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人工悪魔は影から  作者: イワスズタ
第1章 2/3 The Hollow Ordeal 死島団戦篇

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53/82

53.役割交代

◇残り時間59時間


「……さん、橘さん」


「……ん」


「起きてください。交代の時間ですよ」


「ああ、わかった。ありがとう……」


 橘達が休憩してから5時間が経過し、怜は先に起きていたエルに確認をとって橘を起こすと、まだ疲れが完全にとれていないのか起きるのはゆっくりだった。 

 怜はそれに対して急かすようなことはしなかった。

 もともとあまり長い時間寝ない習慣の為、大体4時間程度でも満足できる程度なので5時間の休憩時間はかなり余裕のある時間だ。

 

 そして起き上がった橘は、急いで支度を終わらせて男性陣のテントに入って休憩に入ろうとする怜に一言かけてから休憩の後半に同じ見張り役として動く田崎と赤坂の2人と合流して拠点付近の見回りを始める。


「ここから5時間か~ あんま休んだ感じがしないな~」


「そうかもしれないけど、72時間という長い時間の中で考えれば10時間の休憩っていうのはかなり貴重なものだよ」


「確かに」


 橘の言う通り、この長い遊戯(ゲーム)に加えて第1回の疲労も溜まっている中で10時間の休息時間は短いように感じるが、実際に経験するとこの時間は短いようでかなりの休息時間になる。

 そんな軽い話をしながらも、今はやるべきことをしなくてはと拠点付近にテラポーンや敵チームが偵察に来ていないかの確認などを行っているが、見張りが始まってから1時間が経過するもこれといった状況の変化は起きなかった。

 橘は先程の休憩で大体体を休めることができたが、彼女ほど体力がないと思われる2人は未だ眠そうに度々欠伸をしていた。

 そんな中丁度何者かがこちらに向かってきている足音が聞こえ、それを聞いた橘は即座に他の2人に状況報告を行って急にお襲われたとしてもパニックにならないようにする。


「2人とも、何者かがこちらに近づいてきている。テラポーンだった場合はあたしが対処する。もしも敵チームだったら全員で攻撃せずに遠くに追いやる」


「追いやるったって、敵に攻撃できない以上は何もできないじゃないですか!」


「確かにそうかもしれない。だけど今の状況では今こちらに近づいてきているのは恐らくテラポーンだ。だから敵チームが来た時の対処は、今のところは大雑把でいい」


 橘は今拠点に近づいてきているのは敵チームではなくテラポーンの可能性が非常に高いと考えていた。

 敵チームも今の休憩時間は貴重なものだと考えていて、その時間を使ってこちらの状況を偵察にくるほどではないと思っており、そう考えるとテラポーンがこちらに徘徊してきていると考える方が自然だ。

 もしも敵チームが来た場合、この武器が相手に向かって使えない状態でどうすればいいのかと田崎が質問するが、可能性が低い今はあまり深く考えずにテラポーンの方の計画を綿密に考えた方が良いと橘は端的に説明する。

 そして説明が終わった頃、その足音の正体が拠点近くの橘の元に到着し、体の輪郭がはっきり見えるようになった所で、橘は確信を持った。

 今こちらに来ているのが、敵チームの人間ではないということに。


「……来たよ。あいつが」


「明夏音さんの言う通りだったのか……」


 正体はテラポーンだった。

 怜と橘が合流する前に遭遇した盲目のテラポーンとは違うが、こちらも特徴的な外見をしたテラポーンで、その姿は人型ではなく蜘蛛の姿をしたテラポーンで足にはそれぞれ武器が仕込まれている。

 機械生命体の為、本物の蜘蛛のような気味悪さはないものの、機械によって改造されたことによって昆虫の気味悪さとは別のベクトルの悍ましさや気味悪さのようなものがある。

 しかしこちらに向かって来ているということは、見張りである3人で対処しなければいけない。

 盲目のテラポーンは橘がこめかみを狙撃して敵が動けないうちに逃げる行動がとれたが、蜘蛛のテラポーンは視力は良くはないものの視覚はしっかりと見えている為前回のように攻撃した隙に逃げるようなことはできないだろう。

 橘はすぐにポーチからナイフを取り出して距離をとりながら敵の動きを観察する。

 するとテラポーンは口と思われる部分から糸を吐き出して橘を拘束しようとするが、橘は一定の距離を保ちながら持っているナイフで糸を切り、近くの木の枝に捕まって上に登って不利な状況にならないようにする。

 機械生命体ということもあって鋼鉄の糸を吐き出してこちら側が糸を切ろうとした瞬間に逆に糸に切られて死んでしまう可能性があったが、蜘蛛の硬度は昆虫の蜘蛛と変わりなく、柔らかくナイフで簡単に切ることのできるようで橘は安心した。

 しかし硬度を変えられる可能性があることから油断はできない。

 

「明夏音さん!」


「2人はテントで休んでいる皆の近くで他にテラポーンが来ないか見ていて!」


「分かりました!」


 橘は蜘蛛のテラポーンと戦闘しながらも他の2人が声をかけてきた瞬間に体は其方側に向けはしないものの、2人がすべきことを指示すると2人はテントで休んでいる皆を他のテラポーンが来た時に対応できるように見張っておく。

 するとテラポーンと橘の2人の戦闘の音で起き上がったエルが様子を見に顔をテントからひょこっと出す。


「んん~……何が起きてるんですか……?」


「エルちゃん、今、明夏音さんがテラポーンと戦ってて危ないからテントの中にいてね」


「……えっ? テラポーンが!?」


「そう、休憩時間になってから明夏音さんが言ってたように休憩時間になってもテラポーンは俺たちを襲うようなんだ。だからエルちゃん達休憩組はこのままテントで待機していてほしいんだ」


「わ、わかりました」


「ありがとう」


 見張り役の赤坂は速やかにエルに今外で何が起きているのかの状況説明を行うと、エルは少し困惑しながらも今の状況を飲み込む。

 その後、元の位置に戻ろうとする赤坂に一言声をかけると赤坂は優しく笑顔を見せてテントから出ていく。

 赤坂はテントを出てからすぐに橘にチームメンバーに状況報告を行ったことを連絡する。


「明夏音さん! テントの中の人に状況説明を行いました!」


「助かるよ! そのままそっちを頼むよ!」


「分かりました!」


 橘は戦闘しながらもちらりと赤坂の方を向いて迅速な判断に感謝する。

 そしてテラポーンがその一瞬の隙を逃さず足に生えている武器で振り下ろす様に攻撃を仕掛けるが、橘はその攻撃を足を蹴ってバク転で回避しながら後ろに下がって距離をとり、ナイフをポケットにしまってから背中に携えているライフルに切り替える。


「あまり時間を使いたくないから、一気に決めよう」



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