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人工悪魔は影から  作者: イワスズタ
序章・後

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13/83

13.対談

「辻井君、無事で何よりだよ。私も霧野君同様、君が病院にいる頃に伺いたかったんだが、邪神の事もあって仕事が山ずみで行けなかった」


「いえ、お気持ちだけでも嬉しいですよ」


「それで、隣に居るお嬢さんは?」


 近藤は無事に退院できた怜の姿を見て一安心していた。

 何を隠そう怜は世界で5人目、日本では初の人工悪魔の能力者なのだから、能力を手にしてから約1年で死なれてしまったら近藤達が今まで研究と実験を重ねに重ねた成果の結晶を粉々に砕いてしまうのと同じなのだから、他の人よりも安否が気になるのは当たり前だ。

 そして近藤は怜に挨拶をすると怜の隣に立っていたエルの事が気になったので質問を投げかけてきた。今回はエルの事もあって来たのだからどちらかというと本題はこれからだった。


「彼女の名前はエル、と言っても、エルは記憶喪失で最近の事を除いて記憶が全く無い状態で、先日僕がテラポーンの討伐時に見つけました。今回はその事も少しだけお話出来ればと伺いました」


「エル、です。よろしくお願いします」


「なるほど······私は邪神対策本部局長の近藤重隆と申します。エルさん、こちらこそよろしくお願いします」


 怜がエルの紹介を終えるとエルは一歩前に出て改めて近藤に自己紹介を行って深くお辞儀をすると近藤も自分の名前を名乗って一礼をした。

 自己紹介が済んだ所で早速本題に入ることにした。

 近藤に伝えたいのは3つ。


 1つ目はエルも自分と同じラティオマラの雨の影響を受けている事。

 2つ目は今後の動きについて

 3つ目はエルの分の生活必需品の支給について

 

 この3つ、基本的にはエルについてを話すのだが、目を離せないのがラティオマラの今後の動きだ。

 ラティオマラがこの世界に顕現し、青黒い雨を降らしたあの日から3日が経過したものの、未だラティオマラや他の邪神達に動きは見られないがシステムが表している文から、早くともあと3日か4日後に何かしらの動きがあってもおかしくはない。

 エルも影響を受けた人間の一人だ。その為今後の動きを明確にしておくことで少なからずエルとの行動がしやすいのではないかと怜は思っていた。


「実は、エルもラティオマラの雨の影響を受けています」


「となると、やはりエルさんにもゲームウィンドウが」


「······はい」


「今のところ、そのゲームウィンドウに変化は?」


「ありません。まだあの画面のままです」


「そうか······」


 怜もエルも、あの日からゲームウィンドウには変わらずずっと【Coming Soon······】と表記されたまま動かない状態が続いている。

 そして2つ目の内容、今後の動きについて。

 恐らくあと1週間も経たない内に来るであろうラティオマラの計画についてのこちら側の動きだが、正直な所あちら側が何も仕掛けてこないので対策や準備などのしようが無いというのが現実だ。

 しかし怜は近藤ならば何か作戦を持っているのではないかという期待を抱いていた。


「次に、今後の動きについてなのですが」


「我々も対策を講じたいところではあるのですが、何せあちら側は何も動きを見せてこないのでこちら側が動くことは······」


(今のところ、為す術無し、か······)


 怜の思った通り、近藤も同じ様に邪神側の動きが見られないことから為す術が無いといった現状だった。


「最後に1つ、これは正直俺の我儘なんですが、エルの分の生活必需品の支給をお願いしたく······」


 怜は現在高校生で両親が居ないことから生活保護とバイトから収入を得ているが、それは怜一人の生活費でいっぱいいっぱいでそこにエルも加わると間違いなくお金が足りなくなる。

 そこで駄目押しで局長である近藤に生活費の支給をお願いできないかと頼んだ。

 正直な所、エピドロメアスの討伐の時から対策本部の命令で動いていたが、こちらに収入は一切入らずタダ働きしていたのだからそろそろお金の幾らか貰っても良いのではないかという考えを持っていた。


「分かりました。確かにエピドロメアスの時はこちらから依頼しているのに何も報酬という報酬を与えていませんでしたからね。その分のお礼も兼ねて、我々に支給出来るものなら支給させていただきます」


「本当ですか? ありがとうございます。後ほど、リストを書いてそちらに送ります」


「分かりました」


 近藤としてもエピドロメアスの報酬を与えていなかった事に関しては考えを持っていたようで、怜のお願いを快く了承してくれた。

 怜は後日リストアップした紙を対策本部に送るように伝えた。

 

 これで一先ず対策本部でやることは済んだので怜とエルは家に帰宅することにし、最後に近藤に挨拶をする。


「今日はありがとうございました」


「いえいえ、これからもご協力お願いします」


「では失礼しま······ん?」


「どうしました?」


 局長室のドアノブに手をかけた瞬間、突然ゲームウィンドウが現れ【Coming Soon······】という文字が徐々に消えていく様子を見せられた。

 隣にいるエルも同様の事が起きており、何が何だか分からないが、一つだけ分かるのはラティオマラが動き始めたということだけは分かった。


「ラティオマラが、動き始めました」


「本当ですか!?」


「はい。今まで【Coming Soon······】とだけ書いてあって操作不可だったものが、文字が徐々に消えていっています」


 文字が消えていくスピードはゆっくりとは言い難い速度で、この速度から考えるに1時間後にはこの文字が全て消えるだろう。

 

(約1週間を目処としていたが、これほど早く来るのは予想外だ······)


 帰ろうとしていた怜とエルだったが、ラティオマラが動きを見せたとなれば1時間後まで対策本部内で待機しておくのが得策だろうと思った怜は待機室で待つ事にした。


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