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第二十四話

 これから記すのは、ドレッドイーターがヒイロ達に語った話の要約である。

 ドレッドイーターこと本名、赤上空。彼には誰にも言えない秘密があった。

 自動車開発会社の役員を務める両親の子供として生まれた彼は、子供の時から精密機器の内部構造に強い関心を持っていた。

 一級市民として成長する中、父からこんな話をされたのを彼は覚えている。

「この世でもっとも精密な機械は人体だ。音や光で状況を瞬時に判断し、指先の繊細な動きをコントロールしている人の身体は、まさに神が作った最高の精密機器なんだ」

 今となっては珍しい見解でもなかったが、当時の赤上にとっては強烈な言葉であった。あの精密機器が織りなす美しい相互作用よりも、更に複雑な機能が人体に備わっているなどと!

 彼の異常な猟奇性が発露したのは五歳の時だった。当時、赤上は家で飼われていた犬と猫二匹を惨殺し、死体から取り出した内臓を庭に並べていた所を両親に発見される。

 両親はすぐさま赤上を精神鑑定にかけたが、結果は問題なし。また、犯行の対象が自宅のペットであったという点から、彼は特にこれといった罰を受けることはなかった。

 だが、その一件により彼は自身の衝動に負け、行動を起こした事を反省をした。次からは計画的に物事を進める必要があると。

 それからの彼は文字通り悪魔的な速度で、自身の探究意欲を満たす方法を会得していった。殺されても構わない動物を探したり、事故に見せかけて近隣のペットを殺すなどして、巧妙にその牙を研いでいったのである。

 そして赤上の初めての殺人は今から十年前、彼が二十二才の頃だった。赤上の両親は多忙で何ヶ月も家を空ける事が多く、大胆にも彼はその隙をついて言葉巧みに三級市民の男児を自宅へと連れ込んだのだ。

 彼は男児が痛みに反応し苦悶する様を見るために、数十時間をかけて風呂場で拷問した。

 長い時間をかけ楽しんだ赤上は、最後に男児の頭を壁に打ち付けて殺害。その死体は薬品を用いてじっくりと溶かし、排水溝へと流したのだ。彼は男児の遺体が原型を失っていく様子すらも観察したという。

 それが赤上の最初の殺人だった。その後、彼は十年にわたり人間を殺害し続けたのだ。しかも彼がターゲットにするのは常に十代前半の少年少女としており、どんなにチャンスがあっても大人に手をかけるといった事はしなかったという。

 だがそんな彼にも年貢の納め時がやってくる事となる。今から五年前、彼の犯行が徐々にエスカレートしていく中、いつものようにターゲットを自宅へと招き入れたのだが、この時の赤上には一級市民のセックスフレンドが居たのである。

 二人は互いに遊びの関係と割り切っていたのだが、その日彼女はイタズラ心が芽生え、事前に空けておいた窓から部屋に侵入し、赤上の部屋のクローゼットに身を潜めていたのである。

 ちなみに赤上が違法薬物の栽培方法を知ったのは、彼女の手解きによるものなのだが、ここでは割愛する。

 赤上は普段、行方不明になってもニュースにならない上、多少怪我を負わせる程度ならば黙認される三級市民の子供を殺害していたが、だからといって殺人が公で肯定されている訳ではない。

 その日、赤上は全てを目撃していたセックスフレンドによって警察へ通報され、指名手配犯される事となる。こうして彼の殺人犯としての逃亡生活が始まったのである。

 逃亡初期は廃棄された家屋に潜伏し、他の三級市民同様、道端のゴミを漁るなどして取り敢えずの生活の基盤を築いた。いざという時のためにセックスフレンドの家から盗み出しておいた違法薬物の原料となる苗も、その頃から自分一人で栽培を始めるのであった。

 違法薬物の精製に慣れ始めてからの進化は早かった。元は空き家となっていた物件の地下室で薬物作りをしていた彼だったが、次第に生活自体も地下中心となり、最終的に現在の生活の拠点となる、下水道へ潜伏する事に思い至ったのである。


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