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成り⑤

ヴィーシャとの木剣による模擬戦で、不完全ながらも「成り」を習得したヤヒスは、それを完全なものにするために、ヴィーシャは「成り」を身に着けるためにトレーニングを継続することに決まった。


早朝からランニングをはじめ、昼前に模擬戦をすると言うルーティーンである。

ヤヒスは毎回「成り」を使用したが徐々にではあるが、その安定感は増していき、精神を水平にさせることが出来るようになってきた。


「うん、ヤヒスはもう少しで完成形に持って行けるな、あと2-3日なんじゃないか?」

「ああ、我でもそう見て取れる」

マサカツとリャヒがヤヒスに話しかけると、以前と違って精神が安定した様子のヤヒスが笑顔を返して来る。


「ヴィーシャはどうだい?」

「見てなさい、もう過ぐ一気に追い越してやるんだから」

ヴィーシャの方も精神が安定しているようだ。


それから三日後、ヤヒスの精神は完全に安定をして、力任せの攻撃をしていた「成り」も繊細な攻撃を交えてのそれになっていた。


「うん、ヤヒスの方は出来上がったみたいだな」

「ふむ、これは安定したな」

マサカツとリャヒはヤヒスの様子を見てそう言った言葉を発した。


「ヴィーシャはどうだい?『成り』に近付けたかい?」

「フフフ、良く見ていなさい」

マサカツが声をかけて来たがヴィーシャは意味深な発言をして、それまでと構えを変えた。


「成り」


ヴィーシャがそう発すると彼女の身体から陽炎がゆらりと立ち上り朧な存在に見えた。

「『成り』!!?今までは隠していたのか!!」

「む・・・いつの間に」


ヤヒスはと言うと無言で構えを変化させ、ヴィーシャの様子をうかがっている。

その刹那、ヴィーシャは剣を水平に構えるとトッと軽い足取りから急激に速度を増し、ヤヒスにぶつかっていった、それは防御を排した完全攻撃特化型の構えである。


ヤヒスは盾を構えてその斬撃をいなしたが、盾は半分割れたような状態になっている、ヴィーシャがツトとバックステップで距離を取るとヤヒスは半壊した盾をそこらに投げ捨てた。

その後木剣を斜めに構えグッと腰を落とした。


「盾を捨てたか・・・」

「うむ、どのみち持たないことと盾を頼った型に出るとリズムが崩れるからだろう」


マサカツとリャヒが腕を組んで観戦していると、ヴィーシャは小さい構えで軽く前に出た。

その瞬間ヤヒスは木剣を水平から斜めにずらした型でゆっくりと前に出た。


ヤヒスの木剣ははたしてヴィーシャの木剣を滑るように鍔まで到達し、手首のひねりと、ヴィーシャの剣激の勢いを利用して、彼女の木剣を地面に叩き落とした。

「はー・・・私の負けね」


ヴィーシャがそう言うとヤヒスが疑問をぶつける。

「いつの間に『成り』を?」

「夜中までトレーニングをして追い込んだのよ、最も出来るようになったのは今朝のことだけどね」

彼女は苦笑いしながら木剣を拾いに行った。


「しかし盾を捨てるとは大きく出たな」

「ああ、なかなか面白い立ち合いだった」

マサカツとリャヒも会話に加わり二人に近づいて来る。


「ん、盾はどうせ持たないし、ショートソードの型に変えた方が良いと判断したんだ、結果良かったよ、しかしヴィーシャは俺の時みたいに我を忘れたりしないんだな」

「フフン、私は優秀であるがゆえにそんなことにはならないのよ」

「言ってくれるなぁ・・・」


ヴィーシャとヤヒスの和やかな声が前庭にこだましている、後は実戦である、実戦で役立てることが出来なければどうにもならない、ただの疲れる型である、近いうちに訪れるダンジョン探索でその成果が分かるであろう。

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