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人工悪魔は影から  作者: イワスズタ
序章・前

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2.人工悪魔

 エピドロメアス対策本部局長、近藤重隆。

 その姿はだいたい50代、老いているとしても60代くらいだろうか、体格も凄まじいがそれよりも凄まじいのは近藤から漂っているこの光輝く様な神々しいオーラだ。

 噂によれば、現在最も天使の力を行使できる存在の一人なんだとか。


「本日は強引なやり方ではありましたが、来ていただきありがとうございます」


「俺になんの用なんですか?」


「要件を言う前に一つ、我々は現在とある計画を行っているのです」


「計画?」


 近藤が言っていた計画とは、一体なんのことなのだろうか。

 確か最近のニュースだと、アメリカと日本が共同してエピドロメアスを討伐する計画が立てられているというのは見たことがあるが、恐らくそれではないだろう。

 局長と2人きり、つまり他の黒服や社員に聞かれてはまずい情報を怜に伝えようとしているのだろう。


「人(・)工(・)悪(・)魔(・)についてです。ご存知ですか?」


「人工悪魔······?」


「はい。人工悪魔というのは、エピドロメアス討伐後に稀に現れる悪魔の残穢を天使の力で浄化、強化することでS級の悪魔の能力と同等、もしくはそれ以上の力を手に入れることができると言った物です」


 人工悪魔、始めて聞く名前だ。


 近藤曰く、悪魔の力というのは支配者から授けられた能力や人から受け継がれるもの以外にもエピドロメアスを討伐した時に稀に現れる悪魔の残穢というものがあるらしい。

 しかし残穢だけでは力を行使することは出来ないので、天使の力を持つ能力者が浄化と強化をすることでS級能力者と同等、もしくはそれ以上の能力を発揮できるようになるという。

 ただ完璧な人工悪魔の能力を行使するのはとてもリスクが高く、失敗例も多々あり、最悪だったケースは取り込んだ悪魔に自我を乗っ取られてしまい、都市一つを壊滅しかけた事があった。

 そういう事も昔からあったことから、人工悪魔はまだ数が少なく、現在人工悪魔を行使している能力者は世界に4人しかおらず、アメリカ、中国、フランス、南アフリカにそれぞれ一人ずつおり、日本にはまだその能力に見合った適合者は居ないとのこと。

 ここで怜は嫌な予感がした。

 もしかして自分に人工悪魔の力を授けるのではないかと思った。


「もしかして······」


「お察しの通り、辻井さんにはその人工悪魔の力を行使して頂きたくお呼びしました」


「どうして俺が? もっと適正な人がいるでしょうに」


 嫌な予感が当たった。


 近藤は日本初の人工悪魔能力者を怜に決めていたのだが、怜は自分より他にもっと適正な人がいるはずなのに何故自分を選んだのか気になっていた。

 しかし近藤が怜を選んだのには理由があった。


「これは私が決めた事では無いのです。決められたのは支配者なのです」


「支配者って、この地球に天使と悪魔の力を残したっていう·······」


「そうです。その支配者が地球にメッセンジャーを介して1通の手紙を送り、その手紙には辻井さんを人工悪魔の能力者にするようにと書き記してありました」


 決めたのは局長である近藤ではなく、天使と悪魔の力を授けた張本人である支配者のようで、数日前に支配者のメッセンジャーを通じて一通の手紙を本部宛に寄越したそうだ。

 メッセンジャーというのは支配者の側近らしく、エピドロメアスのような地球の危機に陥るといった大きな予言以外の細かな情報伝達は基本的にメッセンジャーが此方に手紙を渡す形で行なっている。

 それはそれで何故支配者は自分を選んだのか、また別の疑問が浮かぶ。

 歴史によれば支配者が力を授けた人間はこれといった共通点がなく、無作為に選んだと言う風に教えられたが、今回も無作為に人工悪魔を選んだというのだろうか。


「でも、本当に俺なんかがそんな力を持って、大丈夫なんですか?」


「······天使の力が弱く、完全に浄化出来ていないケースが何回かありました。ですが、今回の力は最高ランクであるS級の能力者を2名、A級の能力者を5名派遣し、完全に浄化しているので暴走の危険性は無いかと。もし暴走した場合は此方が命を掛けて対処します」


 人工悪魔の元となる悪魔の残穢にはエピドロメアスの邪悪な呪いが掛かっており、それを完璧に浄化しなければ能力の核となる悪魔の力が暴走してしまう。

 こういったケースが過去何度か起きたようで、近藤は日本初の人工悪魔能力者を完璧に完成させるためにS級とA級の能力者を合計7名派遣し、完全に浄化する事に成功したようで暴走の危険性は無いと言う。


 この提案を受ければ、必ず人生が変わる。


 受けなければ、あの手紙に書いてあったようにこの地球が危険に曝されてしまう。


 怜は一つ深呼吸をしてから、近藤の目を見て話した。


「······分かりました、力を受け取らせてください」


「受けて頂けるのですか!?」


「はい」


 怜は近藤の提案を受け、人工悪魔の力を授かる事にした。

 その後、怜は近藤に地下施設に連れて行かれ、精密検査などを行い、最後に専用職員が黒い球体のようなものが入っている防弾のクリアケースを持ってくる。恐らくあれが人工悪魔のコアなのだろう。

 

「このコアを体内に取り込めば、晴れて能力者となります。覚悟は出来ましたか?」


「······はい」


 クリアケースから黒いコアを開封し、怜が手をかざすと黒い球体から紫色の凄まじいオーラが放出され、失敗かと思われた途端、その凄まじいオーラ全てが怜の体内に吸収されていく。

 怜も感覚として人工悪魔の力が自身の中に全て入ったというのが感じ取れ、何か力が暴走しそうな嫌な感覚は感じなかったので恐らく成功したのだろう。


「素晴らしいです。これで貴方は日本初の人工悪魔能力者です」


「はい」


「これからは我が国、いや、世界の為にその力を存分に使ったご活躍、期待していますよ」


 これで怜は名実ともに日本初の人工悪魔能力者となった。

 これからの活動は基本的には公の活動では無く、正体を隠した状態での活動となった。

 それもその筈、怜は今まさに日本初、世界で5人目の人工悪魔能力者として覚醒したのだから正体がバレればマスコミやニュースにも取り上げられ、まともな生活が送れなくなる可能性があるからだ。

 なので今の怜は言わば影の覚醒者と言ったところだろう。

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