8.邪悪なシステム
ついに機械生命体がその姿を露わにした。
体長は今までに現れたエピドロメアスの最長である30mを大いに越しており、およそビル20階の高さとほぼ同じ高さだった。
ゲートから出現した事でもうバリアを展開していても意味が無いと思った能力者数人が魔法攻撃を仕掛けるも、機械生命体は今もなおバリアを展開し攻撃を吸収している。
「奴はもうバリアを張っている意味は無いはずだ! 畳み掛けろ!」
怜もその能力者同様の事を思っていたので隠密と飛行で機械生命体の付近に駆け寄り【コア】と思われる機械生命体の中心にある大きな眼球に目掛けて亜空間魔法で取り出した短剣で攻撃するが、物理攻撃も全て奴のバリアに防御されてしまう。
しかし怜が攻撃した時、機械生命体は歯車同士がぶつかり軋んだ時の摩擦音に似ている妙な音を出した後にある筈がない口で人間の言葉を話し始めた。
『謎ノ悪魔ノ気配······支配者ガ送リ込ンダ物カ······』
(こいつ、何故俺の力の事を······!)
「お前が最近現れた生命体を召喚したのか?」
『アレハ前座ニ過ギナイ。タダノ気マグレダ』
この機械生命体は何故か怜が現在所有している人工悪魔である悪魔、ディアボロスの事を知っており、その力は支配者が地球に送り込んだ事まで知っていた。
そして最近現れた謎の生命体の事を質問すると、その機械生命体にとってあの召喚された生命体は奴にとって前座に過ぎないようで、恐らくこの地球に自ら顕現する為の試運転に近い事を行っていたのだろう。
しかしそれを聞いても何故この地球に顕現したのかは明らかにはならなかった。
「あいつ、誰と話してるんだ? 謎の悪魔?」
地上にいた攻撃隊は隠密を使い透明化している怜の姿が見えていないので第三者視点で見てみれば機械生命体が一人で話している状況だった。
怜の攻撃が終わり、地上に着地し奴を見上げると機械生命体は身体にある無数の歯車を動かし始め、体内から大砲の様な物を構築した。
『シカシ問題ハ無イ。今カラコノ地球ヲ残酷ナ死ノ影が大地ヲ覆ウシステムヲ構築・放出スル』
「システム······?」
機械生命体が発したシステムという言葉、これが怜の中で引っ掛かる。
地球を惨劇な場にしたいというのは汲み取れたが、奴が言っていたシステムというのは体内にあると思われるシステム的機能を利用し殺戮ロボット等を構築し地球にばら撒くのか、あるいは回避不可能のレーザー光線を世界中に放出するのか、全く見当がつかなかった。
すると奴の大砲の口に青黒い粒子状の何かが集まり、それを地上に撃つと思いきや狙いは地上では無く何故か上空に目掛けて放出した。
奴の言っていたシステムが上手く作動しなかったのではないかという考えが一瞬頭を過ったが、奴の存在を構築しているものなのだからシステムの暴走や不具合はあり得ないと一瞬過った考えを一蹴し、次に来る攻撃に備え戦闘体制をとる。
すると空から青黒い雨が降り始めた。
その雨が皮膚に当たるとすぐさま乾燥して消えた、というよりかはまるで体内に浸透していく様な感覚で数秒経過すると雨に当たった人が続々と倒れていった。
痛みによる苦しみから声を上げる人は全くおらず、彼方此方で静かにバタリバタリと人々が気を失ったようにどんどんと倒れていく。
それは怜も例外ではなかったが、人工悪魔の力であるデバフ・毒物の解除能力がこの雨の力を抑制しようとしているのか、少し気を失う時間は遅かったがそれでも耐えきれずに怜はどんどんと瞼が重くなってきた。
気を失う直前に機械生命体がとあるメッセージを残してゲートの中に消えていった。
『コレカラ、九ツノ邪神ガ世界ヲ壊滅ニ導クダロウ』
『私ハ九邪神ノ一人、理ノ【ラティオマラ】』
◇数日後
「ここは、病院か······?」
自らを邪神の一人ラティオマラと名乗っていた者が現れ、謎の雨を降らしてから数日後、病院で目を覚ました怜は身体に異変が無いが確かめたがこれといって変な所は見当たらなかった。
一体何の為にあの奇妙な青黒い雨を降らし人々を気絶させたのか、意図が掴めずに悩んでいた時、病室のドアが開き黒いスーツを着た男性がやって来た。
「お目覚めになりましたか、辻井怜さん」
「あなたは?」
「私は邪神対策本部監視課の霧野真斗と申します」
「邪神対策本部······」
病室にやって来たスーツの男性の名前は霧野真斗と言い、邪神対策本部の監視課の人間のようだ。
そして対策本部は前まではエピドロメアス対策本部としていたのを今回の邪神の顕現から新たに邪神対策本部と改名し、活動しているとの事。
「局長は?」
「近藤局長は現在邪神の今後の対応に追われています。本人は辻井さんのお見舞いを希望していましたが、会議など事務が山の様にあるので、また日を改めると仰っていました」
「そうですか」
近藤は怜が例の青黒い雨の影響により倒れた情報を知っており、自身の仕事を投げ出してもお見舞いに向かいたかったようだが、またいつ何処で九つの邪神が地球に悪影響を及ぼしてくるのか予測がつかない事に加え今後の対策も協議しなくてはいけない為、渋々来るのを我慢したという。
すると霧野が鞄からノートパソコンを取り出し、とあるページを開き怜に見せてきた。
その内容というのは邪神が与えた影響についてだった。
「辻井さん、現在邪神が降らした青黒い雨を浴びた事による負傷者、死者はいずれも0です。しかし、雨に当たった人全員に確認出来る一つの共通点が見つかりました」
「共通点? それは一体······」
「まるでゲームのウィンドウの様な物が見えるようになったという点です」
「ゲームの、ウィンドウ?」
青黒い雨を浴びてしまった人達全員に唯一共通する点、それは目の前にゲームのウィンドウの様な物が見える様になったという点だった。
それが見える様になったのは天使や悪魔の力を持っている能力者だけでなく、能力を持ち合わせていない一般人にもそのウィンドウは見えているとの事らしい。
しかしそのウィンドウに映し出されているのはたった一文だけで操作などは一切できないらしい。
その文と言うのが
【Coming Soon······】
という文だけ。
この文から読み取るに近頃何かしらの出来事が起こるのを暗示しているかのようだった。
「そして、我々はこのゲームウィンドウ、システムを命名する事にしました」
「一体、どういったものに?」
「Evil System 【冷徹な見えざる装置】」




