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人工悪魔は影から  作者: イワスズタ
序章・後

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12/82

12.訪問

 現在、怜は近所のショッピングモールでエルと買い物をしている。

 実は怜は近藤に挨拶しに行く日を調整し、2日後に改めて対策本部に顔を出しに行くことにしていた。

 なぜ翌日では無く2日後なのかというと、翌日、つまり今日は別の用事があり顔を出せそうに無かったからだ。

 その用事というのが、エルの日用品の買い出しだ。

 一応家では怜の中学生のジャージを貸しているものの、外出する際の服に加えて下着や歯ブラシなど様々買い揃えなければいけない為、一日空けてから近藤の元に向かう事にした。

 日用品といっても男女関係無く日々使っているものならどれを買えば良いのかは分かるが、女性の下着などはどれをいくつ買えば良いのかというのが女性との関係をこれまで持っていなかった怜には全く分からなかった。


「歯ブラシとコップ、あとは······」


「服と下着ですね」


「悪いが、下着はエルだけで買いに行ってもらっても良いか?」


「どうしてですか?」


「その······やっぱり女性の下着はあまり男が見るものでは無いから······」


 怜は少し口ごもりながらエルに下着だけは一人で買ってくるようにお願いをしたが、エルは何故私一人だけで買いに行かなければいけないのかよく分からなく、首を傾げていた。

 しかし怜とて男性だ。女性であるエルが着る下着を買うものとは言えどもあまり見るものでは無いと判断したからだ。

 かと言って他の場所で時間を潰すのは返ってエルを心配させてしまうのでエルにお金を渡した後、下着屋の入り口の近くにある椅子でエルの帰りを待つ事にした。

 待ち始めてから約20分が経った頃、下着屋から袋を片手に持ってエルが帰ってきた。


「お待たせしました」


「いや、大丈夫。ちゃんと買えた?」


「はい。あ、お釣り返します」


「それくらいのお釣りなら、エルが持ってていいよ。飲み物とか買う時に使ってくれ」


 律儀にエルはレシートとお釣りを手に持って怜の元に戻ってきたが、お釣りといっても大体500円程度だったのでそれくらいならば飲み物や他に買いたい物に充てても構わなかったので怜は受け取らなかった。

 その後は洋服屋に行き3着ほど外出時の服を購入したが、3着ともエルにとても似合う服ばかりで早くこれらの服を着て何処かに出掛けてみたいのか、服を買った後は鼻歌交じりで気分良く歩いていた。

 買い物を終えて、最後にフードコートで食事を取ることにし、エルに好きな物を食べさせたが、やはり怜よりも味に保証がある為いつもよりも笑顔がより良く見えた気がした。


「今日は何から何まで買ってもらって、ありがとうございました」


「好きな服が買えてよかったな」


「はい!」

 

◇翌日


 翌日の午前10時頃、怜は対策本部に顔を出しに行くために準備をしていた。

 エルの事も念の為近藤に伝えておきたいと思った為、エルにも支度をしておくように伝えておいたので家を出たのは大体10時半だった。

 いつもなら隠密と飛行スキルで空を飛んで移動していたが、隠密が他者に使えない上に飛び慣れていないエルを飛ばすのに危険性がある以上、飛行スキルを使うのは危ないと判断し、仕方なく歩いての移動にした。

 

「お兄さん、対策本部? ってどういう所なんですか?」


「大体1年前まで世界を脅かしていたエピドロメアスっていう怪物を根絶するために元々立てられた所で、今はこの前青黒い雨を降らした奴、邪神の対策本部になってる所、かな」


