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人工悪魔は影から  作者: イワスズタ
第1章 1/3 The Hollow Ordeal 無限迷宮篇

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21.アウトプット

 魔力が全身に行き渡っていくのを感じた怜は、魔力に対する意識を全身から両手に握っている短剣へと変え、剣全体に纏わせるようにすると、全身に纏っていた魔力がだんだんと小さくなっていき、集中的に腕から手に流れていき、最終的には短剣全体にだけに魔力を絞り、纏わせることに成功した。

 魔力を纏った剣は目の前にいるテラポーン同様にオーラとして剣に流れており、そのオーラの色は透明な灰色のようにうっすらと見えた。


(なんか、俺のオーラ薄っすらとしか見えないんだけど、本当に大丈夫か……?)


 怜は自分のオーラがテラポーンの様にくっきりと見えていなかったので、本当にこれで大丈夫かと心配していた。

 確かに今短剣に纏わせている魔力は全体の3割程度しか使っていないが、人工悪魔という強大な力の3割というのはここまでしょぼいものなのだろうかと思っていた。

 しかし今の状況でこれ以上の力を使ってしまえば、この後に襲ってくるかも知れない同等級のテラポーン、もしくはS級相当のものが来た時に困ってしまうので、今回は3割の力をキープして戦う事にした。

 

 怜はすぐさまテラポーンの方向に突進し、奴が自分の頭目掛けて刀を横に振りかざしてきたのをスライディングで躱した後、股下から背後に潜り込みがら空きの背中に大きく切り傷を残すように魔力の籠った短剣で切ると、思った通りさっきまでの攻撃では効かなかったはずの攻撃が奴がうめき声のようなものを出すくらいには通用するようになっていた。


(やっぱり、魔力を乗せた攻撃は硬い鎧に通用する!)


 そして切った部分から何か赤く光るものが少しだけ見えたが、恐らく奴の弱点であるコアだった。

 するとテラポーンは後ろを振り向き怜に斬りかかろうとしてきたが、怜は咄嗟に回避し再びテラポーンと間隔を取った。

 左手に持っていた短剣をしまい、後ろにあるテーブルに何か無いかと探って見るとテーブルの上に三徳包丁と中華包丁、そしてペティナイフの3種類の刃物があり、怜はその中で軽くて扱いやすいであろうペティナイフを左手で取った。

 怜の作戦はまずテラポーンの方向に走り、ペティナイフをブラフとして奴の右半身の何処かに投げ、刀で弾いた隙を狙って左側から回り込み、奴のコアを破壊すると言った作戦だ。

 

 お互いじりじりと時計回りに移動しながら攻撃のチャンスを狙っていたその時、水道から捻り出た一滴の水がシンクに『ポタン』と落ちた音がキッチンに鳴り響いたのと同時に前方へと走り始めた。

 怜は先程の作戦通りに左手に持っていたペティナイフをテラポーンの右半身に投げると、刀を左肩から右足に掛けて大きく振りかざし、ペティナイフを弾き落とした瞬間を怜はしっかりと確認し、がら空きになっている左側から背後に回り込み、先程攻撃した際に出来た鎧の割れ目に短剣を思い切り差し込むと丁度コアの部分に命中したのか、テラポーンはうめき声を出し、両手で握っていた黒い刀をカランと床に落とし、消滅していった。

 するとゲームウィンドウが開き、死点の加算が行われた。


【A級テラポーンを討伐しました。辻井怜に15点が加算されます】


(何とか倒せた……しかし、あんなしょぼそうなオーラでも意外と戦えるもんなんだな)


 これで怜の所持している死点は20点。

 まだまだ目標の200点まで程遠いが、早い段階でA級のテラポーンを討伐できたのはかなり大きかった。


「エル、大丈夫か? もう倒したから出てきても安心だぞ」


「ありがとうございます。お兄さん、怪我とかは?」


「大丈夫、無傷」


 怜がエルの事を呼ぶと隠れていた物陰から匍匐前進(ほふくぜんしん)で抜け出し、立ち上がるとすぐに怜の心配をしていたがこれといった怪我は無かった。

 どちらかと言うと心配なのはエルの方だった。

 戦闘中にテラポーン、もしくは怜の攻撃が当たっていたかもしれなかったからだ。

 念のため怜はなるべくエルの隠れているところから自分とテラポーンを近づかせない様に動いていたが、万が一のことがあってもおかしくなかったので、一応エルにも怪我が無いか確認したが、怜が上手く立ち回っていたお陰でエルも傷一つ無いようで安心した。

 すると再びゲームウィンドウが現れ、次はテラポーンを倒した際のドロップアイテムの説明だった。


【A級のテラポーンを倒したことによりドロップアイテムがあります。回収しますか?】


 ゲームウィンドウの下には『YES』と『NO』の2つの選択肢があった。

 恐らく『NO』を選べばドロップアイテムは消滅し、手に入れることはできなくなるだろう。

 しかし逆に『YES』を選べば今後約に立つかもしれないアイテムが手に入る可能性が会ったため、怜は迷わず『YES』を選択した。


「YES」


【承認されました。辻井怜にドロップアイテム1つが配布されました】


「これって、さっきあいつが使ってた刀、だよな」


 ドロップアイテムとして手に入れたのは先程戦ったA級テラポーンが戦闘に使っていた黒い日本刀だった。

 右手に持つと禍々しい雰囲気を漂わせており、思ったより重さは無くどちらかと言うと軽い分類に入る刀だが、中身がすっからかんというわけではなく、きちんと中も高品質高密度の素材で作られているようで、なんだか不思議な刀だと感じた。

 するとこの刀のステータスらしき説明がゲームウィンドウに現れた。


 惨黒刀(ざんこくとう)

 入手難易度:A

 特殊能力:この刀に魔力を注ぎ続ける事でさらなる力を得る事が可能。しかし一度に大量に魔力を注ぎ続けると器として刀が限界に達し、破壊される。

 

 この説明が本当ならこの刀はまだ完成形ではなく、持続的に魔力を注ぎ続ける事で進化可能な刀ということになる。

 現在は入手難易度がA級となっているが、将来的にはS級、もしくはそれ以上のものになる可能性を秘めているということを知った怜は少しだけ緊張が和らぎ、高揚感が込み上げてきた。

 しかしこの刀を今から使っていくに当たって、今まで使っていた2本の短剣をどうしようかと思っていたが、1ついい案が浮かんだ。


「エル、この短剣、お前が持っててくれ」


「えっ? でも……」


「万が一俺とはぐれた時に護身用の武器がなかったら困るだろ? それに。この短剣はそんなに重くないし、エルでも扱える重さだから、心配ない」


「そういうことなら、ありがたくお借りします」


 怜は今まで使っていた短剣の1本をエルに護身用として渡した。

 ここは何が起こるかわからない、もしかしたら数分後には何者かに殺されていてもおかしくない環境だ。

 怜の言った通り、怜とエルがはぐれてしまった時に護身用の武器が無ければ、能力者ではないエルは簡単に死んでしまう。

 そういった可能性を考慮して短剣の飾りなどを切り落とし、シンプルな外見にした短剣1本をエルに渡すとエルは両手で慎重に受け取った。初めての刃物なのだから緊張するのは仕方ない。


「テラポーンも倒したし、このキッチンを少し探索しよう」


「はい」

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