よく分からない人
「ふ、ふぅ……助かった。貴方、本当に攻撃してこないんですね」
その人はほっと安堵のため息を吐きながら、そう言った。
「だから言ったじゃん。私は魔女じゃ無いって」
偉そうにアルテミスは言う。
「魔女じゃ無いのではなくて、悪い魔女では無いということなのでは……?」
「それは、つまり魔女じゃ無いってことなんだよ」
アルテミスはその人に指を差す。
「判断基準がイマイチ分かりませんーー」
* * *
「コーヒー飲める?」
アルテミスはコーヒーポットにお湯を入れながら彼女の方を見る。
「はい、飲めますよ」
それから、淹れ終わったコーヒーをカップに注ぎ、その子の前に置く。それから、アルテミスは向かい側の席に腰掛けた。
すると、彼女は口を開く。
「改めまして、魔女暗殺屋の店長……ラデルと言います。先ほどが、飛んだご無礼を」
ため息混じりに言うラデルを慰めるつもりで、アルテミスはこう言った。
「全然大丈夫。私、全部避け切ったし、大したことなかったよ」
でも、内心ラデルは傷ついていた。魔女暗殺屋の店長なのに、こんな小娘魔女一人にかすり傷一つすら付けることが出来なかったのだ。それだからか、段々と頭痛がしてくる。
「なんか、頭に来ますね」
そう言ったラデルはそのままコーヒーを全部胃の中に流し込む。
「もう一杯いる?」
アルテミスの質問に、ラデルは吐き捨てるように返した。
「必要ありません。そんなことより早く聞き込み調査を始めましょう」
「え、私まだ飲み終わって無いんだけど」
ラデルはお構いなしに、そのまま部屋を出ていく。それを追いかけようとアルテミスはコーヒーポットを慌ててしまう。
コーヒーカップはどうにもならなかったので、そのまま持っていくことにした。
* * *
「それで、どんなことを聞いて欲しいんですか?探偵さん」
「それが……私も、例の魔女をさがしててですね…」
アルテミスはラデルを見上げるのをやめて、メモ帳を取り出した。それから、メモに書いてあった内容を読む。
「私の調べだと……魔女の髪は青黒くて、目は同じく青で瞳孔は白ですね。服装は私と同じくローブを着ていましたが、外に出る時は流石に他の服を着るかと……」
「魔女を探す探偵事務所なのは本当なのですね」
何の疑いもないラデルの言葉に、アルテミスは気まずそうに告げる。
「いや……、それは違うよ。何でも依頼は受け付けてるけど、別に魔女専門とかではない」
「じゃあ嘘ついてたんですか?」
「いや、違うよ?」
平然とした顔でアルテミスは答えた。
「だから、何なんですか」




