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人工悪魔は影から  作者: イワスズタ
第1章 2/3 The Hollow Ordeal 死島団戦篇

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50/82

50.見まう

 橘は先に怜たちと別れて敵が来そうだと考えている場所で潜伏し、敵が来るのを静かに待機していた。

 この囮作戦での最大の弱点は敵がこちらの待ち伏せしていた場所とは別の場所から回り込まれて逆に襲撃されてしまうことだが、怜達は近いところでいつ襲われても大丈夫な配置で橘の合図が来るのを待っている。

  未だ本当に大丈夫なのだろうかという心配が残っているが、橘が一生懸命考え抜いて出した作戦なのだ。それを蔑ろにはしたくなかった。


 橘が葉の多い木の上で身を潜めて敵が来るのを待つこと20分が経過したころ、場所を変えてみようかと木から降りかけた瞬間、2人の話し声が聞こえ、すぐに体制を直して木の上に再び上る。

 怜達の話し声ではない。

 彼らには正確な敵の音を聞くために一言も話すなと伝えているため、今聞こえた話し声は確実に敵の声だった。


(敵の声……どこだ……?)


 橘は今の声を聞き逃さなかったが、気に降りようとした影響でどこで話していたかまでは分からなかったため、木の上から敵の居場所を360度見回す。

 すると南西の方向に金髪と茶髪の男性2人組がこちらに向かって歩いているのが見えた。

 恐らく先ほど聞いた話し声はその男性2人の話し声であり、ようやく作戦を実行できる時が来たと橘は少しだけにやりと笑い、すぐに怜のトランシーバーに接続時と切断時の2回の音で送る合図を送る。

 すると怜のトランシーバーにすぐにその音が鳴り、橘が敵を見つけ、今から作戦を実行する事を悟る。

 念の為にこちらからも実行することに対しての有無を伝えなければいけないため、怜もトランシーバーの音を2回鳴らして実行しても問題ないことを橘に知らせる。

 

「……~考えようぜ!」


「ああ、そうだな……!」


(敵は指揮を上げることを考えていて、恐らく今の彼らの警戒心は低いはず。絶好の機会だ)


 橘は敵が話している内容から彼らは今敵がいつ襲ってきてもいいように構えるほどの警戒心を持ち合わせていないと考え、彼らが今橘が上っている木を通り過ぎた後に降りて誘導しようと計画する。

 そして2人が木を通り過ぎた時、橘は木の上から勢いよく降りて敵の注目を集める。


「何だ!?」


「敵だ、敵だ!」


 敵の2人は急に現れた橘に準備ができていないことから武器を取り出すのが遅れてしまったところに橘はわざと外すようにピストルで彼らに銃弾を放つ。

 2人は間一髪で躱せたと思い、今度はこちらが攻撃する番だと言わんばかりに構えた銃で橘を撃ち始めた時、橘は大きくジャンプして彼らの後ろに再び回り込む。


「なっ!?」


「くそ、回り込まれた!」


 2人は橘の動きに驚きながらも遅れて彼女の方を向いて再び銃を撃って倒そうとするが、橘は軽やかな動きでその銃弾をいともたやすく回避して見せる。

 そして、今橘が向かっている方向には待機している怜達がいつでも戦闘できるように準備をしてある。

 

(今のところは順調。後は怜達の待っている場所まで誘導すれば作戦成功だ)


「なんて身のこなしだ! 全く銃弾が当たらねぇ!」


 2人は橘の回避力に苛立ちを見せ始め、警戒心は一気に彼女のミニ向くようになっていき、順調に気を引けている。

 ここは森林の中ということもあり、怜や橘のような身体能力が非常に高い者達にとっては地形を利用した戦い方や逃げ方が行いやすくなっているからこそ、橘は自身の身体能力を加味して自身を囮役にしたこの作戦を考えたのだった。

 そして逃げること約数分、怜達が待っている場所に到着し、橘は木の陰に隠れて弾幕を防ぐ。

 2人の弾薬が切れたところで木の陰から半身だけ姿を出して再びピストルでわざと外すように撃ち、数歩後ろに下がらせたところで『パチンッ』と指を鳴らすと待機していた怜達が一斉に姿を現す。


「な、なんだよこいつら!」


「待ち伏せ!?」


「や、やめろ!」


「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!!!!!」


 怜達は敵の命乞いも聞くことなく、ただ無慈悲に2人に銃弾の嵐を浴びせると、2人からは聞いたことのないほどの悲鳴が飛び交いながら、撃たれた箇所から大量の血を出しながら息を引き取った。

 もちろん、エルには銃を持たせずに怜の後ろで待機させてある。

 安全第一というのもあるが、やはり怜にとって一番大事だったのは記憶喪失で幼い少女が人を殺して何らかのトラウマなどを抱えてほしくなかったからだった。

 汚れ役は自分たちで十分、彼女には何の穢れもなく幸せに生きてほしい。


「やった……?」


「ああ、多分連絡が来るはずだ」


 橘がそういうと早速ゲームウィンドウが開いて連絡を知らせる。


【赤チーム 田中健太(たなかけんた)、熊谷栄輝(くまがいようき)、死亡。赤チーム残り8名】


 これでお互いの人数は再び同数になった。


 残り時間は64時間で辺りは暗くなり、視界は開始の頃より明らかに見えづらくなっている。

 そして開始からここまででほとんど休憩なしで行動していた影響で空腹感が襲ってきた。

 怜以外の他のメンバーも同様で、橘はまだいけそうな雰囲気を出しているが、瀬戸口や神崎といった怜チームのメンバーは比較的疲れがたまってきているのを周りを見て感じていた。

 こんな時休憩時間というていで攻撃なしの時間を少しでいいからほしいと心の中で思っていると、再びゲームウィンドウが開いて通知が届く。


【遊戯(ゲーム)開始から8時間が経過。ここから10時間ブレイクタイムを開始します】

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