48.仲間との合流
◇遊戯終了まで残り66時間
橘は重そうなスナイパーライフルを担ぎながら木の上からジャンプして怜の元に降りてくる。どうも上の等級の能力者は身体能力が異次元な人間しかいないようだ。
「何とか間に合ってよかったけど、ここはテラポーンとは戦わずに逃げよう」
「ですね」
「怪我の方は大丈夫?」
「はい、何とか」
橘は怜の体を少しだけ見ただけで怪我をしているというのを把握して怪我の状態がどれほどのものかを怜に聞く。
彼女の状況管理能力は怜よりも圧倒的に上だった。
その後は橘と共にスタート地点の方に向かって走っていく。
しかし怜チームの元に来たのが橘しかいないことに疑問を持っていたが、恐らく怜チームが来るのが遅い事を見かねて1人で様子を見に来たというところだろう。
だがそれではこのメンバーを待っているエル達を守ってくれる人物がいないことになってしまい、この間に奇襲でもやられたら恐らく確実にエル達は死んでしまうだろう。
自己紹介の時に全員が橘の事を尊敬しているまなざしをしていることから、怜とエルを除くメンバーはA級よりも下の等級だということが考えられる。
B級からD級の能力者の実力がどれほどのものなのかは怜は把握していないが、反怨者がいる上城戸チームの前では怜や橘がいない限り、今も待ち続けているエル達にとって確実に勝ち目は0に等しい。
そのためエルが何者かに殺されていないかが不安になりながらも橘の横に並んで目的地に向かう。
移動している最中に怜が何かを心配してるかのような表情をしていたのを見かねて橘は怜はエルの事で心配しているのだろうと予想付け、彼に笑顔で彼女が無事なことを伝える。
「大丈夫、エルちゃんなら無事だよ」
「だといいんですけど……」
「君が彼女の事をとても心配しているのはよくわかる。だけど、彼女の事をもっと信用してもいいんじゃないか?」
「えっ?」
「君がエルちゃんの事を信用しているのは聞くまでもないと思うけど、怜、君はエルちゃんの事を信じれているのかい?」
「……」
橘の言ったことは怜にとって図星だった。
大切な存在であるエルを失いたくない、死なせたくないという気持ちが強くなっていく半面、彼女を信じるという気持ちが無意識的に薄れていっていたが、橘のおかげでその気持ちを再び思い出すことができた。
それに加えて冷静に考えてみれば橘という実力者なら、自分が弱い者の傍を離れていても大丈夫な策を講じているに違いない。
「俺、多分焦っていたんだと思うんです。エルがこんな危険な場所に行かざるを得ない状況になってしまって、彼女を守ると言った傍からこんな状況になって、周りが見えていなかったんだと思うんです」
「その気持ちはよくわかる。大事な人を失いたくない、傷つけたくない問う気持ちが強くなってしまうのは、仕方のないことだ。あたしも昔に経験した……」
「昔?」
「ああいや、何でもない」
橘は何か昔に怜と同じような事があったようなことを仄めかしていたが、それが何なのかまでは聞かせてはくれなかった。恐らくあまり他人には伝えたくない過去なのだろう。
しかし橘でさえ誰にも伝えたくないことはあるのだなと、彼女の人間性を少しだけ知ることができたのかもしれないと怜は思う。
怜も橘が言いたくなさそうなことを強引に聞こうとするような非情な心は持っていないので、彼女がいつか、心を開いて聞かせてくれる日を待つことにした。
橘の道案内により無事に目的地に到着し、そこには怜の合流をまだかまだかと待っているブロンドの髪の少女がそわそわしながら待っていた。
その少女は怜の姿を見るや否や駆け足で彼の元に行って思い切り抱き着く。
「お兄さん!」
「エル、ごめん。心配させてしまって」
「お兄さんのチームのおふたりが亡くなってしまった情報を聞いた時、とても怖かったんです。もしかしたら、お兄さんが死んでしまうんじゃないかって……」
「この遊戯が始まる前に言った通り、俺は自身の体が動く限り、君を助けるって」
エルの言葉は今にも泣いてしまいそうなほど、震えていた。それほど怜が死んでしまうかもしれなかったのが怖かったのだろう。
しかし怜はどんなに傷を負ったとしても、必ずエルを元居た場所に帰すと約束した為、その約束を破るわけにはいかなかった。
そんな中でエルは怜が必ず生きていると信じてこの場にずっと居続けてくれたことに対して、怜は自分がこれほど信頼されていたのかというのを改めて実感し、少しだけ笑みをこぼしながらも胸の中でぎゅっと抱きしめているエルの頭を優しくなでる。
その光景を見た他のメンバーも不思議と笑みが出てきた。それほどこの光景が微笑ましいのだろう。
このまま幸せな時間を過ごしたいところだが、そんな時間は奴はくれやしない。
橘は目を見開いて次の作戦についての話し合いを始めようと手をパンッと叩くとその音に気付いた全員が彼女の方に目線を向ける。
「はいはい、そんなところで、次の作戦について話し合おうじゃないか」
「さっすが姐さん! こんな状況でも切り替えは日本一っすね!」
「それで、作戦ってどうするんですか? これ以上分散しての行動はかなりのリスクがありますし」
「ああ、その通りだ。だからこそ、相手の裏をかく」
「裏?」
「おとり作戦だ」
「「「おとり作戦?」」」




