14.規律
ラティオマラが動きを見始めてから約50分が経過しウィンドウの文字はあと2文字程度しか残っておらず、怜の思い通り約1時間で文字は全て消えるような仕組みだった。
そんな中、隣で時間が来たらどうなってしまうのだろうかと恐怖でエルは震えていた。
自ら彼女を護ると決めた怜は、頭に手をポンと当ててゆっくり優しく撫でた。
「大丈夫、何があっても必ず君だけは守る」
「はい、ありがとうございます······」
そして1時間が経過した。
ウィンドウの文字は全て消え、ブラックアウトしたかと思った時、新たな文字が現れた。
【諸君、ご機嫌よう】
【私はラティオマラ。48時間後に開催する遊戯の内容とルールを説明する】
ウィンドウには新たな文字、そしてその文字はラティオマラが操作している。
しかし最初の時に喋っていた片言の様な文体から流暢に話している様に感じた。
そしてラティオマラが企てた遊戯の日時が決定し、この文が現れた48時間後に開始するということが分かった。
【遊戯は3回行う。その中で人間の品定めをする】
ラティオマラが言っている感染者というのは恐らく青黒い雨を浴びてシステムの影響を受けた者の事を言っているのだろう。
そして感染者と表していることから、あの青黒い雨には何らかのウイルスが混入していたと考えられる。
しかし、品定めというのは一体何故、何の為に行うのかまでは全く意図が読み取れなかった。
続いてメッセージが現れる。
【これから、規律を説明する】
◇規律
Ⅰ. ゲームは全部で3回行われ、指定された日時に幾つかの場所にゲートが出現し、そのゲームには必ず感染者は参加する事。参加しなかった人間は体内のウイルスにより心臓が破裂・死亡する。
Ⅱ. 感染者は1度だけ非感染者と入れ替わる事が可能。非感染者がゲートに入れ替わりで入った瞬間、ウイルスは感染者から入れ替わりで入った感染者に移転する。入れ替わった者は再び他の非感染者と入れ替わる事は不可とする。
Ⅲ. ゲート内にはゲーム問わずラティオマラが召喚したテラポーンが散り散りに存在しており、倒すと死点が貰える。それぞれランクが指定されており、S〜Cまで存在し、ランク事に貰えるポイントは変動する。Sは20、Aは15、Bは10、Cは5点とする。感染者同士の死点の譲渡は認められない。
Ⅳ. ゲート内で何らかの形で感染者が感染者を殺害した場合、100点が加算される。基本的に感染者が感染者に最後のトドメを差した場合のみ加算とする。
Ⅴ. 200点を消費する事で1つ願いを叶えることが出来る。但し、遊戯からの退出、遊戯終了などは認められない。
Ⅵ. ゲーム内容はこちら側が無作為・公平に選択するが、感染者同士の殺し合いのゲームになった場合、もしもチーミングを行った感染者はお互い失格・死亡とする。基準は遭遇してから3分が経過しても戦闘が開始されないと判断されたものを処刑とする。
Ⅶ. 遊戯内容がもしも感染者同士の協力プレイになった場合、感染者を陥れ殺害する行為は禁止とする。行った場合は理由関係無く失格とし死亡とする。感染者の影響で死亡、もしくは怪我を負った時はそれ相応の対応を行う。
Ⅷ. 3回のゲームを終え生還した者の中から1人だけ特待生を選出し、それ以外の生還した感染者には賞金1000万を贈呈する。
以上、規律8ヶ条。
◇
ラティオマラが書き記した規律は長々と8つに分けられ書かれていた。
気になる所が様々ある。まずは規律Ⅰの参加しなかった人間は体内のウイルスにより心臓が破裂・死亡するという点だ。
参加しなければ死ぬというプログラムをウイルスに組み込んでいるのかもしれない、となれば、あの雨はコンピューターウイルスに類似した雨なのだろう。
二つ目は規律Ⅱの入れ替わりの内容だ。
AとBの人間で例えると、Aは感染者、Bは非感染者でAはゲートに入らない代わりにBをゲート内に引き入れる。
そうすることでAは非感染者となり、逆にBは感染者となりゲート内でゲームに参加する。そして感染者となったBは他の非感染者であるCを身代わりにゲートに引き入れる事は不可能だということだ。
ネガティブなのは規律Ⅳと規律Ⅷだ。
規律Ⅳの他の感染者を殺す事で得られる100点、これは規律Ⅴの願いを叶える為には結構なアドバンテージとなるが、怜は人を殺すのはあまり行いたくなかった。
感染者と言えど同じ人間だ。その人にはその人の大事な人生がある。
人を手に掛けるのは、自分の命、もしくはエルの命が他人によって危険にさらされた時、やむを得ずの状況だけにしようと決めた。
そしてあまり意味が分からない規律Ⅷの生還した者の中から1人だけ特待生を選出し、それ以外の生還した感染者には賞金1000万を贈呈するという部分。
普通特待生ならば普通の生還者よりも上の報酬を貰える筈だが、この規律文の内容では特待生の方が下の報酬という意味になりかねない。
(ついに動き始めたか······)
「······君、辻井君!」
「はい! なんでしょう」
「良かった、声を掛けてもこちらを向いてくれないからどうしたのかと思ったよ」
ラティオマラが開示した規律をまじまじと見ていると耳から少しづつ誰かの声が聞こえ、しっかりと聞こえた際に返事をすると後ろにいた近藤が声を掛けていた。
どうやら何回声を掛けても返事が無かったようだった。それほどこの規律に目を向け過ぎていたということだろう。
規律も一通り読み終わったので、その内容を全て近藤に伝えることにしたが、全て伝え終わった後の近藤の表情はとても険しい顔をしていた。
「······くれぐれも、死なないでくれ」
「分かっています。死ぬつもりはありませんし、エルの事もありますから」
「ご武運を」
近藤は怜にくれぐれも死なないようにと一言伝えると、引き締まった表情で怜は答えた。
勿論怜としてはこの遊戯で死ぬつもりは毛頭ない。エルを守る為にも。
最後に近藤から励ましの言葉を貰い、怜とエルは対策本部を後にした。




