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人工悪魔は影から  作者: イワスズタ
第1章 2/3 The Hollow Ordeal 死島団戦篇

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45/87

45.退ける

 怜の放った弾丸は見事に上城戸の腹部に命中し、撃たれた箇所からはドクドクと血が流れており、上城戸はその部分を抑えながら後ろに下がる。


「……思った以上だ、辻井怜君」


「……」


「このまま戦っても恐らく負けてしまう可能性の方が高い。ひとまず他のメンバーと合流するとしよう」


「そう簡単に逃がすとでも?」


 上城戸は今の状況はまずいと思ったのか戦略的撤退をしようと試みるが、当然怜はS級を倒せるチャンスを逃すはずもなく、すぐに再び攻撃を仕掛けようとしたが、突然怜は足に力が入らなくなったのか、片膝を地面について動けなくなる。

 先程撃たれた箇所の痛みが悪化し、少し歩こうとしても強烈な痛みが襲ってくる影響でこのまま戦うのは無理だと怜は悟る。

 怜が動けない状態を見て今が逃げるのに絶好の機会だと思った上城戸は後ろに伸びている森林の方に姿を消していった。

 そして彼の体の輪郭が完全に見えなくなる寸前に上城戸は1つだけ言葉を残していった。


「また生きていたら、今度こそ決着をつけよう。辻井怜」


「待て!!」


「無茶しちゃダメっすよ!」


「そうですよ、今の辻井さんはかなりひどい怪我をしているんですから」


 怜が上城戸の後を追おうとしたところで木の陰に隠れていた瀬戸口と神崎が静止させる。

 2人の言う通り、今の状態で上城戸を追おうとしても万全な状態ではないことから他の敵メンバーの攻撃を完全に避けきることはできないだろう。

 しかし怜はあんな厄介な存在を早々に始末してこの後の遊戯(ゲーム)を有利に進めたいと思っていた為、どうしても彼を追跡したかったが、2人にこれ以上心配してほしくなかったので怜は渋々彼を追跡することをあきらめる。

 一旦は上城戸を退けたが、未だ生存している。いつどこで襲ってくるかわからない。

 それに加えて恐らく2手に分かれているのがバレてしまった。

 上城戸はこれから一旦他の敵チームの元、または拠点に行くはずだ。そこで他のメンバーに情報共有を行って別の作戦を練ってくるに違いない。

 そこで怜も一旦橘にトランシーバーで連絡を取り、生き残っている全員を集合させる形をとろうと考えた。

 そう決めた後は遊戯(ゲーム)開始前に配布された包帯を撃たれた箇所に巻き、準備が済んだところで2人にこれからの行動について話す。


「……一旦橘さん達と合流しましょう」


「何故ですか? このままあっちに行ったら敵チームと鉢合わせになってしまうのでは……?」


「恐らくこちら側がどういう風に行動しているのかは、上城戸(あいつ)によって他の敵チームに筒抜けになるはずです。なので作戦を変更するべきだと思ったからです」


「でも、移動中に襲われたら意味ないんじゃないっすか?」


「来た道、つまり自分たちのスタート地点の方から回り道で行けば何とかなるかもしれません。恐らく相手もさすがに全体は回り切れていないはずですし」


 神崎や瀬戸口が怜のこれからの行動に疑問を持っていたが、怜の言う通りかみきどは必ずメンバーに情報を伝えるはずのため、このまま行動していればいつか相手が全員固まって一斉に攻撃してくる可能性もあり得る。

 最悪な事態を回避するために、怜は今自分たちが通って来たルートに沿って戻りながら橘のチームと合流するのが現在の目的だ。

 こんな広い島の中で同じ道筋を何の形跡もなく通るのはかなり無理がある上に、kの地面は少し硬い土で形成されているので足跡もなかなかつきにくい。

 そのため、怜はあらかじめ迷った際の解決案として木の枝を十字に重ねた物を不自然にならないように地面に置いてきていた。

 恐らく相手も未だ開始から2時間しか経過していないので、怜の考えとしてはまだこちら側のスタート位置にまではたどり着けていないのではないかと思っており、それなら遠回りになってしまうが来た道から回っていけば敵とも遭遇することなく橘達と合流できるだろうと考えていた。


「じゃあ、早速橘さんに連絡をしてみます」


 そう言うと怜はトランシーバーを取り出して橘の方に連絡を入れる。


「もしもし、橘さん?」


◇敵チーム・上城戸視点


 怜との戦闘の後、上城戸は包帯で止血しながら仲間の元に向かっていた。

 生憎怜に撃たれた箇所は致命傷になるところではなく、痛みはあるものの耐えれる程度のため、走って仲間に情報共有をしに向かう。

 今回の戦闘で分かったことは2つ、敵は2手に分かれて行動しているということ、辻井怜という上城戸チーム、そして反怨者の脅威となる存在がいた事を仲間に一刻も伝えなければいけない。

 この遊戯《ゲーム》は油断した者から脱落していく、死が必ず傍にいる最悪の催し。

 走ること20分、上城戸は他のメンバーが探索している付近に到着し、辺りを見回してメンバーを探すと丁度近くに休憩していた20代前半の黒髪の男性が1人いた。


「あ、上城戸さん……って、どうしたんですかその傷!?」


「おお、樋口君。悪い、少し油断してしまった。だが私の事は心配無用だよ。次は必ず仕留める」


「ならいいですけど、無理しないでくださいね」


 樋口(ひぐち)と呼ばれる男性は上城戸の腹部の包帯からにじみ出ている血を見て驚くが、本人から大丈夫だと言われて本人がそういうなら大丈夫なのだろうと思いつつも、上城戸を心配すると上城戸は笑顔で返す。

 そのご、上城戸は男性に今近くにいる仲間を全員呼んでほしいと頼むと男性は奥の探索に向かった人達を呼びに行き、10分ほど経つと他のメンバーがぞろぞろと集合地点に集まる。


「上城戸さん、全員呼んできました!」


「ありがとう。助かるよ」


「で、話って一体何なんだ?」


 樋口の呼びかけでやって来た体格のいい男性が話の内容を早く知りたいと言わんばかりの声色で上城戸に話しかける。


「敵チームと先程交戦してね、どうやら相手は2手に分かれて行動しているようだ」


「2手に?」


「うん、そして何より、相手に1人だけ、厄介な者がいた」


「上城戸さんが厄介と思うほどって、相当なんじゃないですか?」


「そいつの名前は?」


「そいつの名前は、辻(・)井(・)怜(・)」


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