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人工悪魔は影から  作者: イワスズタ
第1章 3/3 The Hollow Ordeal 人邪覚醒篇

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76.腑抜けた男

 怜達の目の前に現れた天津は黒いサングラスをかけて着崩したワイシャツとズボンの格好で、この緊迫した状況下ではかなり場違い感が溢れ出ているが、そのことは本人は気にしていないようだった。

 まるで自分自身が世界の中心に生きる存在だと言ってるかのように。

 そして天津は上っていた塀から飛び降りて怜の前に立って彼を守るような体制に入り、そのことをエルを拘束している男性が天津に質問を始める。


「おい、邪魔だ」


「おお~僕に会って早々随分と大口を叩くようじゃないか。もしかして僕の事、知らない?」


「悪いが1ミリも知らないな。そこをどいてもらおうか。私たちには、邪神を倒すという任務があるのだから」


 天津は男性の第一声の大きさに驚くように大きく口を開け、自分の事は知らないかと男性に軽々と質問するが男性は続けて睨むように天津を見つめて何も知らないと否定する。

 やれやれと言わんばかりの表情をすると男性は天津にそこをどいてもらおうと強く言うと、天津は再びにっと笑ってサングラスを外す。


「僕にもあるんだよね~任務《ミッション》が。この辻井怜を保護するっていうね」


「なっ、あなたは……!」


「あ、ようやく僕の事分かってくれた? そっか、サングラスして髪も染めればわからないのもしょうがないか」


(一体何の話をしているんだ。この2人……)


 天津がサングラスを外すと青と黄色のグラデーションが美しいとも感じれる特徴的な目を見た途端、男性は先程の言葉が嘘のように顔が青白くなり、口調も厳しい者から柔らかになり、まるで数段階上の上司に対して使う言葉のようだった。

 天津は何故この対策本部側の男性が自分の存在を知らないのかが不可解だったが、今の反応を見て自分の外見が変わったことにより分かりづらくなっていたのだと理解する。

 この2人の会話を聞いている怜やエルは一体この灰色の髪をした男性が何者なのかはわからずに、ただこの会話を耳に入れるだけしかできなかった。

 すると男性は天津に向かって深くお辞儀と謝罪をし、エルの拘束を解いてこの場から立ち去ってしまう。


「す、すみませんでした《《天津様》》! 失礼します!」


「はいは~い」


「行っちゃった……」


「助かったのか……?」


「そ、君たちは助かったの。この僕のおかげでね」


 2人はこの一瞬で起きた出来事がどういう経緯で起きたのか理解できないまま時間だけが過ぎていき、気が付けば事は全て終わっていた。

 そして天津は倒れている怜に右手を差し伸べ、怜がその手を取るとぐっと持ち上げられるが、やはり代償の影響で立てても体はふらふらしているままだった。

 その様子を見て天津は怜の体を支えて話を続ける。


「かなり消耗しているようだね」


「まあ、それなりには戦ったので……」


「君ら、今から局長のところ行こうとしてたでしょ」


「なんでそのことを知っているんですか!?」


「まあ、長年の勘、かな」


 天津は2人のこれからやろうとしていた目的を見事に当てて見せるとエルは驚いた表情で天津に近寄って何故分かったのかを聞くが、それを天津は詳しくは教えてはくれずに長年の勘だと濁して答える。

 何か他人には言えないような秘密を隠し持っているのかとも考えたが、外見からでも数えきれないほど聞きたいようなことがあるため、一体どこから話せばいいのか頭が混乱している。

 そんな2人に対して天津は両手で2人の肩をそれぞれ触ってとある呪文のようなものを発する。


「さ、一旦移動しようか」


「え?」


「大丈夫、《《一瞬》》だから」


『瞬《またたき》』


 天津が『瞬』と唱えると目の前が白く光り、怜とエルは思わず眩しく目を強く瞑り、眩しくなくなってきたころにゆっくりと目を開けると今まで薄暗い路地裏にいたはずなのに、3人のいる現在地は、病院だった。

 しかし病院と言っても辺りの内装を見回してみると、今まで行ったことのある病院ではなく、初めて見る病院の内装だった。

 周りには看護師の他に空中を飛んでいる《《妖精》》の姿も何体が見受けられ、その妖精は普通の看護師と同じように業務をこなしている。

 そして天津は2人を残して受付に行き、看護師に対して手を合わせて何か必死にお願いをしている光景が見えたが、天津が看護師の耳元でとある話を持ち出すと看護師は慌てて奥の部屋まで移動していった。

 暫し受付で待機していると白衣を着た、エルよりも少しだけ大きいくらいの身長をした女性が天津の元に来たかと思えば彼に向かって指を指しながら説教が始ったのかと言わんばかりの長い会話が始まる。

 大体その会話は20分程度で終わったが、完全に疲弊しきっている怜にとっては何時間にも感じる時間だった。


「お待たせ~ごめんね待ってもらって」


「いや、別に……」


「で、さっき言ってた邪神の力を手にしたっていうのは、この子?」


「そ、辻井怜君」


 天津と共に怜とエルの元に来た医師と思われる女性は面倒くさそうな態度で接しており、第一印象は怜にとってあまりいいものではなかった。

 しかしその医師が隣にいるエルに目配せをしたところ、目を見開く。


「……あなたは、確か私の能力で……」


「?」


「まさかこんなところまで因果が繋がっているとはね。悠、あんたの仕業ではないでしょうね?」


「まさか! 僕には人と人を因果でつなげるなんて離れ業、いくら僕が何でも能力を使えるからって疑わないでほしいね。ドクター」


「全くあんたってやつは……いちいち余計な言葉が多いのよ」


「すんませーん」


 ドクターは自身の天魔極解で死んでしまったエルの事を生き返らせたが、その際の意識はエルには無いので一体この女性が何を話しているのか分からず、きょとんと首を傾げる。

 自分が救った存在が邪神の力を得た青年と一緒にいることなんて、普通ならあり得ないと思ったドクターは隣に立っている天津を睨んで問い詰めるが、いくら天津でさえそういった概念は変えられないと煽り口調で話すとドクターの眉間に力が入り再び天津に怒りの言葉をぶつける。

 反省していない腑抜けた声がドクターの耳に入ると、ドクターはため息をついて両手を白衣のポケットの中に入れ直す。


「じゃ、とっとと精密検査やろうか」


「……はい?」






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