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人工悪魔は影から  作者: イワスズタ
第1章 1/3 The Hollow Ordeal 無限迷宮篇

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17.無限迷宮①

 ゲートに入った瞬間、謎の光によって怜とエルは気を失い、怜が先に目を覚ますと視界には薄暗い部屋が広がっていた。

 部屋の周辺を見渡すとエルの他に誰かいるというわけではなく、怜と二人きりのようで他には小さいタンスが二つ置いてあった。恐らく怜とエル2人分の何かがそのタンスの中には入っている。

 タンスは二段構造になっており、上段の外見は普通だったが下段には鍵穴があり開かない構造になっていた。

 怜は立ち上がり、タンスの方に向かって歩き、タンスを開けてみると中には二つ折りにされた紙が1枚と懐中電灯、いくつかの食料が入っていた。


(紙……なにか書いてある)


 紙を開くと何かが書いてあり、確認してみるとそこにはこの無限迷宮《インフィニティ・ラビリンス》のルールとクリア条件が書いてあった。


 無限迷宮《インフィニティ・ラビリンス》のルール


・今回の遊戯(ゲーム)では協力・裏切りといった感染者間での関係は自由とする

・制限時間は6時間、15分毎に倒したテラポーンは復活する

・クリア条件は迷宮内にある宝箱から10分の1の確率で出る迷宮の鍵を入手し、残り時間が1時間半から出現する扉に鍵を差し込み、扉に入ることでクリアとする

・時間内に脱出できなければ失格・死亡とする


健闘を祈っている。


 と書いてあった。

 今回の遊戯(ゲーム)のクリア条件は見た所至って簡単、宝箱から現れる鍵を入手し、時間経過で出現する脱出の扉に時間内に入らなければ死ぬ、という内容だった。

 初回ということもあり、最初から高難易度の内容では実験体である感染者が次々とあっさり死んでしまうので、それに関してはラティオマラとしてもつまらないのだろう。

 しかし、最後の言葉は皮肉を言っているように感じて、怜は思わず紙をくしゃりと握った。


(人の命を何だと思ってるんだ……)


「お兄さん……」


「ん? ああ、目が覚めたのか。何処か怪我とかは?」


「大丈夫です。何処も痛みとかは無いです」


 ラティオマラに対して怒りが湧いてきた時、後ろで音がしたので振り返ってみるとエルが目を覚ました。

 その後、エルにもタンスの中の物取ってもらい、いよいよ扉の先にあるであろう迷宮に向かう時がやって来た。

 ラティオマラは迷宮内に罠などの有無はタンスに入っていたルールが書いてあった紙には書いていなかったものの、人の命をただの実験体だとしか思っていない奴のことだから、もしかしたら至るところに罠が張り巡らされているかもしれないと思った怜は、慎重に扉のノブを捻る。


「いいか、開けるぞ」


「はい」


「……これって、家、なのか?」


 扉を開けた先には、最初怜達が居た部屋のような薄暗い空間が広がっていたが、一つだけ不可解なのは壁には窓が付いており、外の景色が見えるようになっていた。

 このことから第一に感じたのは人の家の様な構造にとても類似していると感じた。

 普通迷宮なら壁や床が全てレンガ等で作られたのを想像するが、今のこの建物内の壁や床は木で作られており迷宮とはかけ離れ過ぎていると思った。

 視線の先にある通路には均等に花瓶や額縁が並んでおり、床の模様もこれといって変わった所は見受けられない。

 窓から見える外の景色は見た限り一面真っ暗闇の森が延々と伸びており、外に森があるということは何かしら意味があるのではないかと思い、窓ガラスを割って外に行ってみようと思った怜は拳に魔力を込めて殴ってみるも、窓ガラスはびくともしなかった。

 これがもし本当に家の構造をした迷宮ならば、何処かに外に出るための玄関口があるのではないか、そこから外の森に行けるのではないかと考えた。


(窓ガラスはびくともしない。外には森。迷宮というよりホラーゲームの家みたいだな)


「多分だけど、この迷宮は家の構造によく似てる」


「確かに、家の内装によく似ていますね」


「もしかしたら外に通じるドアがあるかもしれない。それを探そう」


「はい」


 現時点での目的は玄関に通じる扉を探すことに決まり、歩き始めること約10分が経過した所で前方に人影が見えたので少し早足でそっちに向かった。

 近くに行くと人影はくっきりと見え、170後半の身長の男性が見えた。


「あの」


「ん? 君たちは?」


「僕たちも感染者です。良ければなんですが一緒に鍵の捜索をしませんか?」


「勿論良いよ。協力して鍵を見つけ出そう」


「よろしくお願いします」


 男性の名前は森下荘司(もりしたそうじ)と言い、年齢は30歳で以前までは会社員をやっていたという非能力者だ。

 天使と悪魔の能力覚醒は基本的に早くて13歳〜15歳、遅くとも20代前半で見えるそうで、森下は20代後半までは能力者(ギフテッド)として活躍するのが夢だったらしいが、20代後半になっても能力が芽生えなく、そこからは一般人同様に会社員として働いているとのこと。

 余程能力者として活躍したかったのか、怜が自分の事を能力者だという事を明かすととても羨ましそうにしていた。

 当たり前だが、怜は能力者だということは明かしたものの、人工悪魔の能力者だということは隠しておいた。

 普通の能力者なら日本中彼方此方に居るので別にこれといった特別視されるわけではないが、S級能力者や怜の人工悪魔と言った存在は世界的に見ても貴重な存在なので特別視され、目立ちやすい。

 怜はそういった事をあまり得意としているわけではないので、森下には人工悪魔のことは隠した。


 そして怜は森下にもしかしたら外に通じる扉がこの迷宮内にあるかも知れないということを伝えた。


「それは本当なのかい!?」


「恐らくです。わざわざ窓ガラスを設置して外を見えるようにしているのが少し怪しいと思ったからです。必要無ければ、窓ガラスなんて設置する意味がわかりませんから」


「確かに、外にな何も必要ないならわざわざ外の景色を見せる必要は無い……」


 怜がその事を話すと森下は驚いていたが、怜が続いて窓が設置されている理由を述べると矛盾点が無いことから納得してくれた。

 すると服を引っ張られた感覚がしたので下を向いてみるとエルが何か言いたそうな表情をしていたのでエルの話を聞くことにした。


「お兄さん、あれ……」


「あれって、もしかして宝箱か?」


「多分……」


 エルが指を指した方向には紙に書いてあった鍵が入っているかもしれないという宝箱らしき物が置いてあった。

 見つけたは良いものの、運営側(ラティオマラ)はそう簡単には宝箱を取らせるわけにも行かないだろうと思った怜達は慎重に宝箱の方に歩いていった。

 しかし慎重に進んでいったは良いもの、これといった罠も無く宝箱の元にたどり着いた。

 この宝箱を誰が開けるべきか、というのは怜の中ではすでに決まっていた。

 森下だ。

 森下は非能力者とういう事もあって怜達よりも先に脱出すべき人間だ。

 もし宝箱に鍵が入っていなくとも、何かしらもアイテムや武器が入っていれば護身用として使うことが出来る、と言ったメリットもあった為、エルの納得の上、最初の宝箱は森下に譲る事にした。


「本当に私で良いのかい? 辻井君やエルさんが先に開けるべきでは……」


「僕は能力者です、それだけで今回の遊戯(ゲーム)でアドバンテージはある。森下さんが開けるべきです」


「そういう事なら、お言葉に甘えさてていただくね」


「どうぞ」


 宝箱を開けた瞬間、思っていた中で最悪のことが起こる。


「えっ……」


「森下さん!!」

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