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第23話 根を張る

第23話


この街は中間都市。

個人の領主貴族や支配者がいないというのはエキナの言う通りだ。

だが、誰一人統治者がいないというわけではない。


人が集まり、金が動く場所には必ず"仕切る者"がいる。


調べてみると、元はギルドとウグイス団がそれぞれ「文」と「武」を取り仕切り、街の均衡を守っていた。


そんな中、連合国で巨大魔獣が発生。


その討伐徴兵としてウグイス団が連れて行かれてしまった。


ウグイス団の居なくなった今、実質的にこの街を支配しているのは"ギルド"。

正確に言えば「商人ギルド」だ。


「エキナさんもギルドには加入しているんですか?」

「んー?……うちは入ってないなあ」

「そうなんですか」

「どうしたの急に。ギルドのことなんか」

「いやぁ……入ったほうが得だとは言われてますからね。少し知りた……」


「入らないほうが良いよ」


冷たい、声。

「……え?」

エキナさんの方を見る。

無表情、そして光の無い目で見つめてくる。

「ギルド。入らないほうが、良いよ。」


「……」


「……」


長い、沈黙。その間、目線は交差し続ける。

「なら、やめときます」

「それがいいかな!」

こっちが口を開いた瞬間、いつもの笑顔に戻る。

そしてエキナは口笛を吹きながら受付テーブルに戻っていく。


(何か……あるみたいだな)

「たっだいまーーー!!」

そのとき、元気な……というよりやかましい声が入口から響く。

そこには、妙に肌艶が良くなったコデマリオ。

オトコ、コデマリオ!!ただいま帰還しました!!」

コデマリオは背筋を伸ばし、胸に手を当て声を張る。そしてロビーにいるトバリを見つけて、満面の笑顔で近づいてきた。

「おお!我が心の友、トバ――え?」

言い切らせる前に、コデマリオの喉に貫手の寸止め。

そしてエキナには聞こえない声で囁く。

「二度言わせるな。ここではオボロと呼べ。そして姫のことも、"ユル"だ」

額を湿らせながらコデマリオは頷いた。

「おお、そうだったな、オボロくん。アハ、アハハ……」


そしてエキナがやってくる。

「おおー、引きこもりくん帰ってきたんだね!」

「帰ってきました!!漢を磨いて……ね!!」

「あはは、意味わかんないや」

「アハハ!!」

「コデマリオ、これ」

有頂天で笑うコデマリオに、一枚の紙を差し出す。

「アハ……なにこれ?」

「ん〜……銀貨、120枚の請求………ハァ!?」

「オイオイ、トバ……オボロくん!!なんだよこれ!?」

「何って、請求書だ。拙者が立て替えてやっていた分。元気になったのなら、キッチリ返してもらう」

「ま、まてまて!!色街に行ったときの金はくれたんじゃなかったのかよ!?自由に使って良いって……」

必死にまくしたてるコデマリオ。

そんなコデマリオの手から紙を抜き取り、再度眼前に突きつける。

「よく読め。あの金は入ってない。この請求書は、お前がダラダラと部屋に引きこもっていた間に拙者が立て替えた分だ」

「宿代、飯代、清掃代……い、いやいやこれは分かるけどよ!最後の薬代ってなんだよ!?これだけで銀貨50枚って!!?」

挿絵(By みてみん)


「当たり前だろ。朧忍秘伝の薬を使ってやったんだぞ。そのおかげでお前は今元気なんだ」

「原材料も全て拙者が取ってきた。むしろ割引してやってるぐらいだ」


「そ、そんな……こんな金、払えねえよ!?」

「払えないと言われても、払ってもらうしかない。最悪、体でな」

「ま、待て待て!!勘弁してくれよ!俺は今、騎士団の給金もねえし……」


「それなら、働け」

「ええ!?」

「拙者がいくつか依頼をしてやる。丁度魔人ではないお前にやってもらいたいこともあった」

「依頼……?」

「あぁ。仕事をしてくれれば、その分借金から引いておく」

「い、いやいやいや!?」

エキナは微笑む。

「借りたお金は、返さなきゃ!漢!なんでしょ?」


「終わったァ!俺の人生終わったァ!!」



「魔人に対して当たりが強いのは、薬屋、呉服屋……あと鍛冶屋と金物屋も」

ウラムの外れ。今では誰も使っていない廃工場。

チグリは声を落とし、キョロキョロと周囲を気にしながら報告を続ける。

「露店の人たちはそこまで気にしてないみたい」

「……なるほど、やはりギルド加入店が魔人排斥を進めてると見て間違いないな」

「食材を扱っている店や飲食店はどうだった?」

「うん……積極的では無い感じ。表では買わずに、裏から回ってくれとかは言われたけど」

「よし、分かった。感謝する」

そう言って、薬と銅貨の入った袋をチグリに渡した。

チグリは受け取り、急いで懐へ詰め込む。

「チグリ、もっと堂々とした方が良い」

「え?」

「猫背で額に脂汗、顔も微かに紅潮していて呼吸が不規則」

「そんなんじゃ、情報を集めるとき怪しまれるぞ」

「あ……あぁ」

チグリは無理やりに背筋を伸ばした。

「でも、魔人排斥を進めてるからといってどうする気なんだ?ま、まさか襲うのか?」

「そんな目立つ真似はしない。まあ、チグリは引き続き調べてくれ。次は個人単位で……な」

「個人……?」

「簡単にまとめておいた。この三人について調べてほしい。他にも何か分かれば報告してくれ」

そう言って一枚の紙を手渡す。

「……分かった」

背を向け、街の方へ歩き出すチグリ。

完全に去ったのを確認してから、自分の顔に手を当てる。


「……変化の術」


次の瞬間、輪郭がゆっくりと歪んでいく。

暫く待ってから手を離し、歩き出す。

「あー……アーアー。ゴホンッ」


「襲うのは……最後の手段だよ」

呟いた声は、普段の声とは違う、すこし高い声だった。


向かう先はウラムの中心、商人ギルド。

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