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人工悪魔は影から  作者: イワスズタ
第1章 3/3 The Hollow Ordeal 人邪覚醒篇

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71.邪神、覚醒する

 ラティオマラは謎の呪文と思われる『邪神顕眼』というものを解放した。

 その声は怜には聞こえていなかったが、今の怜とラティオマラの距離からでも漂ってくる異次元の禍々しさをしたオーラを纏ったものが見えた。

 

「何だ……?」


 目を細くしてラティオマラの方を見ると土煙の中で紫色のオーラと一般人取りセガ少し高い人影のようなものが段々はっきりと見えるようになっていく。

 そして怜が一回瞬きをした瞬間、目の前にいなかったはずのその人影の正体が怜の目の前に突如として現れており相手はぎしぎしと軋む音を鳴らしながら拳を握りしめ怜のみぞおちに目掛けて拳を打ち付けようとしていた。

 その動きがほんの僅か見えた怜は拳の攻撃を防ごうと惨黒刀を自分の目の前に出すと、刀に拳が直撃した瞬間刀が粉々に砕けてそのまま勢いを落とすことなく怜のみぞおちに拳が向かってくる。

 刀がこんなにもあっさりと砕け散るなど考えもしていなかった怜は刀が砕けた反動で胴体は完全にがら空きになっており、物凄い速度で向かってくる拳に対してここから瞬時に腕を動かしたりましてや回避できるはずもなく、拳は怜に直撃し、後ろに吹き飛んでいく。

 

「は……?」


 威力は絶大で怜の後ろに遭ったビルに直撃して止まるかと思いきやそのままビルを突き抜けてその後ろにあるビルにも直撃し、最終的には3棟のビルを貫通して4棟目で勢いは止まった。

 そのビルにいた職員は一体何が起こっているのか全く理解できなく、周囲に遭った機材や書類が散乱し、全てが床に落ちて血だらけの怜の姿を目撃した瞬間に女性の甲高い悲鳴が響き渡る。


「きゃああああああああああ!!!」


「お、おい! 君、大丈夫か!?」


「かはっ……」


 男性職員が真っ先に怜の元に走って向かって安否を確認するが、体の至るところにガラスの破片が突き刺さっていたり擦り剝いた箇所からは大量の血が流れていた。

 不幸中の幸いと言っていいのか、四肢や頭部などには即死級の被害は受けていないようで、恐らく人工悪魔を手にしたことによって身体が強化されていたおかげなのかもしれないが、これでは助からないだろうとその場の全員がこれは助からないだろうと思っていた。

 しかしそれでもやらないよりかはましだと思ったのか、他の職員が近くにあった救急箱を怜の元に持ってくる。


「部長! 救急箱ありました!」


「ありがとう。君、意識はしっかりあるか!?」


「っ……何とか……」


「よし、ここは医療機関ではないから、応急処置しかできないが許してくれ」


「それだけでも、ありがたいです……」


 部長と呼ばれた男性はすぐに救急箱の中にあるアルコール消毒液と包帯を取り出して使える分全てを怜に使う。

 こういった場合は想定はできていないだろうが、万が一職員が何かしらの怪我を負た時の為に応急処置の指導は会社内で行っているようで、その部長の言葉に怜は苦しみならもお礼を言う。

 そして怜の応急処置が終わ、膝に手を付いて立ち上がった瞬間、こちらに向かって無数の銃弾が飛び交い職員全員がその銃弾に被弾し血を流してその場に倒れる。

 無論怜の応急処置をしてくれた部長の男性も怜の横で胸部と頭部に銃弾を受け即死した。

 その光景を怜はまたも何が起こったのか理解できず、震えながらも倒れた職員たちの方に視線を向けるが、この場で生き残っているのは怜以外誰もおらず、先程の女性社員の悲鳴や部長の暖かな声も何一つ聞こえずに静寂が訪れている。

