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人工悪魔は影から  作者: イワスズタ
第1章 1/3 The Hollow Ordeal 無限迷宮篇

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32/82

32.脱出までの道②

◇第1回遊戯(ゲーム)終了まで残り1時間半


 湖崎との戦闘でかなりの時間を消費してしまい、残り時間はあと1時間半といったところまで迫ってきていた。

 彼と怜達が別れてからというもの、鍵を探すが残りの1本、怜の脱出の鍵がなかなか見つからずにいた。

 もう隠されている鍵はすべて見つかってしまったのだろうかという不安が過るが、それでももしかしたらの可能性を信じて残り1本の鍵を探しに向かう。


「鍵、中々見つからないですね……」


「残り時間は大体1時間半、時間が無いな……」


 道中に宝箱はあるものの、開けても空のものばかりでただ時間がどんどんと過ぎていく一方でこのままではエルと陽凪だけが脱出し、怜が脱出できなくなってしまう。

 そろそろ残り時間1時間が経過し、脱出のゲートが出現する時間になり、そこからはゲートの捜索に時間を使わなければいけない。

 しかし森林に入ってから約3時間歩き続けた事に加えて、先程の湖崎との戦闘で魔力をかなり消費した上にまだ傷の方も癒えておらず、今の状況で激しい戦闘を行うのは厳しい状況だった。

 そういった焦りから思考がたびたび鈍ったり、顔には冷汗が滲み始めていた。

 エルや陽凪の前ではあまり心配させないようにと平然心を装っているが、内心では残り少ない時間でどうやって残り1本の鍵を探そうかととても焦っていた

 

 その後も鍵を探し続けるが、一向に鍵は見つからず、とうとう残り時間は1時間を切った。

 その瞬間、ゲームウィンドウが開いて情報が伝えられる。


【残り時間が1時間となりました。これより脱出ゲートが出現します。】


 ここからは残り1本の鍵よりも脱出ゲートを3つ見つけることが優先される。

 1つのゲートに入れる人数はたったの1人なので、怜達は残り1時間で3人分のげートをこれから捜索しなければならない。

 そんな中、辺りの景色が見えずらくなっていき、視界の良好度は今までの半分程度まで落ちた。


(霧がさらに濃くなった……?)


 すると再びゲームウィンドウが開く。


【残り1時間では霧の濃度が倍増します。周辺に注意してお進み下さい】


 残り時間である1時間では森林内ぼ霧の濃度がさらに高くなるという情報が入った。

 ただでさえ今までの霧は濃く周辺の視認性が悪く、湖崎の奇襲も気づかなかったというのにこれ以上霧の影響で視認性が悪くなれば湖崎以上の人物が来た際に対応ができなくなってしまう。

 怜の万全じゃない状態のときにタイミング悪く環境の変更、あまりにも理不尽な現環境に嫌気がさして思わず「チッ」と舌打ちをする。

 その音を聞いたエルが心配をして声をかけてくる。


「お兄さん、大丈夫ですか……?」


「……ああ、大丈夫だ。それよりも今は脱出のゲートを探しに行かないと」


「でも、それだと残りのお兄さんの鍵を探す時間が……!」


「今はゲートが優先だ。それにもし俺の分の鍵を探すのに時間を割いて脱出ゲートが見つからずに3人とも脱出できずに死んでしまったら元も子もない」


 それでも怜のことが気になるエルが「でも……」と言った瞬間に怜は我慢の限界が来たのか、下を向きながらいつもの声とは少し違う大きくエルが思わず体を震わせるような声を出した。


「ゲートを見つける方が優先だ!!!」


「っ……」


 焦りから来てしまった我慢の限界。

 それをエルに発散するかのように、いつもの彼女を一番に思うような声ではなく怒りの声をぶつけた。

 その声が森の中に響き渡り、静寂が数秒間流れる。 

 臆病な性格の陽凪でさえ驚く時に出る声が喉の中でぴたりと止まり、出そうにも喉が何かしらのストッパーが作用しているかのようで一切出ない。

 数秒経ち、はっと我に返った怜がエルの方に駆け寄り自分のしてしまったことを謝る。


「……ごめんエル! 思わず……」


その時、怜に対して怒りの感情を抱いたことのなかったエルが初めて怜に言葉をぶつけた。


「何焦っているんですか、お兄さん」


「……え?」


「何焦っているんですかって言っているんです! 確かに達成すべき目標は山済みで混乱するかもしれません。でも、そんなのいつものお兄さんじゃありません!」


「……」


「一旦、落ち着いて、次にすべきことを考えてみましょう?」


 そういった時、エルが怜の両手をぎゅっと握って来た。

 握ってきた手は少しひんやりしていたが、握られた瞬間優しく温かい感覚が流れる。

 その感覚のせいか、先ほどまで込み上げていた焦りなどといった負の感情がゆっくりと薄くなっていき、ぐちゃぐちゃになっていた頭の中も雲一つない空のようになっていった。

 頭の中がすっきりしたことで先程まで自分がいかに焦ってまともな行動や判断ができていなかったのかが分かり、この3組の中で主軸となって動いているのが恥ずかしいとまで思うほどだった。

 そして冷静になったところで「ふーっ」と1つ深呼吸をしてから今からすべきことをしっかりと考え、まとまったところで再びエルの方を向く。


「……ありがとう、エル。おかげで自分がどれだけ焦っていたか分かった」


「力になれてよかったです」


「陽凪もごめん、悪い雰囲気を作って」


「いえ、わたしは、大丈夫です。辻井さんが、もとの辻井さんに戻ったなら」


 陽凪にも先程のことを謝ると柔らかな表情で怜の謝罪に対して返事を出した。

 

 冷静になれたはいいいものの、残り時間は50分、急いでゲートと鍵を見つけないといけない。

 やはりゲートを優先して、2人をゲート内に入れてから鍵の捜索とゲートの捜索を同時並行した方が良いのだろうかと自分に聞かせる。

 

 多分、その方法しかない。


 1人ずつに分かれてそれぞれゲートを探すのが最も効率の良い方法だが、陽凪は能力を使って何とか生存できるかもしれないが、問題は非能力者のエルだ。

 序盤に渡した短剣はしっかりと持っているが、それでもやはり心配な面が表向きに出てしまう。

 陽凪と2人組にしたところで結果は成功にも失敗にもどちらにも転び得る。

 何か手はないのか、と様々な作戦や陽凪の能力でできることを探したが、やはり見つからない。

 そんな中、ふと自分の能力に焦点を当ててみると使えそうな能力があったのを完全に忘れていた。


「2人とも」


「はい?」


「新しい作戦を思いついた」


「「新しい作戦?」」 


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