31.脱出までの道①
「……というのが俺が立てていた計画だ」
「だから、点数を稼いでいたのか」
湖崎は自分の計画をすべて怜に話し終えた。
怜達は思っていたものよりも湖崎が死点を他人を殺してでも稼いでいた理由が灌漑深いものだったことに、思わず湖崎が行っていたことに対して同乗の意思が生まれてしまいそうになっていた。
湖崎の中で今一番大切なのは2人の兄姉の命だ。
目を覚まさない日が続き、今回のような200点を使用することで規則に干渉しない願いを1つ叶えられるという状況が生まれ、焦りなどが生まれてしまい他人を殺してでも200点を獲得するといった他人からは納得されないような計画を企ててしまうのも無理はない。
「俺は一刻も早く、兄さんと姉さんを救わないといけないんだ……!」
湖崎が声を振り絞って言う。
「でも、他人を殺して手に入れた200点でお兄さんとお姉さんを救ったとしても、2人は心から喜んでくれないと思う」
怜の言う通り、他人を手にかけて手に入れた200点で願いを叶え、祐樹と乃愛を救ったとしても、それは本当に2人を救ったわけでもなければ、2人が心から自分達の命を救ってくれたことに対して喜んではくれない。
2人が心から喜んでくれるのは、地球の脅威となる邪神やテラポーンを討伐して手に入れた200点で願いを叶えることだ。
しかし、そのようなことは湖崎は分かっていた。分かっていながらやろうとしていた。
「そんなことは分かってる! それでも、いち早く助けて、安心させてやりたいんだ……!」
湖崎の目には涙が滲み始め、今にも涙腺が崩壊してもおかしくないところまで来ていた。
湖崎はできるだけ早く2人の命を助けたかったが、他人を殺して100点を獲得する以外で効率的な死点の稼ぎ方をどれほど考えても出てこなかった。
S級のテラポーンを倒せば20点を獲得できるが、敵の強さは段違いに上なことに加えて復活までの時間が15分おきとかなり時間ロスが起きてしまうため、あまり好ましい作戦ではない。
怜の現在所持点数は55点。
怜の場合だと他人の殺害は視野に入れずにテラポーンの討伐点数だけで200点まで行こうとしているがかなり効率が悪く、湖崎の最初に考えていたテラポーンだけの討伐点数で願いを叶えるという作戦の難しさを物語っている。
そんな中、陽凪が声を震わせながら意見を述べる。
「あ、あの……湖崎さんのお兄さんとお姉さんは、今も入院中なんですよね……?」
「ああ、そうだが」
「確か、この遊戯を最後まで生き残った際の賞金1000万が与えられるんですよね……? その賞金をお二人の治療費に充てられないんでしょうか……?」
「……できなくはない」
「もし足りない場合は、わたしが生き残って手に入れた1000万も全てお渡ししますが……それでも駄目なものなんでしょうか……?」
「……」
陽凪が導き出した意見は第3回まで生き残った生還者に与えられる賞金1000万を治療費に充てられないか、という意見だった。
足りない場合は自分の賞金も全て湖崎に渡すと言ったが、湖崎はそれでもその意見の同意するか悩む。
問題は確実性がないこと。
第3回終了までに殺害されたり規律違反すればその時点で死が確定し賞金は勿論手に入らない。
もし湖崎が生き残り1000万を獲得したとして、陽凪が死んでしまった場合、湖崎だけの1000万だけでは必要な治療費が足りないといった状況になるのもあり得る。
こういった問題があり得るならば、このまま個人で遊戯を進めた方が結果的には効率が良いのではないのかと湖崎は考えていた。
「その考えは無し、とまではいかないが、リターンとリスクが比例しない危険性がある」
「ですよね……」
陽凪も少し無理を承知の上で提案してみたが、思っていた通りの意見が返ってきてガクッと肩を落とす。
「だが、その意見を受け入れる場合が1つだけある」
「えっ……」
「第3回終了時にお互いが生き残ったらの話だがな。俺はこれからも個人で行かせてもらう」
湖崎は条件付きで陽凪の提案を受ける形にした。
条件というのは第3回終了時に湖崎と陽凪の両方が生き残っていた場合にだけ、賞金1000万を治療費に充てる、足りない場合は陽凪から足りない分の治療費を分けてもらう。
湖崎はそれまでは陽凪もしくは自分が死んでしまう危険性を考慮して、第3回終了までは別々で行動することにした。
陽凪は意外な条件に驚いたが、湖崎の条件はよくよく考えてみれば理に適ていると感じた。
「わかりました。それなら異論はないです」
湖崎との会話が終わり、この場から立ち去ろうとした瞬間に、怜はまだ湖崎の名前や自分たちの名前を共有していないことに気づき、湖崎を引き留める。
「待ってくれ」
「まだ何かあるのか?」
「俺達、まだ名前を言ってなかったよな。これからのことも踏まえて名前を共有しておいた方がいいと思うんだが」
「……湖崎清人だ」
「俺は辻井怜。こっちの金髪の女の子がエル、アイスブルーの髪をしたのが陽凪」
「よ。よろしくお願いします……」
それぞれの名前を名乗っていくが、エルだけはまだ先程の恐怖が完全に消えておらず、怜の後ろに隠れながら挨拶を交わした。
「これで終わりか?」
「ああ、お互い生き残ってまた会おう」
「ふん」
すると湖崎は走りながら反対方向に進んでいき、自分の目的のために再び動き始めた。
「俺達も行くか。残りの鍵と脱出のゲートを探しに」
「行きましょうか」
怜達も湖崎と別れてから、残りの鍵1本と脱出ゲートを探しに向かいに行った。




