じゃないの?」

 と、アルテミスが呟く。


 シアトル財閥は、アルテミスの住む地域でも最も見識の高い財閥であり、その名を知らぬ者など居ない。


「そういえば、あそこの娘さん。占い好きだったような……」

 アルテミスは思い出すように天井を見上げた。


 ーーそれは、大昔。シアトル財閥の専属の魔女として働いていた時のこと。

「ねぇねぇ。魔女さん」

「娘、僕は魔女だ。そう容易く話しかけるんじゃ無い」


 そこまで、思い出したところで、アルテミスは胃を痛めた。なにせ、大の黒歴史なのだから。

 グレた時代など思い出したいものでは無い。


「どうかしましたか?」

 アリスが、心配そうに尋ねるとアルテミスはごまかして笑った。

「いや、行くなら二人で行ってきなよ。私は、家で留守番してるから……ね?」


「その言動、怪しい……アルテミスさん、なにか隠してるでしょ」


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