契約条件
「それで?引っ越したいんですね……。良いですよ、でも都会の方となると金貨50枚くらいは必要ですが……」
不動産屋に来ていたアリスとシュラインは家の写真を見ようと、カタログを次から次へとめくっていた。
ちなみに、アルテミスは面倒臭いので置いてきただけである。
「まぁ、私くらいでしたら金貨50枚なんておてのものですけど……」
「でしたら、こちらなんていかがでしょうか」
不動産屋さんの手の先にあったのは、まさしく超大都会のど真ん中にあるような超高級立地に位置する建物だった。
それを聞いて、微笑むシュラインを見て、アリスは汗が止まらない。
「絶対嫌ですよ!シュラインさん、もっと安い所にしましょう」
「何故ですか?別にお金に余裕はあると……」
もしかして、彼女はアルテミスが魔女であるということを知らないのだろうか、こんな大都会に店なんて置いたら危ないと、アリスは心の中で一人歩きを始める。
もちろん、シュラインはアルテミスが魔女であることを知っている。だからこそ、大都会に出したらどうなるのか、興味深かったのだ。
はて、アルテミスの味方はどっちなのか……。
結局話し合いの元、決まったのは、中都市くらいのギルド近辺。そんな立地の商店街の中の一軒だった。
そして、契約をしようと、前の契約書を見た時、ふと不動産屋さんが声を上げた。
「これ……安くなる代わりに、契約条件が組み込まれていますね」
そう言って、指した先にはこう書かれていた。
『※この家はローン制ではありませんが、前の事件を解決してから退去をお願いします』
「アルテミスさん……」
怒り気味に呆れたように、アリスは言った。
* * *
「ようこそ〜、魔女探偵事務所へ」
扉を開けた途端、中にいたアルテミスがそう言った。
「なにが、『ようこそ〜、魔女探偵事務所へ』ですか!なんですか、これ」
そして、アリスは手に持っていた契約書をアルテミスに見せつけた。
すると、アルテミスは目を輝かせて言う。
「あ、あった!これだよこれ……、こないだ言ってた は な し」
「こないだ言ってた話って、もしかして……」
アリスが、恐る恐る尋ねると、その返答はアリスの予想通りだった。
「そう、事故物件の話」
恐怖のあまり、アリスの背筋が一瞬凍った。
すると、シュラインがアルテミスに尋ねる。
「それにしても、こんな依頼……何故、いままで調査してこなかったんです?」
「いや〜、それがさ……。あの占い師、全然情報が残って無くてさ……」
「それなら、市役所とかギルドとか調査に行けば良かったじゃないですか。きっと、役職登録時の情報が残ってるはずです」
アリスが、怒り気味に吐き捨てると、アルテミスは不思議そうな顔をして答えた。
「いや、それが残ってなかったんだよね……」
「は?」
「いや、は?じゃなくて……。本当に。それで、面倒くさくなって辞めたってわけ」
「いや、面倒臭いからって辞めないでください。貴方、それでも本当に名探偵ですか?」
怒り気味に言ったアリスの質問に、アルテミスは微笑んで頷いた。




