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人工悪魔は影から  作者: イワスズタ
第1章 2/3 The Hollow Ordeal 死島団戦篇

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38.新たな遊戯

 怜が今入った部屋には計10人ほどが滞在していた。

 この部屋にいることから第1回遊戯(ゲーム)である無限迷宮《インフィニティ・ラビリンス》をクリアした人たちなのだろう。

 その中には顔見知りもいた。


「お兄さん!」


「辻井さん!」


「エル、陽凪」


 最初に怜の元にやって来たのは陽凪とエルだった。

 怜が何とか脱出できたことに安心できたのか、エルに関しては今にも泣きそうなくらいの表情だった。

 安心できたのはれも同じで彼女たちが無事に脱出できたことに対してほっとした表情を浮かべる。


「そういえば、湖崎は?」


「湖崎さんなら、あちらで休憩してますよ」


「ありがとう。ちょっと行ってくる」


 最初にこの部屋に入ってきてから湖崎の姿だけ見えなかったのでどこにいるか陽凪に聞いてみると、隣の部屋で椅子に座りながらゆっくりとコーヒーを飲んでくつろいでいる姿が見えたのでそちらの方に向かう。

 隣の部屋のドアを開けると、湖崎が視線だけを怜の方に向けながら変わりなくコーヒーを飲んでいた。


「さっきは助かった」


「礼を言われるほどの事ではない」


「俺は結構助かったんだけどな……そういえば、死点はいくつまでいったんだ」


「175点だ。このペースでいけば次の遊戯(ゲーム)で200点に到達できる」


「もう少しで、お兄さんとお姉さんの怪我が治せるんだな」


「ああ、もし願いに上限があって2人の怪我が治せなかったらお前たちの手を借りることになるが」


「そこはみんな了承してるし、別に気にしなくていい」


 怜は第1回の遊戯(ゲーム)で湖崎に助けてもらったことに対して礼を言うが、彼からしたら礼を言われるまでの事はしていなかったようで、怜の感謝は素直に受け取らなかった。

 そして気になっていたのは今の湖崎の所持点数だ。

 怜との戦いの後、どのくらい点数を稼いでいたのかを聞けていなかったので聞いてみると、湖崎は今175点を所持しているという。

 この点数を人を殺さずに稼いだのだから家族を元気にさせようという気持ちがどれほど大きいのかを怜はひしひしを感じていた。

 しかし問題は願いに上限があるかどうかという点で、ラティオマラは遊戯(ゲーム)からの脱出などはできないと言っていたが、それ以外で叶えることのできない願いの上限はどこまでなのかが気になっていた。

 例えば死んだ家族を生き返らせる、遊戯(ゲーム)内で死んでしまった感染者の復活はできるのか、そこが現時点で曖昧なため、もしかしたら湖崎の兄姉である祐樹・乃愛の容態をよくするという願いもギリギリ不可能という可能性がある。

 その時は約束通り、陽凪たちの生還者の賞金を湖崎に全額渡すということを確認するが、怜も他の2人もそのことについては全て了承しているので気にしなくていいと怜は言う。


 その話をしていると館内にアナウンスが流れ、そのアナウンスを聞いた怜と湖崎はアイコンタクトを取り、他の全員が集まっている大広間に向かう。


【第2回遊戯(ゲーム)開始まで20分を切りました。今から配布する番号と位置しているゲートに向かってください】


 そうアナウンスされると怜達の手元にそれぞれ番号が書かれた小さな紙が配布され、怜の紙には【1(・)0(・)】と書かれていた。


「お兄さん、番号は何でした?」


「10番だな」


「同じだ! よかった……」


 番号の紙を持ってエルが怜の方に向かい、怜の番号を確認し、自分と同じ番号であることが嬉しくて目を輝かせて怜の方を見ている。


 「俺もエルと同じでよかった。そうだ、陽凪と湖崎は……」


「わたしは3番です。第2回では離れ離れになりますね」


「俺は7番だ」


「第2回は2人とはバラバラになるのか。少し寂しいな」


 陽凪と湖崎は怜とは違う番号で、第2回では怜とエルは一緒に行動するが、湖崎と陽凪は別のゲートに入っての参加となる。

 怜は第2回もこの4人で協力して進んで行こうと思っていたので、バラバラになっることが分かった瞬間、少し寂しい気持ちが混み上げてきた。

 そんな中でもエルとはまた同じになったので、次の遊戯(ゲーム)でも大切な彼女を守りながらクリアに向けて進んでいこうと思った時、ふと2人の友人の顔が浮かんだ。

 そう、怜の高校の同級生の山崎創希(やまざきそうき)と藤山友也(ふじやまともや)の二人の事だ。

 あの2人は怜とは違い悪魔の力も天使の力も有していない非能力者であるがゆえに、このいつでも人が死んでしまう空間では自身の体だけが頼りな彼らにとってはかなりのハンデがある。

