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人工悪魔は影から  作者: イワスズタ
第1章 2/3 The Hollow Ordeal 死島団戦篇

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42.正義か、悪か

 怜の前に現れた男は1対1の勝負(タイマン)を望んでいるようで、他に敵が現れる気配は怜からは感じられなかったが、気になるのはどうやって1人で内田と山村を一斉に仕留めたのかだった。

 今回の遊戯(ゲーム)のルールによって悪魔・天使の能力は使用不可となっているわけなのだから、能力を使って云々ではないはず。

 そうなればこの男の他にも最低でも1人、もしくは2人が隠れており、狙撃したとしか考えられない。

 

「お前、どうやって2人を殺した?」


「君、ストレートに聞いてくるね。まあ、教えてあげる」


「……」


「スナイパーライフルを二丁持って同時に撃ち抜いた」


「スナイパーライフルを、二丁、同時に……!?」


 なんとその男は両腕にスナイパーライフルを持ち、同時に内田と山村を撃ち抜いたというが、対人用のスナイパーライフルの重量は基本的に5~8kgほどで、両腕に一丁づつ持つとなるとかなりきつい、いや、ほぼ不可能なことを男は成し遂げている。

 しかも両腕ということはスコープを覗かずに一発でこめかみに命中できたとなると、反動やブレ、風向きなどを完全に把握した状態で行っていたと考えるに、この男はかなりの腕を持った人物で、この戦いは非常に苦戦する予感がした。

 その男が平然と成し遂げたことに怜と他の2人は驚くことしかできず、その表情を見て男は高らかに笑う。


「はっはっは! いい表情だ」


「あの顔、もしかして……」


「何か知ってるんですか?」


「……あの人、反怨者かもしれません……」


 神崎が男が笑っている姿を見ていると、どこかで見覚えがあるような発言をし、もしかして現存の反怨者かもしれないということを口にした瞬間、男は先ほどまでのにこやかな表情から一変し、神崎をにらんでいるかのような表情に様変わりする。

 反怨者という単語を聞いた時、怜はいったい何のことか一切わからない状態だったが、人を殺して平然と笑顔を浮かべるようなやつだから、きっと悪人の中の1人なのだろうと考えた。

 すると男はゴムヘアをとり、結っていた長い髪をほどき、長い前髪かきあげ、神崎に自身の正体がバレてしまった以上、もう隠す意味はなくなったと思ったのか、自分の名前を3人の前で名乗る。


「バレたならしょうがない。私の名前は上城戸征也(かみきどせいや)。反怨者集団、夾竹桃《きょうちくとう》所属のS(・)級(・)能(・)力(・)者(・)」


「S級、能力者……!?」


 男の正体は現存の反怨者団体の1つである夾竹桃所属のS級能力者、上城戸征也だった。

 上城戸が日本にたったの20人しかいないS級能力者の1人であるということが分かった瞬間、瀬戸口や神崎は開いた口を閉じることができないくらいに驚きの表情をしていた。

 怜もS級だという点にはおどろいていたが。まず反怨者という言葉を今ここで初めて聞いたので、そちらの方が気になっていた。


「神崎さん、反怨者って一体何者なんですか?」


「現代の能力者社会の仕組みや行いに納得がいかない能力者や、その関係者が手を組んで作ったいわゆる反社会組織。今は3組しか残っていないって聞いているけど……」


「ひどいな~ 君たちのような社会からは善人と思われている人は、私たちの事を悪人だと謳っているけど、私たちが実際に行っているのは現代社会の改革さ」


「改革?」


 上城戸はただ自身が思う悪のために動いているのかと思っていた神崎だったが、上城戸は今のこの社会全体を改革するために動いていると聞き、疑いの反応を示す。

 何せ表向きの社会では反怨者は市民を完全な悪の存在だと示唆されてきている中で、本人の口から改革を行うためだと言われたならば、それは自分を正当化しようと言葉を並べているに過ぎない。

 そして話を続けようとする上城戸だが、どこからか取り出したサバイバルナイフを右手に持ちくるくると回し、怜の方向に投げるが、怜はその攻撃を簡単に躱し戦闘態勢をとるが上城戸は人差し指を立てて首を横に振る。

 恐らくまだ話があるということを伝えようとしているのが伝わってくるが、上城戸がサバイバルナイフを怜に向かって投げたのは理由があり、遭遇から3分が経過しても戦闘が行われないというルールを潜り抜けるためだった。

 刃物を敵に投げる、すなわち戦闘は終わっていないということを表すために行い、今行っている会話以外の事を考えるような無駄な時間を使いたくなかったのだろう。

 そして上城戸は鋭い目つきをして話を再開する。


「今の日本社会は3年前に今は亡きS級能力者、灰崎文哉(はいざきふみや)が起こした史上最大級の国内テロの影響によって対策本部はおろか、政府も保守的な考えに180度考えを変えた」


「保守的……」


「そして現在、前よりかは保守的な考えは少なくなったものの、それでも割合は半々。弱者のために力あるものは能力を使う、力が強すぎるものは制限される。そんな腐った社会で、生きていくのが嫌になった能力者が多数現れるようになり形成されたのが反怨者、そして10団体だった」


 上城戸が口にした灰崎文哉という人物が3年前に起こした史上最大の国内テロを起こしたことによって現在の能力社会がつくられたという。

 怜も3年前のテロの事は知っていた。 

 発端の人物までは上城戸が言うまで知らなかったが、内容は大雑把だが覚えており、協力するはずのない人間とエピドロメアスが何故かともに都市や街を破壊した大規模なテロで、首謀者は情報を全て吐いた後に対策本部の人間が処刑したという事件だ。

 テロが行われていた日数は約4日にも及ぶ長期間で、新聞やニュースにも大々的に取り上げられていた。

 被害者は数十万にも及んでいたことから、上城戸の情報が正しければその被害から日本は保守的な考えに移ったのも納得ができないこともない。

 しかし、だからと言って今の日本の政策を恨み、反怨者になり今度は自分が社会を脅かすのは、その灰崎が行っていることと変わりなく、絶対に間違っていると怜は強く思っていた。


「……俺はそんな理由で反怨者になるなんて、間違ってると思う」


「実際に戦いの場で経験してないからこそ言えるもんだよ、それは。君もいつかわかるはずだ。弱者のために戦うのがいかに大変か、今の政策がいかに間違っているかをね」


 上城戸は自分の立場を理解してくれなかった怜に対して少し苛つきを覚えていた。

 こいつも他の人間(モブ)と同じように、反怨者、そしてその組織も間違っている悪の存在だと認知しているということに。

 そして怜は山村の死体のズボンのポーチからもう一本のサバイバルナイフを取り出し、それを上城戸の方に投げると上城戸はまた武器を変えており、近接戦闘の可能性を考えて次はピストルを構えており、その銃でサバイバルナイフを弾きとばす。


「分かり合えると少しだけ思っていたが、やはり駄目みたいだね」


「当たり前だ。俺はこの世界に蔓延る悪を許すつもりはない。邪神も、お前たち反怨者もな」


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