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人工悪魔は影から  作者: イワスズタ
第1章 3/3 The Hollow Ordeal 人邪覚醒篇

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65.突然の変更

◇近藤視点


 怜達感染者がゲートの中に入っていき、約3日が経過したが未だ戻ってくる兆しは世界中どこを見ても見えず、全世界で混乱が生じていた。

 地球防衛協定《Earth Defensive Agreement》9の各国の情報だと中国の人工悪魔も怜と同じようにラティオマラの遊戯《ゲーム》に参加しているとのことで、地球上で5人しか存在しない人工悪魔の適合者が2人も危険な遊戯《ゲーム》に参加してしまっているのは由々しき事態だ。

 邪神が顕現したことで近藤はいつも以上に業務が増加し、寝る間も惜しんで作業しているおかげで、肩などが凝り始めており、業務中にも何度か肩を触る仕草をしていた。

 机の上に置いてあるコーヒーを飲んで一息つこうとした時、局長室のドアをノックせずに1人の男性が入って来たが、その男性の正体は近藤にとって大方予想はついているので気にせずに目を瞑りながらコーヒーを飲む。


「入ってくるときはノックしろと言っているはずだぞ、悠」


「久々の家族の再会なんだから別にいいじゃん」


「ここでは私は局長、お前は一能力者という立場なんだぞ」


「はいはい分かったよ」


 天津と近藤は血は繋がってはいないものの、形式的な関係では父親と息子だが、この場では近藤は対策本部の局長、天津は能力者として対応しなければいけない為、ドアはノックしろと注意する。

 すると天津は面倒くさそうに頭を掻きながら適当に返事をする。

 しかし近藤はそんなことを言われに来たのではないということを察しており、飲み終えたコーヒーカップを静かにコースターの上に置き、本題に入るように天津に伝える。


「……本題は」


「流石局長さん。……今夾竹桃のアジトを見つけて潰してきたんだけど」


「仕事が早いな」


「まあね。それで、夾竹桃のボスである上城戸征也が居なかったんだよね。もしかしたらあいつも邪神だっけ? そいつの遊戯《ゲーム》に参加してるんじゃないかなって思うんだけど」


「意外だな。S級ともあろう上城戸が遊戯《ゲーム》に参加しているというのは」


 天津は先ほどまで反怨者の組織である夾竹桃の本拠点をつぶしに向かい、苦の字もなく簡単に殲滅できたようだが、肝心のボスである上城戸が拠点にいなかったことが2人の中で疑問視されていた。

 現存している反怨者の中でも上城戸は5本の指に入るほどでS級全体で見てもかなりの実力者の為、遊戯《ゲーム》で死ぬ確率はかなり低いため、生き残って戻ってくる可能性は十分にある。


「まだまだ課題は山ほどあるな」


「一番の問題はこの遊戯《ゲーム》が終わった後の対策本部《こっち側》の対応でしょ。多分だけど、かなりの混乱が起きると僕は踏んでいる」


「……私の考えでは新しい組織を設立しようと考えている。このままの対策本部では確実に邪神に負けてしまう」


「それをしても一般人などからの対策本部への非難はなくならないだろうね。でも、僕からしたらはその考えはいいと思っている」


 近藤は密かに新たな組織を設立しようと考えていた。

 現在の対策本部は日本中のありとあらゆる能力者の管理を行っているが、このままの状態を続ければ確実に死者は増えてしまう為、上位能力者をまとめ上げた組織を設立しようと計画を立てていた。

 しかしそれでは下位の能力者は意味上の解雇ということになってしまい、\その対象となる能力者からは非難が絶えないだろうと天津は考えていたが、それは近藤自身も分かっていた。

 分かっているがそれでも少しでも犠牲を減らすためにはやらなくてはいけないことなのだと思っていた。


「どうしたものかね~」


「……」


 どうすれば能力者や一般人の被害や非難を最小限にして新しい組織を設立できるか、意見に行き詰った時、廊下から誰かが急いで局長室に向かってくる音が2人の耳の中に入る。

 ドアが3回ノックされて、近藤が「どうぞ」というと入って来たのは一般職員だった。


「し、失礼します! 局長、天津様!」


「一体何が?」


「ほ、報告します! 葛飾区上空に邪神・ラティオマラと思われる機械生命体が姿を現し、その下には辻井怜様もいることが確認できました!」


「本当か! 急いで今出動できる職員を集合させ、現場に!」


「了解いたしました!」


(辻井君、生きてくれていたか……!)


 職員が伝えた内容は現実空間に再びラティオマラが出現したことと、日本でたった1人の人工悪魔の適合者である辻井怜が生還しているという情報で、それを聞いた今、近藤の心臓は飛び跳ねるかのように鼓動している。

 今近藤の中で他の能力者や巻き込まれた一般人も大切だが、最も大切なのは怜の存在だった。

 今まで日本で成功例がなかった人工悪魔の適合者、次いつ現れるかも分からない貴重な存在を失いたくなかったからだ。

 そして近藤はすぐさま職員に出動可能な能力者全員を現場に出動させるように目淹れすると職員は急いで局長室を後にしていく。


「悠、お前も現場に行ってくれ」


「いいけど、僕が能力を使うのはその辻井怜って子がピンチになった時だけね。僕の能力はそんなにバンバン使えるほど安くないんだ」


「……分かった。それでいいから行ってくれ」


「了解しました~」


 天津の能力は魔力消費が他の能力者と違ってかなり激しく、短時間で連続で大技を出しすぎるとガス欠になってしまう為、使うのは怜がピンチになった時にだけという条件を近藤に差し出すと少し迷いがあったがそれでも了承して天津を現場に向かわせる。

 そして局長室を後にし、かけていたサングラスをとって胸ポケットに入れて両手をポケットに入れた後、ニヤッと笑いながら独り言を口にする。


「ま、人工悪魔がピンチになる《《未来》》なんて、今回の戦いではないんだけどね」


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