 そんな中でも彼らが無事かどうか怜は心配だった。

 高校から知り合い、友達となり、一緒に2年間過ごしてきた友人の彼らと、遊戯(ゲーム)開始前に一緒に生き延びようと約束したのだから。


「お兄さん、行きましょう」


「……ああ」


 考えているときにエルがポンポンと背伸びをして怜の肩を優しく叩くと、怜は非糸まず今はこれから行われる第2回遊戯(ゲーム)のことに集中しようと気合を入れ直す。

 そして10と書かれたゲートの中に入っていく。


 ゲートの中には壁が白い部屋が広がっており、机には数多くのサバイバルナイフや銃、防具が置いてあった。


「これは……」


「もしかして」


「殺(・)し(・)合(・)い(・)を(・)、(・)今(・)か(・)ら(・)す(・)る(・)の(・)か(・)?(・)」


 そのことを考えた瞬間、背筋が凍るような感覚が怜とエルを襲う。

 怜は第3回まで必要ない殺しは行わないと決めていたが、こうも早く人間同士の殺し合いが始まるとは思ってもみなかった。

 そしてこれから行われることに対して恐怖感を感じていた時、後ろから怜に対して話しかけてくる女性と男性がこちらに向かってきていた。


「ねえ、お二人さん、今いいかな」


「はい……」


「あたしは橘明夏音(たちばなあかね)。炎をメインに使う悪魔系の能力者。こいつは」


「瀬戸口康太(せとぐちこうた)っす! 能力は守備がメインの天使系能力者っす!」


 突然話しかけてきた赤髪のポニーテールできりっとした目をしている女性は橘明夏音といい、自身の能力のことまで話し始め、隣にいた坊主頭の青年は瀬戸口康太と言い、見た目から怜と同い年くらいだというのに軽い敬語で挨拶をしてきた。

 外見だけ見ればとても強そうな人たちで、怜が今この人達と戦ったとしてももしかしたら負けてしまうのではないかという雰囲気が醸し出ていた。

 しかし、口調は優しい性格だというのが伝わってくるくらいの明るい声をしており、さっきまでの恐怖感はいつの間にか消え去っていた。

 そこで自己紹介をしてもらったならば、こちらもしなければと思い、怜達も自己紹介を始める。


「俺は辻井怜って言います。こっちの少女はエル。記憶喪失で今は訳あって一緒に行動しています」


「よろしくお願いします」


 怜から自己紹介してもらったエルは手短に挨拶をして2人に向かってお辞儀をする。


「エルちゃんか、よろしくね。ところで、怜はどんな能力を使うんだい?」


「俺は……亜空間魔法と隠密、ですかね……」


「2つも能力を使えるのか!? もしかして少し前から現れてる能力変異だったり?」


「まあ、そんなところ、ですかね……」


 橘から怜の能力を聞かれ、少し目線をそらしながら自身の能力を2(・)つ(・)だけ教えた。

 何故2つだけなのかというと、第1回の際に陽凪の前で様々な能力を見せたところ怪しまれたので現時点で基本的に使うものだけを教えるとやはり能力を2つや3つ持っている能力者は珍しいようで橘は驚いた表情を見せる。

 しかし橘からでできた能力変異というのは初めて聞いたもので、一体何のことかわからなかったが、取り合えず流して答えた。

 後から聞いたことだが、能力変異とは通常人間1人に能力は1つというのが基本だったが、10年ほど前から今まで所持していた能力が体内で分裂を起こし、その分裂した片方が別の能力に変異するというものらしい。

 その症例は世界的に見てもかなりケースが少なく、100万人に1人の確率とのこと。

 そして対処法や治療法なども未だ発見されておらず、能力変異した人間はそのまま生活を送ることとなっている。


【第2回遊戯(ゲーム)の説明を行います】


 会話が終わったころに、壁に掛けられているモニターから音声がなり始め、これから行われる第2回のルール説明が行われようとしていた。

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