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人工悪魔は影から  作者: イワスズタ
第1章 1/3 The Hollow Ordeal 無限迷宮篇

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37.第1回遊戯・閉幕

 陽凪と会う前に発見したゲートは現在いる位置から走って約3分程度のところにあり、1人が脱出してからもう1人が脱出のゲートを捜索できる時間はおよそ6分といったところ。

 間に合うのか不安だった怜は走りながら湖崎に話しかける。

 

「間に合うのか?」


「間に合わせるんだ。なんとしてでも」


 湖崎から返って来た言葉はいわば精神論だったが、この状況では思いのほか正しい意見だと怜は感じていた。

 この最終局面で新しい作戦を考えるとしてもその考える時間、話し合う時間、実行する時間のそれぞれが圧倒的に足りないことから新しいものは出さずにゲートを探して脱出するということだけに集中して遊戯(ゲーム)をクリアするだけだった。

 走ってゲートの場所まで走り、陽凪と会う前に発見したゲートに1分早く到着することができた。

 この1分間はかなり大きい。


「よかった。こっちはまだ残ってた」


「だが問題は俺とお前、どっちが先に脱出するかという点だ」


「……」


 幸運なことにこちらのゲートはまだ誰れにも見つからずに残されており、怜はほっとした表情をしていたが、ここからがさらに問題だ。

 湖崎の言う通り、どちらが先にこのゲートを使用するかという点だった。

 このゲートを使った者は無事に時間内に脱出できるが、もう1人は残りの約7分間でゲートを見つけないといけなく、もしかしたら脱出することができない可能性が出てくる。

 その状況で先に言葉が出たのは怜だった。


「湖崎、お前が先に脱出してくれ」


「……何故だ」


「?」


「何故お前はそんなに自身を犠牲にして他人を助けることができる!? お前も生きて脱出したいはずだ」


 怜が湖崎に先に脱出するように声をかけると湖崎は小声でしゃべり、その声が聞こえなかった怜に次は大きな声で怜に自身が思っている疑問をぶつける。

 怜は今までエル、陽凪、そして湖崎と様々な場面で自分より他人を優先し、自分は最後でいいというスタンスで動いてきたが、それは客観的に見ればとても実行するのには覚悟がいる行動だ。

 それを嫌な顔1つせずに行ってきた。湖崎はどうしてそんな難しい決断を簡単に行えるのかがとても疑問に思っていた。


「……湖崎は、お兄さんとお姉さんを助けるっていう目的があるだろ?」


「……ああ」


「そして、その為に陽凪も脱出しないといけない。エルには俺よりも明るい未来がこれから待っているし、彼女の命は俺が守ると約束した。それぞれ目的があるからこそ、俺はそんな人たちを優先して生かしたい」


「……」


「でも、俺にはそんな目的はない。生きて家族に会いたいとか、無事に生還して何かしたいとかがないから」


 怜が自分より他人を優先する理由、それは単純に脱出した後の目的がないからだった。

 湖崎は生存して家族を助ける、陽凪はそれに協力するために生存する、エルは怜自身が一番大切にしていてこの先ある長い未来を生きてほしいからという理由だ。

 怜の家族は中学生の頃に両親が蒸発し、兄弟もいない一人っ子ということもあったので脱出したからと言って親が涙を流して待っているわけでもなければ、親戚が待っているわけでもない。

