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ミステリー短編集  作者: 倉木元貴


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通話は切れてない 第2話

 決定的な違和感。



「理由は一つ」


 友孝は言った。


「音だ」


 二人が顔を上げる。


「引きずる音。ガタンという衝撃音。そして――あの声」


 小町が震える。


「やめて……」


 友孝は続ける。


「首吊りであんな音は出ない」


 了の目が鋭くなる。


「……確かに」


「しかも」


 友孝は言った。


「怜は“何もしてない”と言った直後だ。つまり、音は怜以外が立てた可能性がある」


 空気が凍る。


 了が低く言った。


「……第三者か」


 小町が首を振る。


「でも密室だよ!?」


 友孝は静かに言った。


「だから違う。問題は密室じゃない。アリバイでもない」


 二人が息を呑む。


 友孝はゆっくり言った。


「通話そのものが、成立していなかった可能性がある」


 誰も言葉を出すことができなかった。


 その一言が、すべてを崩し始めていた。


「……待て」


 最初に口を開いたのは了だった。


「通話が成立していないって、そんなことあるか?」


 友孝は頷いた。


「普通はない。でも“条件付き”ならあり得る」


 小町が不安そうに言う。


「どういうこと……?」


 友孝はスマートフォンをテーブルに置いた。


「確認する。昨日の通話。途中で違和感なかったか?」


 二人は黙る。

 了が目を細める。


「……あったな」


 小町も小さく頷く。


「私も……」


 友孝は言った。


「どこだ?」


 了が答える。


「後半だ。怜が急に静かになった」


 小町が続ける。


「呼びかけても、返事しなくて……でも、切れてなかった」


 友孝は頷いた。


「そう、そこがポイントだ。まず前提からいく」


 友孝は言った。


「スマホの通話っていうのは、“リアルタイム通信”だ」


 了が頷く。


「当たり前だな」


「でも」


 友孝は続ける。


「完全なリアルタイムじゃない。わずかに遅延がある」


 小町が言う。


「ラグ、みたいな?」


「そう」


 友孝は指を立てた。


「さらに、電波状況が悪いとどうなる?」


 了が答える。


「音が途切れる。遅れる。ノイズが入る」


「正解」


 友孝は頷く。


「じゃあ昨日の状況を当てはめる。怜は古いアパートにいた。電波は良くない可能性が高い」


 了が言う。


「だからノイズが出た」


「それだけじゃない」


 友孝は首を振る。


「問題はその後だ」


 小町が息を呑む。


「……返事がなかったところ?」


「そう」


 友孝はゆっくり言った。


「仮に、ある時点で、怜が通話できない状態になったとする」


 了が言う。


「死んだ、とかか」


「極端に言えばな」


 小町が顔を青くする。

 友孝は続ける。


「その後、俺たちはどうしてた?」


「……話しかけてた」


 小町が言う。


「返事もないのに」


「そうだ」


 友孝は頷く。


「つまり、俺たちは“一方的に話していた”可能性がある」


 了がゆっくり言う。


「……それだと、通話は?」


 友孝は答えた。


「繋がっているように見える」


「でも実際には“成立していない”。そして、決定的なポイントがある」


 友孝は言った。


「あの声だ」


 空気が張り詰める。

 小町が震える。


「……やめて」


「聞いたよな?」


 友孝は構わず続ける。


「“まだ、切れてない”」


 了が低く言う。


「……ああ」


「じゃあ考える」


 友孝は言った。


「その声は誰のものだ?」


 小町が小さく言う。


「……怜じゃない」


「そうだ」


 友孝は頷く。


「じゃあ第三者か?」


 了が言う。


「それしかないだろ」


 友孝は首を横に振った。


「いや」


 その一言で空気が変わる。


「違う。第三者じゃない」


 了が眉をひそめる。


「じゃあ何だ」


 友孝はゆっくり言った。


「あの声は、“リアルタイムのものじゃない”」


 二人はまた黙る。

 小町が顔を上げる。


「……え?」


 了が言う。


「録音……か?」


 友孝は頷いた。


「可能性は高い。つまり、通話中に“再生された音”を聞いていた」


 小町が息を呑む。


「じゃあ……私たち、生きてる人と話してなかったの?」


 友孝は静かに言った。


「少なくとも後半はな」


 友孝が思う違和感。


「ここで問題が出る」


 了が言う。


「録音なら、誰が再生した?」


 友孝は言った。


「そう。そこが最大の矛盾だ」


 小町が震える声で言う。


「だって……怜は一人だったんでしょ?」



 不可能性



 怜は部屋に一人。

 外部侵入なし。

 通話中に音声が再生された。

 怜はその時点で応答していない。


 了が低く言った。


「……おかしいな」


 友孝は頷く。


「だからこれはわ単なる心霊現象じゃない」


 一拍おいて。


「誰かが“意図的に仕組んだ”トリックだ」


 小町の顔から血の気が引く。


「……誰が?」


 友孝は答えない。

 代わりに、静かに言った。


「もう一つ、確認する。通話は四人だった。つまり、怜以外に三人いた」


 了がゆっくり顔を上げる。小町が固まる。


 友孝は言った。


「この中に、仕組める人間がいる」


 空気が凍りついた。

 ファミレスの空気は、さっきまでとは別物になっていた。


 小町は完全に黙り込み、了も腕を組んだまま動かない。

 友孝はゆっくりと言った。


「順番に潰す。可能性を全部」


 友孝はテーブルに手を置いた。


「まず。録音自体は可能か」


 了が答える。


「できるな。スマホなら簡単に録音できる。再生もできる」


 友孝は頷く。


「問題はそこじゃない」。通話しながら音声を流すことは?」


 小町が顔を上げる。


「え……?」


 了が答える。


「できる。スピーカーにすれば」


「あるいは別の端末でもいい」


 友孝は指を鳴らした。


「そう、つまり」


 通話中。

 別の音声を流す。

 それをマイクが拾う。


「これで“録音された声”を聞かせることは可能だ」


 小町が小さく言う。


「じゃあ……怜が自分でやったの?」


 友孝は首を振った。


「それは無理だ」

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