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人工悪魔は影から  作者: イワスズタ
第1章 2/3 The Hollow Ordeal 死島団戦篇

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61.人工悪魔、怒る

 怜は上城戸の名前を呼んだ途端全速力でダッシュしていき拳を振りかざした。

 サバイバルナイフでも攻撃できそうだったが、今の怜には1分1秒でも早くあいつに全力を込めた一撃をお見舞いしてやりたい、ただその怒りの感情だけが心の中にあった。

 しかし振りかざした拳は上城戸の右手によって止められ、一度引き下がるが、受け止めた上城戸の右手は軽く震えており今まで受けた打撃以上の威力だということを彼はひしひしと感じていた。

 

「容赦ないね」


「俺はお前だけは絶対に許さない。エルをあんな目に遭わせて、許されるはずがない」


「それは君たちにも非はあるはずだよ。彼女を一人で離れた川沿いに行かせたせいで、こんな状況が生まれてしまった。管理不足といったところか」


 上城戸はこの今の状況を作り出したのは自分だけでなく怜達味方チームにもあるのではないかと弁論した時、エルの元に行き撃たれた箇所を包帯で止血している橘の心に鋭いとげが刺さったような痛みが襲ってくる。

 橘は彼の言っていることに間違いはなかった。

 自分が目を離さなかったら、もしかしたらエルはこんな悲惨な状態にならずに済んだのではないかと思うが、そのたびに自分の不甲斐なさがどんどんと露見される。

 反論なんておこがましかった。彼の言葉を悔しくも受け入れるしかなかった。

 その時、上城戸の背後から援軍が到着し、彼らはすぐさま怜達に向けて銃弾を放つ。

 その銃弾が北条、赤坂、田崎に命中し、不幸なことにも全員が致命傷となる部分に被弾していた。

 そこに橘が駆け寄る。


「み、皆!」


「ごめんなさい、明夏音さん……」


「喋らないで、傷が開く!」


 橘はすぐに残り少ない包帯や絆創膏を生き残っている神崎と瀬戸口に手渡して自分も怜の方に行き応戦を始める。


「康太、神崎さん、怪我した皆をお願い!」


「了解っす!」


「はい!」


 そんな会話の裏で怜は上城戸と戦闘を続けていた。

 いつの間にか素手の戦闘は終わっており、最初の戦闘時と同じピストルやライフルといった銃器での戦闘が繰り広げられていた。

 どちらも引けを取らせない戦法で、この戦場が廃墟ということもあってお互い建物や地形を駆使し、怜が壁の近くにいる時に銃弾を上城戸が撃つが壁を利用して壁を上って回避し、外した銃弾はそのままひび割れたガラスに当たり大きな音を当てて割れて地面に落ちる。

 そして上城戸は怜が着地するであろう場所に即座に移動してナイフを使った着地狩りを試みて左手にナイフを持って突き出すがそれも華麗な身のこなしで躱して逆にカウンターで銃弾を撃ち込むとそれが見事に突き出した左腕に命中する。

 その攻撃を受けて上城戸は最初の頃には考えられない反応速度と適応力を感じ、まるで別人が辻井怜を操っていると言っても可笑しくはなかった。

 しかしその考えは間違っている。それは上城戸自身も分かっていた。

 別人が操っているならばここまでの自分自身に対するエルを傷つけられたことから出ている憎しみや怒りが嘘偽りになるからだ。


「っ……やるね」


「絶対に殺す」


 怪我を負った上城戸にチームのメンバーが助けに行こうとした時、怜は相手の方を見ていないはずなのにその助けに行こうとした人をノールックでピストルだけ向けてこめかみを一発で撃ち抜く。

 それを見た人物は皆驚愕し、一気に銃弾や声が入り混じった空間が静寂に包まれ、誰一人声も上げなかった。

 今声を上げれば敵味方関係なく怜の殺害対象に入ると、本能で全員が感じ取っていたからだ。

 その為、額から流れ落ちる汗一滴が頬を伝う時でさえ、恐怖を感じていたほど、今の状況は全員が死にたくないという恐怖一色に一瞬で染め上げられたのだ。

 その中で一番先に雨後置いたのは上城戸だった。

 この状況を変えることをしなければと動き、2階建ての住宅の屋根の上に飛ぶ。

 その行動によって敵チームのメンバーも金縛りが解けたように動き出し、それに対応するかのように橘がそのメンバーにライフルで応戦すると、5人のメンバーの1人に致命傷を与えることができた。


「怜! こっちはあたしが!」


「……ああ」


 橘が言葉を投げるが、返って来た返事は普段の上の人を敬っている『わかりました!』ではなく、淡白であって礼儀などは一切捨てた無駄のない返事で橘も少し大丈夫だろうかと心配に加えて困惑していた。

 しかしそんな困惑など考えられなくなるほど、敵は倒されたことからの焦りで銃弾の雨を浴びせてくるが、その前に動くことができたおかげで木や建物を使って敵のマガジンの中にある銃弾が切れるまで持ちこたえることができ、最終的には建物のガラスを突き破って中に隠れる。

 敵は弾薬が無くなったことに気づいて急いでリロードをするが、そのことを既に気づいている橘は突き破ったガラスから顔を少し出して致命傷となる部分ががら空きになっている敵に銃弾をお見舞いし、橘が受け持っていた5人は全て倒すことができた。


【赤チーム残り2名】


 これで相手は上城戸だけかと思ったが、ウィンドウに表示された残り人数の表記は2人と記されており、どこか見落としている箇所があるのではと橘は疑問に思う。


(上城戸以外の1人、どこにいるんだ……?)

 



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