 そこに怜を吹き飛ばした張本人のラティオマラであろう人型が怜の元に飛行してくる。


「どうダ? これが私の全て、邪神顕眼・理の極地【スロヌス・ラティオニス】」


「邪神、顕眼?」


「邪神は各々最終奥義のようなものを持っていル。それが邪神顕眼。邪神顕眼は単純な身体能力の増強だけでなく固有の技を持っているのダ」


 ラティオマラは自身の力を自慢するかのように邪神顕眼の事について怜に説明を始める。

 邪神顕眼というのは邪神9体がそれぞれ持っている最終奥義であり、それぞれが固有の特殊能力を使えるようなるという。

 しかし今のラティオマラは邪神顕眼を使ったことによる身体強化しか使っていないようで、今の状態でも最初の時と比べて比較できないほどの強さを持っているというのに、ここから固有技を繰り出されたら今度こそおしまいだ。

 怜はまだかろうじて体が動ける状態なので戦おうと思ったが、刀は粉砕され、短剣は屋上にいた時に囮として投げた影響で今手元には何の武器もない状態で、戦うとすれば素手で戦うことになるがそれではどうも分が悪すぎる。

 そこで怜は苦し紛れに透兵を3体召喚し、その間に逃げてどこか武器を探さ音ればと思ったが、透兵では全く歯が立たないようで召喚して透兵が武器を振り下ろそうとした瞬間にラティオマラは刀を製造して一振りで透兵を瞬殺する。


「くそ……」


「もう何をしてもお前が私に勝つ未来など、訪れなイ」


耐えきれなくなった怜は飛行能力を使って突き破った方向から逃げようとしたが、怜の全身が外に出た瞬間にラティオマラは怜の右足を掴み、そのまま地面にたたき落とすかのように一直線に降下する。

 何とか逃げ切ろうと掴んできた腕を振りほどこうとするが今にも折れてしまいそうなほど強く捕まれている腕は離すことを知らないまま、どんどんと地面との距離が近づいてくる。  


「ぐっ……うおおおおおおおお!」


「言っただろウ。 勝つ未来はないト」


 そして怜はラティオマラによってアスファルトの道路に強く打ち付けられ、口からは大量の血を吐き出し、地面は無残な形に変形する。

 丁度昼間ということもあり、付近には歩道を歩いている人や食事を行っている人など様々いたが怜がアスファルトに打ち付けられた音を聞きつけて怜とラティオマラの方に向かって民間人がぞろぞろとやってくるが、ラティオマラの禍々しい姿を見た途端全員の顔が真っ青になり、この場に居続けたら死んでしまうと本能で思ってしまい一目散に悲鳴を上げながら逃げていく。


「そうダ。お前にとっていい話をくれてやろウ。お前を私の僕《しもべ》にしてやル。僕になれば苦痛を一切感じない体になル」


 ラティオマラは怜に対して僕にならないかと提案してきたが、それすなわち感情のないテラポーンになるということになる。

 感情や苦痛の感じない体になれば、このようなみじめな人間の体で死ぬまで生活することのないラティオマラの理想の幸福を怜に伝えていたが、怜本人はそれを聞いたとしてもテラポーンとして生きるのは至極御免だとしか思えていなかった。


「……俺は、そんなものにはならない!」


「そうカ。だがお前に拒否権は無イ。私に勝つ未来が無いお前にはナ」


「がっ!?」


 怜がラティオマラの提案を拒否すると元々ラティオマラに勝てる未来を持ちえない怜には拒否権などなく、最初から怜をテラポーンにしてやろうとラティオマラは考えていた。

 するとラティオマラは怜の口を強引に開き、口の中に青黒い液体を数滴垂らすと怜はその液体を不服にも飲み込む。

 

「ああああああああああっ!」


「さあ、新しい僕の誕生ダ」


 怜はその液体を飲み込んだ後体を右往左往に動かしもだえ苦しみ、体からはラティオマラが邪神顕眼を使った際に出た紫の禍々しいオーラを出し、腕からはテラポーンのような外見が段々と突き出していた。


(俺……本当にテラポーンになる……のか?)


 ついには言葉を口から出すこともままならなくなり、自分の心臓の鼓動音が小さくなっていくのを感じ、その数秒後には怜は動かなくなってしまった。


「儀式は、完了しタ」



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