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第22話 薬の効果

第22話


「ゴホッゴホッ」

「リーシャ!薬を……!」

袋から薬を取り出す。

昨日よりも、少なめに飲ませる。

(これが無くなれば、もう買えないかもしれない)

「ありがとう……お兄ちゃん」

「ほら、ゆっくり寝ておけ」

そう言ってリーシャの部屋から出る。

両親は徴兵からずっと帰ってこない。

(今は僕が、リーシャを守らないと)


「なあ。薬はもう無くなるんじゃないのか?」


突然扉から声がして振り返る。

そこに居たのは、自分と同じ歳くらいの少年。

「薬。次無くなったら、どうするつもりだ」

人当たりの良さそうな笑顔をこちらに向けて、もう一度質問を投げかけてくる。

「お、お前誰だよ!なに勝手に入って……」

「拙者はオボロ。君たちと同じ魔人で……最近の風潮に憤りを感じている者」

「最近の……」

「魔人というだけで満足に物も買えない。差別され侮蔑され虐げられる」

話しながら、オボロと名乗る少年は袋を手渡してくる。

そこには、薬が入っていた。

「これは!」

「……おかしくないか?君たちには何の罪も無いというのに」

「な、何が目的だ!」

「奴らが魔人を排斥したいというのなら……」

「魔人同士は手を取り合おうってだけだ」


『ゴホッゴホッ゙』


「自分たちだけで生きるというのなら、それでも良い」

「別に強制はしないが……妹は見殺しにしていいのか?」

「……っ」

「手を取り合うったって、何をしたら良いんだ」

「とりあえず君には情報を集めてもらう」

「情報……」

「この街で、積極的に魔人排斥を進めてるやつを調べるんだ」

そう言ってオボロは銀貨の入った袋を手渡してくる。

「これは情報収集の際に使え。やり方は任せる」

「こ、こんなに?」

「そう言えば、名前を聞いていなかったな」

「僕は……チグリ」

「そうかチグリ、頼むぞ。情報が集まればまた、薬や報酬を渡す」

「あ、ちょっ!」

言い切る前に、オボロは消えた。

まるで最初からいなかったかのように、忽然と。


だけど僕の手には銀貨入の袋と、薬が握られていた。



「そうだ、薬だ」

突然、トバリが呟く。

「んあ、なんじゃ突然?」

「コデマリオのことだが、とっておきの秘薬がある」

「ほう、それを飲ませれば部屋から出てくると?」

なぜこんな簡単なことに気づかなかったんだ……。と呟くトバリ。

微かに笑うトバリの横顔は、ほんの少し不気味に見える。

「じゃが、どうやって飲ませるんじゃ?」

「それは簡単だ」

「アイツは別に死にたいと思ってるわけじゃない」

目の前の皿を指さす。

「いつも綺麗に完食している食事に混ぜれば良い」

「えぇ……」

(なかなかエグいことを考えるなコイツ……)

「アイツは目の前で凄惨な殺戮を見て、そして尊敬していたユーガオの裏切りを知った」


「今はただ人間不信になって、外の世界を恐れているだけだ」

そう言うと、突然立ち上がるトバリ。

「昔見せてもらった植物図鑑の内容はあらかた暗記している」

「……」

「それを基に、似たものを……いや、なんならより強力なものが作れるかもしれない」

「あ、あまり無茶はするでないぞ」

「今日は他に客もいないし、こういうことは早いほうが良い」


そう言うとトバリは風のように消えていった。

目の前の空いたお皿もキッチリ片付けながら。


「忙しいやつじゃな」


そう言ってヨルは頬いっぱいに肉を詰め込む。

「すまんが、おかわりをくれ〜!」

「はいよー」


「変なことをせねば良いが……」


――その夜。


『ゥ゙ッ……ウォオオオオオオ♡♡!?!★!?!♯』

宿屋全体に奇声が響いた。

大きいだけじゃなく、よく通る。

久しぶりに聞く、コデマリオの声。


「なんじゃなんじゃ!?」

「どうしましたか!?」

部屋の前に、エキナとヨルが集まる。

『は、入らないでくれ!!!』

「いや、入るなじゃなくて……」

『なんか分かんねえ!!分かんねえんだけど、昂っちまって!!おさまらねえんだ!!!!』

「は?」

「というか、静かにしてほしいんだけど……」

『ウゥ!!ウオオオ……!!!おさえ、きれねええ……!!!』

「ヤバいの。ついにおかしくなってしもうたか」

「ここは任せろ」

「あ、オボロくん!」


トバリは扉越しに、ゆっくりと語りかける。

「コデマリオ。机の上に銀貨と紙を置いている。それをよく見るんだ」

『な、なんだってエ……!!?』

「この後どうするかは、お前に任せる」

『そんなこと……言われてもよ!』

コデマリオの声は震えている。どこか、腹の奥底から捻り出すような声。

「ユーガオは、裏切った末に死んだ!」

突然の言葉に、ヨルの顔も青ざめる。

「お、おい!」

『…………!!!』

「これからはな、誰かの後ろを着いていくんじゃない。お前自身の足で歩け」

『と、トバリ……!』

「もう一度言う。机の上にあるチラシと銀貨」


「それをどう使うか。……それともまた部屋から出ずに腐らせるのか」

『………!!』

「よく、考えろ」

『トバリ……行って、くるわ』


扉の向こう。窓が開く音。

そして、誰かが飛び降りた。

「え!?」

「ここ、2階ですよ!!」

エキナが追いかけようとするが、トバリが止める。

「大丈夫だ」

「えぇ……?」

「今のアイツを、止められる者なんて無い」



「で、それからコデマリオは帰ってこんが……」

「結局何を飲ませたのじゃ?」

ヨルがスープを啜りながら問いかける。

「精根活力剤だ」

「ブーーーッ!!」

勢いよくスープを吐き出すヨル。トバリは俊敏な動きでガードする。

「おま……おまえ!!」

「何だ。アイツはもう大人だ。それに今は騎士団所属でもない」

「そ、そうじゃが……」

「机には一晩程度じゃ使いきれない銀貨と、色街へのチラシを置いておいた」

ヨルは冷ややかな目をトバリに向ける。

「いっとき帰ってこないだろうが……帰ってくる頃には、元気なはずだ」

「……」


それから数日、ヨルは口を聞いてくれなかったという。

挿絵(By みてみん)

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