70.邪神の脅威
怜が行こうとしていた建物にとある男性がいた影響で別の建物に移動せざるを得ない状況になってしまい、怜は今少し離れた住宅街まで移動した。
基本的には屋根の上を伝って移動し、家の中にいる住民にあまり被害がいかないように配慮しているが、相手のレーザー光線には感情が無いため怜がどれだけ配慮をしても少なからず被害はでてしまう。
人工悪魔の能力である飛行や隠密を遣えば回避できるとも思ったが、この能力が人工悪魔にしかない特別な能力ならば怜の動きを見た人間が人工悪魔がいるということを知り怜の正体がばれてしまう。
隠密に関しては使ったとしても気配までは完全に消すことまではできない為、レーザー光線が気配を感じ取って追尾してくると考えてあえて使っていない。
そして住宅街を抜け、葛飾区とは別の区に入りビルが聳え立っている場所に到着し、後ろからレーザー光線がとんで来るのに対して怜は惨黒刀を取り出してレーザー光線に対抗する準備を行う。
(行けるかどうかは分からないが、今はこれしかない!)
レーザー光線に向かって真正面に立って刀を横に振ると、最初の方はそれぞれ2つに割れてこのままいけるかと思ったが、だんだんと光線は強度を上げていき怜は少しだけ後ろに押し出されていく。
(こいつ、強度が上がって……!?)
ついには怜の刀が押し負けてしまい、刀が手から弾き飛ばされてしまい、そこに追い打ちをかけるようにレーザー光線は怜の左腕に直撃する。
銃弾とは違った、焼けるような痛みが怜の体を襲ってきたが、その痛みを感じる間もなく次の攻撃がやってくる。
レーザー光線の次は超遠距離からのスナイパー攻撃で、鋭い弾丸が怜の目の前まで迫って来た時、怜は咄嗟に亜空間魔法で短剣を2本取り出して弾丸を弾き飛ばすのと同時に痛みで地面に膝をついてレーザー光線が直撃した箇所を強く抑える。
そこにラティオマラが空中を飛行して怜の近くまでやってくる。
「先程までの威勢はどこに行っタ? 戦い始めた頃は自信満々で、私など圧倒できると豪語しているような表情をしていたが、今は苦しみ、侮っていた数分前の自分を恨んでいるような表情ダゾ」
「っ……」
「ここまでのようダナ」
ラティオマラは戦闘開始直後の怜の表情と今の表情をご丁寧にも説明をはじめ、今では自分の方が有利だとでも言っているような言葉だった。
しかし、その言葉はほぼ図星だった。
自分のこの能力ならば、邪神なんて簡単に倒せると思っていたが、現実は甘くなく、邪神という名前からも相手は神そのものを相手にしているのだから、こんな人間一人が立ち向かって簡単に勝てるような相手ではなかったことを怜は数分前の自分にい聞かせてやりたかった。
だが、今ラティオマラが言った言葉全てが図星ではなかった。
まだ、ここで終わりではないから。
「まだ……終わりじゃない」
「ほう、まだ戦える力があるのカ」
再び立ち上がり、攻撃を開始するかと思った矢先に怜がとった行動は今両手に持っている短剣2本をラティオマラに投げ、それをラティオマラがはじき返す隙を狙って先程のレーザー光線で弾き飛ばされた刀を拾ってビルの屋上から飛び降りた。
この行動にはラティオマラも予測ができなかったのか、機械が予想外の不具合を起こしたかのように体が数秒硬直し、ビルから降りていく怜をすぐには追いかけることができなかった。
飛び降りた怜は降りた場所が悪くしたには駐車場がありこのままでは車の上に着地してしまい車を何台か壊してしまうと思ったが、今回だけはどうしようもない状況なので仕方なく車の上に着地する。
すると物凄い重低音と金属が変形する音が響き渡り、近くにいた一般人が何事かと思って駐車場の方に来たがそのころにはもう既に怜の姿はなかった。
そして見に来た男性の乗っていた車は無残な姿になっていた。
「何の音だ……って、俺の車ー! 誰だこんなことした奴! 絶対に許さねぇからな!」
怜は少し開けた橋に向かおうと思い移動しているとポケットの中に入っていたスマートフォンが振動し、取り出してみると近藤からの電話だった。
「もしもし」
『辻井君! よかった、生きていてくれて……それで今はどういう状況に?』
「今は丁度、邪神と戦っている途中です。それで少し開けた橋の方に向かって戦いたいのですが、能力を使って人工悪魔の事が知られるのはまずいですよね……?」
『いや、今回ばかりは仕方がない。状況も状況だ。事後の被害対処は我々が行うから、今は思う存分力をふるって、世界の脅威となる邪神と倒してくれ』
怜は近藤にラティオマラとの戦闘で人工悪魔の力を使うのはまずいかという質問を投げかけるが、返って来たのは意外な言葉で、力を思う存分ふるっても構わないということだった。
もしかしたら今回の件で人工悪魔の事が公になってしまい、隠ぺいしていたことがバレてしまい責任を問われてしまうかもしれないのに、近藤は自分の事よりも世界の為という大勢の命を優先した。
その言葉を聞いて一瞬戸惑ったが、怜は一言「分かりました。絶対に倒します」と残して通話を切る。
それと同時に目的地としていた橋に到着し、向かってきた方向を振り返ると遅れてラティオマラも橋に到着する。
「無駄な悪あがきヲ!」
「無駄かどうかは、俺がやられた時に決めたらいい」
「……いいだろウ。ここで終わらせてやる」
この橋で決着をつけるかのような会話をしたのち、鞘に仕舞っていた刀をゆっくりと取り出し、ラティオマラも正面からの一騎打ちで決着をつけるかのように日本刀や西洋剣を製造してくる。
そして怜はこの一撃ですべてを決める覚悟で、今まで惨黒刀に注ぎ続けた魔力を全て放出して倒すと決意し、刀から魔力をゆっくりと纏わせる。
その刀のオーラの色は今までの色とは違い、空にかかる虹のように美しい輝きを放ち、闇を断ち切るにぴったりと言って間違いないものだった。
「これで終わらせる!」
怜は全力でラティオマラに向かってダッシュし、刀を上から斜めに勢いよく振り下ろすと、ラティオマラも負けじと製造した武器をすべて使って防ぐが、怜の魔力量がとてつもないのか製造した刀や剣をどんどんと破っていき、最後の一振りをも破り、ラティオマラ本体に刃が届く。
しかしラティオマラは自身の外郭の硬さに自信を持っており、人間1人の力で同行できるほどではないだろうと思っていたが、今回の怜の刃はラティオマラの外郭に少しだが入っていき、怜は物凄い腕力でそのまま刀を振り切るとラティオマラは後ろに勢いよく吹き飛んでいき、ラティオマラの後ろにあったビルに直撃する。
「や、やった……?」
はぁはぁと肩で息をしながら刀を握っている怜はようやくラティオマラを倒せたのかと不安になるが、確かに刃がラティオマラに入った手ごたえは感じていた為、きっと倒せただろうと思っていた。
そう、思っていた。
「……ここまでやられたのは始めてダ……お前には、私の全力を出して、塵も残さずに殺してやる……」
『邪神顕眼』