 友人である藤山と山崎もこの遊戯(ゲーム)に参加しているが、彼らは非能力者である分短所が大きいため、申し訳ないが助かる可能性は少ないと考えていた。

 しいて言うならば、この遊戯に対する目的は、エルを第3回終了時まで守り、無事にこの空間から脱出させることだ。

 それを聞いた湖崎は、彼の覚悟がいかに決まっているかを再認識させられ、目を見開いた。


「……なら、あの少女はお前にとってどんな存在なんだ」


「それは……一番大切な人だけど」


「あの藍白の少女も同じようなことを言っていたぞ。お前も、彼女(エル)のために生き延びたらどうだ?」


 怜にとってエルは大切な存在だ。それは間違いない。

 そのことを伝えると陽凪も今の怜と同じような言葉を言っていたことを伝え、目的についてエルのために生き延びたらどうかと提案をしてくる。


「と言っても、お前は俺を優先するんだろ? だったら、早くゲートを見つけに行け。彼女のために」


「……ああ」


 怜にこのような言葉をかけてもすぐにその悪い部分が改善されるはずはないと思った湖崎はエルのためにゲートをいち早く見つけるように伝える。

 その言葉を聞いた怜は間をおいて返事をして、湖崎に背を向けて走ろうとした瞬間、怜は再び湖崎の方を振り向いた。


「湖崎!」


「なんだ」


「ありがとう」


「……そんな礼は生き延びてからにしろ」


 怜は湖崎にお礼を言うとすぐに反対を向いて走り始めた。

 その後ろ姿を見送る形で、湖崎は自分の左手に持っていた鍵をゲートの鍵穴に差し込み、ゲートの中に入っていき、全身が入ったところでゲートは閉ざされた。


◇遊戯(ゲーム)終了まで、あと5分


 湖崎と別れた後は一目散に走ってゲートを探していた。

 そして湖崎が倒したテラポーンが15分が経過したことで復活し、それを今自分が持っている魔力を振り絞って通る道に現れるテラポーンを一撃でなぎ倒しながら進んで行き、残り時間2分になったころには怜の所持点数は60点から105点にまで到達した。

 しかし105点にまで行ったとこでもう残っている魔力はたったの1割で、走る速度もだんだん遅くなり、息を吸っても吸っても酸素が入っていく気配がしない。


 そんな中でも走り続け、時間がだんだんなくなっていき、ついに残り時間も30秒になってしまった。

 もう後がない状況で、疲れから両膝に手をついて下を向いた怜だが、すぐにまた走る体制をとろうとした時、目の前約100メートル先に青く光るゲートがあるのを目にした。


「あれが、脱出のゲート……!」


 残り20秒で100メートルを走り切り、鍵穴に鍵を挿しこんでゲートに入る、という流れだが間に合うか微妙な時間だった。

 しかしここまで来たら後はやるしかない、と思った怜はすぐにゲートの方目掛けて残っている力を振り絞って走っていく。

 そんな状況で怜を脱出させまいというかのようにC級B級のテラポーンが出現したが、怜は表情を変えずにすぐ亜空間魔法で短剣1本を取り出し、目の前の道を塞いでいるテラポーンを1撃でなぎ倒していく。


残り15秒 ゲートまであと50メートル


 「ぐっ……」


 先ほどから走っている影響で片足が今にも攣りそうになり、思わず苦しみの声を出すが、それでも走る足は止めずにゲートに走っていく。


残り10秒 ゲートまであと15メートル


残り7秒 ゲートまであと9メートル


残り5秒 ゲートまであと5メートル


残り3秒 ゲート到着


 残り3秒のところでギリギリゲートに到着し、ゲートを見つけた時から左手に握りしめていた鍵を鍵穴に指す。

 鎖が瞬時に解かれ、そのゲートに一目散に入っていった。


残り1秒 辻井怜脱出成功


【制限時間6時間経過。第1回遊戯《ゲーム》 無限迷宮《インフィニティ・ラビリンス》終了。】


 何とか脱出に成功し、それと同時に第1回の遊戯(ゲーム)が終了した。

 そして脱出できなった感染者は、最初にゲートに入れなかった感染者と同様に頭部が何者かによって消されてしまい、死亡となった。


 脱出に成功した怜はクリアできたことから一気に力が抜けて手と膝をついてはあはあと息をする。

 少したってから落ち着いた怜が上を見上げると、その目に映っていた景色は、ちくたくと鳴らしている掛け時計、食料や水が入ったペットボトルが置いてある4人用の正方形のテーブルなどがある部屋だった。


「……ここは、いったい……」





第1回遊戯《ゲーム》、無限迷宮《インフィニティ・ラビリンス》、閉幕。

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