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人工悪魔は影から  作者: イワスズタ
第1章 2/3 The Hollow Ordeal 死島団戦篇

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58.少女、抗う

い方をしたとしても無駄だということは本能で分かっているが、同じ空間にいない今の状況ならば最低でも1人を短剣で倒すことができれば、運よく脱出できるかもしれない。

 捕まった時は両腕を拘束されていたが、生憎今はその拘束が解かれておるので体は自由に動かすことができる。

 しかし確実に脱出するためには樋口という青年も同じ空間にいない状況が作られなければいけない。

 彼は上城戸の側近のような立ち位置なので恐らく戦闘能力もそこらの一般人よりかは数段上の実力を持っているはずで、抵抗する素振りを見破られてしまえば一瞬で上城戸の方に情報が行き渡ってしまう。

 それを避けるためにも樋口が何かしらの事情でこのテントから出なければいけなくなってテントから出ていき、ここまで運んできた2人だけが同じテントにいる状況になってほしかった。


「ちょっと上城戸さんと計画について話してきます。2人はそのまま怪しいことをしないか見張っていてください」


「分かった」


(あの樋口という人がテントから出ていく……チャンスは返ってくるまでのこの時間だけ……!)


 幸運なことに数分が経った頃に樋口が立ち上がって上城戸と今後の計画について話し合ってくるためにテントから出ていくのを見たエルは、チャンスは2人しか見張りがいない今この状況だけだと、頭の中で2人のどちらかを短剣で刺した後の行動ルートを綿密に考える。

 すると片方の男性が休憩時間もあまり満足した休憩がとれていなかったのか、口を開けて大きな欠伸をする。


「ふぁ~……」


「おい、気が抜けてるぞ」


「ごめん、まだ疲れが取れていなくて」


 男性が欠伸をしたことで今エルに視線を向けている人物は1人としておらず、未だと思ったエルは右手をゆっくりと気づかれないように後ろに回してポーチの中に入っている短剣を取り出す。

 生憎怜の使っていた短剣は戦闘に特化しているとは言えどもサイズは短剣の中でも小さく、取り出しはスムーズに行えるのが最大のメリットの1つだった。

 もう1つのメリットは切れ味が一般に販売している武器よりも格段に切れ味が鋭いという点だ。

 あのエピドロメアスを1撃で沈められるほどの威力を持っているため、非力なエルでもそこまでの力は出ないがそれでもかなりの威力が望まれる。

 

「もう少しの辛抱だ。今は俺たちの仕事を……」


(今だ!)


「ぐはっ! ああああああっ!」


「この野郎、目を離した隙に――――――ぐあああああっ!」


 エルはまず体が細い男性の方をターゲットにし、右の眼球目掛けて躊躇わずに短剣を思い切り力いっぱいねじ込むとその男性はテントの中で倒れて刺された部分を押さえて悶えていた。

 それを見たもう1人の体格のいい男性には眼球を狙ったとしても恐らくお構いなく捕まえてくるだろうと勘に頼り、心臓付近目掛けて短剣を刺す。

 心臓がどこにあるのかは大体は分かっているが詳しくは分からないため、恐らくここだろうと思った箇所に刺すと細身の男性同様に痛みでもだえ苦しみ、エルを捕まえることなどできる状態ではなさそうだった。

 そして2人の様子を見て逃げるならば今しかないと思ったエルは急いでテントから出て樋口が向かった方向とは間反対の方向の森林に無我夢中で走って逃げる。

 今回逃げることができたのは正真正銘怜が護身用にと短剣を渡してくれたからだった。

 もしも怜が気か利かずに短剣を渡してくれずに今と同じ状況になっていたらエルは今頃上城戸か他の敵のメンバーに殺されていたと思うと、本当に怜には感謝してもしきれないと感じ、心の中で感謝をする。


(お兄さん、力を貸してくれてありがとうございます……!)


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