↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人工悪魔は影から  作者: イワスズタ
第1章 3/3 The Hollow Ordeal 人邪覚醒篇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
80/87

80.報告②

 ドアを開けた先には近藤が椅子に座っており、怜の帰りを待ちわびていたような表情で怜を出迎える。


「……辻井君、良く戻ってきてくれた」


「はい。そして、邪神の討伐に成功しました」


「やはり支配者がお決めになられた君が人工悪魔になってくれて、本当に良かったと思っている。一時的ではあるが、地球の危機を救ってくれて、ありがとう」


 近藤は心の底から怜がラティオマラを倒してくれた事を深々と頭を下げて感謝の気持ちを伝える。

 しかし、一つだけ言葉を受け入れられないものがある。

 それは倒したのはあくまでラティオマラが怜に与えた力がイレギュラーな形で邪神として覚醒し、その力で倒したものであって人工悪魔の力で倒したわけではない。

 人工悪魔自体の力は一般の能力者よりも数段上のポテンシャルはあるはずだが、今回人工悪魔の力だけで倒すことができなかったのは、自身の力不足が原因だ。

 せっかく支配者が何の特徴もないただの高校生を人工悪魔の適合者として任命してくれたというのに、現実では他の人よりも優れた能力を持つことができたことに対して己惚れていた。


「……いえ、俺なんか、まだまだ未熟ですよ。倒せたとしてもかなりギリギリでしたし、それに遊戯《ゲーム》を通しても自分が未熟だというのを痛いほどわからされた場面もありました」


「そんなに謙虚にならなくてもいいのに。君は世界を助けたスーパーヒーローなんだからさ」


「恐れ多いですよ。俺なんかが……」


 今の自分の気持ちを話し始めると、近藤は怜の謙虚な姿勢に心配するというよりも真摯に話を聞いてくれていた。

 後ろで聞いていた天津も恐らく励ましのつもりで声をかけてくれたが、それでも怜は今回邪神を倒せたとしても自分は他人から褒められるようなことはできていないというような言葉を残す。

 少しの沈黙が流れると、天津がパンと手を叩いて近藤の前に歩いていく。


「よし! やっぱり《《あれ》》をやろう!」


「あれ?」


「名付けて、能力者育成&邪神討伐計画!」


「育成……?」


「そ、近年上の階級に上てくる能力者の割合が下がってきてるらしくてね、そこで局長と僕が最近考えた計画を今のいいタイミングで行っちゃおうよってこと!」


「はぁ……」


 天津の言った計画の説明を聞いてもあまりぱっとイメージが付かない怜だが、天津は何故この計画を考案したのかを説明し始める。

 どうやら近年はS級やA級に昇格する能力者の割合が顕彰傾向にあることがグラフで示されているようで、悩んだ末に天津と近藤の2人が考えたのが能力者の育成計画だった。

 最初に考えていたプランとは変わってくるものの、計画の根本は変わらないとのことらしい。

 すると近藤はノートパソコンに繋がれているマウスを操作して画面が怜達に見えるように移動させるとそこには海外のニュース記事が表示されており、画像には様々な人が載せられている。


「実は3日前からイギリス・ロンドンで亡くなったはずの人間が蘇り、その蘇った人間に関係している人が殺害されているという奇妙な事件が発生している。我々はこの事件には新たな邪神が関わっているのではないかと考えている」


「そこで僕たちは数日準備した後ロンドンに行って、現地の能力者と共にこの事件を解決することにしたの」


「ロンドン……」


「あれ、海外はもしや初めて?」


「はい」


「初海外がこんな物騒なことになるとはついて無いね」


「それはそうとして、海外に行くにはパスポートが必要ですよね? もしエルも行くってなると国籍すらわからないエルはいけないんじゃ……」


 近藤がエンターキーを叩くと次の画像に変わり、その画像には様々な人が内蔵破壊、頭部破壊など殺され方は異なるものの、死者は続出しているようだ。

 そこで天津と近藤は邪神を討伐することに加えて選抜した能力者も怜と一緒にロンドンへ赴き、能力の育成を行っていくと説明する。

 しかし問題なのはエルの国籍が不明な点だ。

 海外に行くためにはパスポートが必要で、パスポートを発行するには必ず正確な国籍が必要不可欠になってくるが、記憶喪失のエルは自分の国籍が一体何なのかが分からない状況だ。

 だが天津はそのことを聞かれてもあたかも全てお見通しかのようにポケットから2冊のパスポートを怜とエルに手渡す。


「問題ナッシング! ちゃんとエルのパスポートもとれてるよ!」


「え!? 一体どうやって……」


「それは企業秘密。あ、法には触れてないから安心してね~」


「本当ですか……?」


「本当本当。たとえ僕だとしても法に触れれば捕まるし刑務所にも入れられるって」


 どんな方法をとったのか分からないが、天津は怜のパスポートだけでなくエルのパスポートまで既に発行していた。

 国籍が分からないのにどうやってパスポートを発行したのか2人は驚いていたが、どうやら法律には触れていないようだが方法については言及してくれなかったのでかなりグレーゾーンの領域なのだろう。

 そしてエルは恐る恐る天津からパスポートを受け取り、ポケットにしまう。


「じゃ、ひとまず今日は解散ということで! 怜とエルは明後日の正午にまたここに来てね~」


「あの、準備物とかは……?」


「準備物は私の方からメールで後ほど連絡しよう。足りないものや必要なものがあったら前のようにリストをまとめてメールに送信してほしい」


「分かりました。では失礼します」


「失礼します」


「お疲れ~ゆっくり休んでね~」


 報告や連絡事項は終わり、今日はいったん解散となるが、ロンドンに出発するのは明後日の正午で、その時間に再びこの対策本部に来てほしいとお願いされる。

 しかし海外に出発するということは日帰りではなく短期的、もしくは長期的にロンドンに留まる為着替えなどの準備が必要になってくるが、その部分も抜かりなく、必要な物は近藤からメールで送信されるとのことらしい。

 すべての連絡事項が終わった怜とエルは最後に挨拶をして局長室を後にすると天津は笑顔で手を振って見送る。

 局長室が静まり返り、近藤は椅子にもたれかかって疲れた体を休める。その椅子の動く音だけが局長室に鳴る。


「……辻井君が邪神の力を手に入れた事を重く受け止めないようにとわざと明るい雰囲気を作っていたな?」


「やっぱ全部お見通しかぁ。そりゃ、激しい戦いの後にこっちの職員とのいざこざに襲われ、謎の精密検査、そして局長への報告、たった半日で起きたとは思えないことの連鎖だったしね、少しでも気を軽くして貰わないと」


「ちょっと待て、職員とのいざこざなんてもの報告はなかったぞ」


「あれ、言ってなかったっけ?」


「……悠~~~!!!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。