25.反怨者
怜達が暗闇の森林に入ろうとしている中、現実世界の方では近藤が天津に邪神について、加えて人工悪魔の適合者である怜について話し終わった頃だった。
「……なるほど。つまり邪神は9体存在していて、そのうちの1体であるラティオマラってやつが今動いていてそいつが行ってる、言わばデスゲームに日本初の人工悪魔の適合者がいるって訳ね」
「簡単に言えばそうなる」
「でもさ、その邪神本体が今何処にいるか分からないのなら対処のしようが無くない? 僕でさえ、対象を残穢0から居場所を特定するのは無理だよ」
最も問題なのは、邪神は現在何処かに身を潜めている状態であり、探そうにも魔力の残穢だったり何か特定できるものが何一つ無いため、超越者の天津でさえ捜索するのは難しい。
天津が捜索可能なのは0.1%でも残穢が現場に残っている状態であることだが、先日の青黒い雨が降った後に黒役が雨の降った現場に行き、装置を使って魔力残穢をラティオマラがいた現場の魔力計測を行ったものの、何処にもそれらしき残穢や証拠となるものは無かった。
今ゲート外に居る人間に出来るのは次に襲来してくる邪神に対しての対策とEDA9内での戦略の協議だけだが、それとは別に1つだけ天津に適任の仕事が残っていた。
「それとは別に、今この状況で適任の仕事がある」
「……まさか、反怨者への対応じゃないだろうね?」
「そのまさかだ」
「ちっ」
天津が口にした反怨者という存在は能力を持った人間、もしくは能力に関係する人間が現代社会に対して恨みや憎しみを持った者達で構成された集団の事で、日本だけでも反怨者の団体は今までで合計10組存在し、それぞれ名前がある。
馬酔木
夾竹桃
鳥兜
樒
カルミア
フォースクローバー
クロユリ
ダリア
睡蓮
黒薔薇
この10組の団体があるが、既に天津や対策本部に所属している能力者が数年前から壊滅させた団体もいくつかあり、現存している団体は、夾竹桃、睡蓮、黒薔薇の3組だけとなっている。
しかし残っている反怨者団体にはいずれもS級が1人ずつおり、なかなか対応が難しいところがある。
貴重なS級の能力者が反怨者になり、世間をおびやかしているのには理由があった。
3年前に起こったとある能力者が起こした未憎悪の大事件が引き金となり、地域によっては革新派などから保守派の考えに移った支部が増え、その影響で活動がしにくくなったというのが理由だ。
その3年前の事件の関係者である天津は、事件の影響で悪に寝返った能力者はあまり手に掛けたくないという理由から軽く舌打ちをした。
「僕はあんまりそういうのしたくないんだけどね〜 S級は国内外問わず貴重な存在なわけだし、反怨者のS級の奴らって、保守的な考えの影響で寝返ったんだから、根本的に今の能力社会を変えていくしかお互いwinwinな関係にはなんないと思うよ」
「そこも協議を重ねている。しかしながら、保守的な考えを頑なに変えてくれないところがあるのが問題だ」
「京都と、北海道、あと宮城だっけ」
「ああ、だが宮城は半年前に和解した」
「へえ、やるじゃん」
京都と北海道の対策支部は元々保守的な考えを持ち、昔から受け継がれてきた能力や社会を大事にするといった考えで今まで動いてきていた為、それを協議で説得するのはとても難しい。
宮城は半年前に近藤が1人でなんとかならないかと何回も和解を行った結果、あちら側が対策本部の事を認め、保守派の考えから脱却したといい、それを聞いた天津はにやりと笑い近藤の行動力をほめる。
しかし、宮城を説得できたとしても。残る京都と北海道の保守派を説得しなければ反怨者の動きが止む事は無いと天津は考えていた。
そういった積み重なる問題があるからこそ、近藤から適任と言われている天津は動きたく無かったが、先程邪神の話をする代わりに対策本部に力を貸すという約束を結んだ為、引くにも引けない天津は頭をわしゃわしゃと掻き、ソファから立ち上がった。
「······分かった。僕が動けばいいんでしょ?」
「助かる」
(保守派の人間を潰せば簡単に事は済むのにね。と言っても、それは周りの人間が求める事ではない。全く、死んでも尚人をとやかく困らせるやつだ、あいつは)
心の中で愚痴を吐いた天津はスマートフォンを取り出し、任務を頼んできた人の連絡先を開き『しばらく任務は出来そうに無いんでキャンセルで』と伝えて電源を切った。
「んじゃ、パパっと潰してくるから。何か他に言っておきたいことがあるなら今のうちだよ」
「S級の反怨者は生かして捕らえてくれ。反怨者といえど、貴重な人材だ」
「はいはい、何とかやって見せますよ」
「頼んだ」
最後に天津の背中に近藤が小さく礼をすると、天津は振り向かずに手をヒラヒラと振って局長室を後にした。
局長室を出た後は執務を行っていた霧野の元に向かい、反怨者についての情報を聞き出しに向かった。
監視課の部屋に着くと、霧野はモニターに目を集中させながらキーボードを打ち込んでいた。
「話、終わったんですね」
「ああ、久々に自分の父親のような存在と話したよ。それと、急ぎで反怨者について情報収集よろしく」
「······なんだか、昔の天津さんに戻った気がしますよ」
「そう? 僕自身としては戻ったつもりなんて無いんだけどな〜 ま、そういった雑談は後日。今は反怨者について調べてくれ」
「分かりました。情報が分かり次第、連絡します」
「よろしくー 頼りになる後輩」