「邪神······」


 エルは対策本部に行くのは今回が初めてなのでどういう所なのか全く分からない状況だったので、簡潔ではあるものの怜はどういった所なのかを説明した。

 それ以外にも人工悪魔などの研究を地下施設で行っているようだが、それは国家機密レベルの案件なので人工悪魔を所有している怜でさえもあまりよく分かっていない。

 歩く事大体30分、白く巨大に聳え立っているビルに到着した。

 いつも通り正面入口からでは無く裏口から承認を得て室内に入ろうとしたが、今回は入る前に係員に止められてしまった。恐らくエルの事だろうと予測は付いていた。


「お待ちください。そちらの方はお入りできません」


「この子の事で局長に用があるんです。もし何かしらあれば、俺が責任を取ります」


「······一旦局長に連絡をしてみます。少しお待ちください」


「分かりました」


 対策本部の上層階は入れる人間が極端に少ない。

 入れるのはS級の能力者、各国の局長、そして人工悪魔の力を持っている怜程度だ。

 S級というのは能力者のランクであり、一番下がD、一番上が基(・)本(・)的(・)にはSとなっている。

 S級はとても貴重な人材であり、世界では合計100人いるかどうかという人数で、日本ではその内20人が在籍している。

 他国で代表的なのは3ヶ国、フランスに17人、アメリカに24人、中国に28人在籍しており日本は世界3位の在籍国となっている。

 しかし最近では貴重な人材であるが故に他国に派遣され活動しているS級能力者の日本人も何人かおり、現在では14人が日本で活動している状況だ。

 職員がトランシーバーで局長と連絡を取り合ってから5分後に再び裏口に戻り、ドアを開けて怜とエルを入場させた。


「局長からの許可が降りました。どうぞお入りください」


「ありがとうございます」


「案内は大丈夫ですか?」


「はい、何回か来ているので道のりは把握しています」


 怜はこれで対策本部に来るのは3回目だが、内部の構造は大体把握しているので職員による案内は不要と伝えると職員は一つ礼をして別の部屋へと移動していった。

 奥に進み、エレベーターを使って20階まで昇り、ドアが開くと目の前には手荷物検査をする職員と精密検査の機械が設置してある。

 局長というのは国内外問わずとても権力を持っているので局長に対する暗殺や内乱が起こることを防ぐ為にこうして綿密に検査を行なっている。

 そして局長室付近には攻撃魔法の使用が不可となるアンチマジックエリアを魔力を持つ機械がオートで24時間365日稼働させている。これも暗殺などを防ぐ為だ。

 局長室前に着くと、霧野が立っていた。

 霧野には事前に来ることを連絡していたので、こうして局長室前で来るのを待機していたのだろう。


「こんにちは、霧野さん」


「どうも。ところで辻井さん、後ろにいるのは?」


「最近出会った子で、彼女も雨によってゲームウィンドウが見えているそうです。その事も踏まえて色々と局長に伝えたい事があって連れてきました」


「こ、こんにちは······」


「こんにちは。お名前は何て言うんですか?」


「え、エル、と言います」


 怜は霧野にエルの事、そして彼女もラティオマラの影響を受けた人間だと伝えると霧野は少しだけ顔を顰めた。

 ラティオマラの影響を受けた人間は現在数えれる限りでは約20万人程だが、未だ数え切れていないので実際はそれ以上の人間が影響を受けていると考えられている。

 霧野は怜の後ろに半身隠れている少女の事が気になったので挨拶に加えて名前を聞いてみると、エルは怜以外の人と真正面で話すのはこれが初めてなので少し緊張しながらも自分の名前を名乗った。

 霧野からもエルが緊張しているのは感じ取れていたので挨拶が終わった後は笑顔で会話を続ける。


「よろしくね、エルさん」


「は、はぁ······」


「霧野さん」


「失礼、近藤局長でしたね。局長室にいらっしゃいますよ。話は通してあるのでお通り下さい」


「ありがとうございます」


 エルはまだ霧野の優しい笑顔に少し動揺しており、気まずい雰囲気が流れそうになるのを怜は察知し、話を切り替えようと霧野に呼びかける。

 すると霧野もすぐに切り替え、近藤の事を怜に伝えると一礼して監視課室に戻っていった。

 そして少し歩き局長室のドアの正面までやって来た。

 エルは初めての場所でまだ緊張している様子だったので、怜はエルの頭を優しく撫でて緊張をほぐそうとした。


「大丈夫、あまり緊張しなくていいよ」


「はい······」


「失礼します」


 ドアをノックし、ドアをゆっくりと開けると近藤の後ろ姿が見えは窓付近で外の景色を眺めており、二人が入ってきたのと同時に近藤はこちら側に身体を向けた。


「お久しぶりです、局長」

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