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第三話

「うお! ……とっとっと! 何者だお前!?」

「ただの通行人です。叫び声が聞こえたのでここまでやってきました」

「んなことはどうでもいい! この女どもはな、俺様の靴を汚しやがったんだ! だからそれにふさわしい罰を与えて──」

「汚れ程度ならば洗えば済むことでしょう? 人に暴力を振るって良い理由にはならないかと思いますが」

「ほう──お前、俺様の邪魔をする気か? おい、こいつの身体を押さえろ」

 金田の命令にボディーガードが即座に反応する。ヒイロは後ろから羽交い締めされる形になるが顔色一つ変えず、正面を見据えていた。

「安心しな。最低限、仕事は出来る範囲で痛めつけてやる。仕事をしていればの話だがな!」

 下衆な笑みを浮かべた金田がそう言いつつ、何かを懐から取り出そうとしたその時、どこからか焦げ臭いにおいが漂い始めた。

「なんだ、この臭いは? それに何だか頭が、熱ぃ!?」

 見ると先ほどまで何もなかったはずの金田の頭から、メラメラと炎が上がっているようだ。

「ココッ! 何やら愉快な催しをしてるかと思って来てみれば……懐かしき顔と再会することになろうとはのう」

 声のした方に振り向いたヒイロが見たのは、この国でも珍しい姿をした女だった。服装はこの国の伝統衣装である、着物によく似た見た目をしていた。いわゆる成金趣味とはいえないが道端で座り込む人々よりは上質な素材を使ってるそれは、『上品』というのが相応しい表現だろうか。

 そして何よりこの国では物珍しい雪のような白髪が、それらの印象を更に底上げするような美しさであった。鮮やかに切り揃えられた髪は上品を超えて『神々しい』という感情を人に抱かせる。

「妖狐ミリシア……お前もダイタニアからこっちの世界に来ていたのか」

 ヒイロの言葉にミリシアと呼ばれた女は「しー」と人差し指を立て、

「こっちの世ではただのミリシアと呼ぶが良い。耳もほら、人に見えぬよう隠しておるのだからな」


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