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人工悪魔は影から  作者: イワスズタ
第1章 1/3 The Hollow Ordeal 無限迷宮篇

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24.先の見えない場所

 A級のテラポーンを討伐した後、先に進み森下を殺害したC級のテラポーンも軽々と討伐し、怜の点数は40点まで行った。

 これまでの作業を同じ様に残り4回行い、目標の200点まで行く、といった流れで進んでいくとなるととても骨が折れる作業になる。

 やはりもっと効率的に点数を稼ぐためにA級のテラポーン、もしくはS級のテラポーンを討伐しなければいけなくなってくるが、まだ怜達はS級のテラポーンに遭遇したことがないのでどれくらいの強さなのかが未知数だ。


 怜とエルの元居た部屋に移動している最中、何故か怜は急に誰(・)か(・)に(・)心(・)を(・)乗(・)っ(・)取(・)ら(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)かのような謎の感覚に陥り、頭の中で繰り返しある言葉が聞こえてくる。


『人を殺し、100点を獲得しろ』


 人の感情が無い場合、最短ルートで200点に到達し、エルとの敵対関係をなくすという願いを叶えるためには、今ここで陽凪を殺し、今後出会う無関係の人間を殺し、それぞれ100点ずつ手に入れるという動きが最短の道だった。

 しかし怜にはしっかりと人の感情はある。そんなことはしたくない。

 だが今一番大事なのはエルの身の安全だ。

 エルに怪我をさせずに、最終第3回まで進み、この遊戯(ゲーム)から生存者として脱出させる。

 そのためには今ここで陽凪を殺して最低でも第1回終了の時点で100後半の点数を所持し、第2回でもう1人殺して100点を獲得して願いを叶えるというのも状況次第では仕方ない行為になってくる。

 繰り返し言葉が聞こえてくるせいで自分の考えがまとまらなくなってきているのか、怜はいつの間にか亜空間魔法を使ってエルに渡しておいた短剣のもう1本を取り出していた。

 後少しで陽凪の右横腹に短剣が突き刺さろうとした時、右と左どちらの道に進めば良いのか分からなくなったエルが尋ねてきた。


「お兄さん、これって右に行くんでしたっけ? あれ、聞こえてない? お兄さーん」


「……ん、ああ、悪い。少しぼーっとしてた。もう1回言ってくれ」


「この先って右に曲がるんでしたっけ?」


「ああ、そうだな、右に曲がれば俺達が最初にいた部屋にたどり着けるはずだ」


 エルに何度か呼ばれ、背伸びをして肩をポンポンと叩かれると怜は正気に戻り、手に持っていた短剣もすぐに仕舞った。

 だが何故か先程までの数分の記憶があまり思い出せないという奇妙な状態になっていたが、これといって身体の調子が悪いというわけではない。

 エルは怜に道を聞いて安心した表情を浮かべていたが、反対にいた陽凪は何処か怜に対して心配そうな表情だった。


「あの……大丈夫ですか? 何処か体調が悪かったり……」


「大丈夫。別に体調が悪いわけではないから。本当にただぼーっとしちゃってただけ」


「なら良いのですが……」


 生憎エルが寸前で声を掛けてくれたお陰で陽凪に刃を突き刺さずに済んだ。彼女は何処も怪我をしていなかった。

 その後は何事も無く怜とエルの部屋の前まで到着し、部屋の中に入ってタンスの下段を確認してみると、エルの言っていたとおりに鍵穴があった。

 それも手に持っている鍵の大きさとタンスの鍵穴の大きさは一致しており、早速鍵をタンスの鍵穴に挿し込んで捻ると「カチャン」と音がなり、3人の背後の壁が変形して外に通じるドアが現れた。

 ドアの形状は屋内の様なドアの先が見えない構造とは異なり、怜の丁度目線くらいの所に小さくガラスがあり、その先が見える構造になっていて。その先には最初に見た薄暗い森林が見えていた。


「よし、行こう。多分この先は外に外に繋がっていて、外は薄暗い森林だ。気をつけて進もう」


「「はい」」


 2人と最終確認を取り、怜はドアノブに手を掛けてゆっくりとドアを開ける。


 ドアを開け、その先に見えていたのはまるで永遠と続いているかのような森林で、地面には手入れが一切されておらず雑草が生い茂っている。

 そして何より驚いたのは、自分達が今居た建物が、同じ様に横にずらりと並んでいることだった。

 無限迷宮《インフィニティ・ラビリンス》の意味がようやく分かった気がした。

 そもそもいままで居た建物は迷宮内にある無数の建物の中の1つであって、建物自体が迷宮ということではなく、単なる第1回のチュートリアルの様なものに過ぎなかったということ。

 「この様な仕掛けがある」、「この様な化物がいる」といったことを実体験を通して説明していただけで、制限時間は進んではいるもののまだ本当の第1回は始まってはいなかった。

 

(なるほど。違和感を感じていた理由がようやくわかった)


「多分、今まではチュートリアル的なもので、この先にある森が本当の無限迷宮《インフィニティ・ラビリンス》だ」


「ここから……なんですか?」


「ああ。さっきまでいた建物は言わば、この遊戯(ゲーム)に対して消極的だとか、純粋すぎるようなラティオマラにとって好ましく無い感染者を選別するための物だったんだと思う」


「選別……」


 怜は自分の考えがだいたい当たっていると確信していた。

 なぜならその光景や仕組みを間近で体験したからだ。

 序盤の森下との宝箱の譲り合いの時は、怜の無能力者の方が何かしらアイテムを持っておいたほうが良いという提案に森下が何のためらいもなくその提案を受け、結果宝箱に潜んでいたC級のテラポーンに殺害された。


 次に内部の構造の狭さだった。

 無限と名乗るものだから通常ならば永遠と続く通路があるのが普通だが、この建物内は2階が封鎖されており、1階だけの捜索で部屋の数は全部で7つ。この時点で怜には違和感があった。


 仕組みの簡単さもあった。

 テラポーンとの戦闘で疲弊していたのもあったが、鍵穴が7部屋全て探してたったの1つしか無い事から、エルのように最初から覚えていれば簡単にクリア出来る内容だった。


 以下の理由から、怜はこの考えが自分的に当たっていると確信していた。

 2人への説明も終わり、3人は森林へと進み始めた。


「行こう」


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