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人工悪魔は影から  作者: イワスズタ
第1章 1/3 The Hollow Ordeal 無限迷宮篇

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19/82

19.かけ離れた男

 怜とエルが無限迷宮《インフィニティ・ラビリンス》を攻略している一方、ゲート外ではある男が動き始めていた。

  

◇謎の男視点


「久々に来たけど、変わって無いね〜対策本部(ここ)」


 男は数年間対策本部に顔を出していなかったが、約3年の海外出張から帰ってきたことに加えて人々の大量の死体を見たことから、今の状況はかなりまずいのではないかと思い、帰国後すぐに対策本部へと向かった。

 早速本部内に入ろうと入口に向かうと警備員に止められた。

 一般人なら用がある場合はすんなりと中に入る事ができて、受付で要件を伝える、と言った方式なのだが、今の男の外見はサングラスを掛け、ネクタイ無しの白いワイシャツ、そして黒いズボンと少し怪しい格好をしていたので警備員に止められてしまった。


「お待ちください、ここは邪(・)神(・)対策本部です。ご要件を」


「じゃ、邪神? なにそれ? エピドロメアスはどうしたのさ」


 男はいきなり邪神と言われて困惑していた。

 つい最近までここの名前はエピドロメアス対策本部だったのに、いつの間にか本部の名前が変わっていた上に聞いたことも見たことも無い名前、一体今の日本はどうなっているんだと言わんばかりだ。

 今回はただ局長に挨拶をしに来ただけなので、その事をそのまま警備員に伝えた。


「僕、局長に挨拶をしに来ただけなんだけど……駄目?」


「局長は今業務中です。時間を改めてお越し下さい」


「ええ〜?」


 どうやら局長は現在業務中らしく会うことができないと告げられ、男はテンションが一気に下がった様な声を上げた。

 男としても明日は別の場所で任務を依頼されているため、何としても今日中に顔を出して話がしたいというのにこのままでは母国である日本にわざわざ帰ってきたのが損になってしまう。

 正直な所、自分が今日日本に帰ってくる事も、対策本部に顔を出すのも局長本人には伝えず、サプライズで行きたかったのだが、そこで男は仕方がないと言った表情を見せて、自分の名前を出すことにした。


「じゃあさ、今局長に無線で伝えてほしいんだけど」


「内容はどういったものを?」


「天津悠(あまつゆう)が来たって、伝えてくれないかな?」


「分かりました……」


 男の名前は天津悠と言い、自分が本部に来た事を伝えて欲しいとお願いすると警備員は無線を使って近藤に連絡をする。

 すると焦ったような返事を見せ、連絡が終わると慌てて無線機をポケットに仕舞って天津の入局を許可してくれた。


「どうぞ、お入りください」


「どうも〜」


 天津はポケットに手を入れてさっきの下がりきったテンションとは思えないような上機嫌になって、鼻歌を交じりながらゆっくりと歩いていく。

 周りの職員や用があってきた人達は天津のその変わった外見から、気になってずっと見ていたが、天津はそんな事お構いなしに、まるで自分の目的以外は見ていないかのようにエレベーターへと向かい、局長室のある20階へと登った。

 局長室前に来ると霧野がいつもの様に見張り役として立っていた。


「お、真斗じゃ〜ん。久しぶり」


「······っ! 天津さん······」


「何その嫌な顔。せっかく君の大(・)先(・)輩(・)である僕が、空いた1日でヨーロッパから帰国して来たっていうのに」


 霧野は天津と会った傍から嫌な顔を浮かべていた。

 実は霧野と天津は高校の先輩後輩の関係で、とあることが起きるまでは普通に仲良く、偶に天津が霧野にちょっかいを掛ける程度の関係だったが、霧野が高校を卒業した辺りから天津は行方を晦ませていた。

 度々天津の目撃情報はあったものの、3年前からポッキリと天津の行方に関する情報が途絶えてしまっていた。

 霧野はもしや天津が死んだのではないかと思っていたが、今こうして再開できたことに少し安堵しているものの、少しだけ不満もあった。


「天津さん、どうして3年間も音信不通になっていたんですか?」


「まあ、色々会ってね」


「色々ってなんですか! 貴方がいなかった3年間どれだけエピドロメアスに手を焼かれていたか!」


「本当に色々あったんだって。それに、その3年間は連絡もまともに取れる状況でも無かったし」


「そんなに忙しかったんですか?」


「まあね」


 音信不通になっていた3年間というのは天津にとって多忙の毎日だったようで、連絡は何回か取ろうと試みたが、結局連絡が取れない状況だった。

 それに対し霧野は怒っており、天津が居なくなったせいで日本の能力者のパワーバランスが崩れ、予定していたエピドロメアス討伐の計画もいくつか0から再計画になったりと散々な事になっていたのに対しての怒りだった。

 再計画になったものはどれも天津が居て成立する計画ばかりだったので、居なくなれば当然計画は遂行出来ない。

 そういった仕事も霧野が所属している監視課にも回ってくるため、天津が居なくなってからというもの、仕事の量は倍に跳ね上がり、深夜までの残業も珍しくなかった。

 しかし天津としても計画がやりたくなくて居なくなったわけではなく、別に理由があって居なくなったので、自分のせいで計画が台無しになったことに関しては申し訳なく思っていた。


「で、局長は?」


「局長室で作業中です。了承は得ているので入って大丈夫です」


「サンキュー。そうだ、今度時間ある時飲みに行こうよ、今回の件、詫びたいのもあるから奢ってあげる」


「それはありがたいですね、是非」


 天津は今回の音信不通の件で大変な目にあった霧野にお詫びという形で後日呑まないかと誘うと、天津から直々に誘ってくるのはとても珍しいので、霧野もまだまだ聞きたいことなどもあったので、休日にでも一緒に行ってみようと天津の誘いを受けた。

 そして霧野との挨拶を交わし、天津は局長室に着いた。

 局長の近藤とは会うのは実に4年ぶりなので、自分の今の姿を見れば近藤も驚くのでは無いかとワクワクしながら局長室のドアをノックして部屋に入る。


「局長、久しぶり」


「……天津!」

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