シン・魔王⑧
「もういいわ・・・生きているし怪我も無いのならそれでいいわ・・・」
ヴィーシャはそうそうに思考をあきらめたようだった。
「ああ、さっき来た人たち、食べ物や飲み物はパムちゃんたちに聞いて自由にやってくれていいよ」
美咲がそう言葉を発するとパムとミードリが巨大な冷蔵庫に向かい、ドアを開けた。
「つめたい・・・なにこれ・・・」
「ガラス瓶の絵が恐ろしく精密で造りも信じられないくらい精巧だ・・・」
「む、フルーツの絵柄だ、我はこれを貰おう」
「わたしはこの赤いの」
「俺はこの緑色の絵の」
「ワシはマスターと同じものを」
ヤヒス達はもう一つある大きなソファーに座り込みパム達がそれを世話した。
「これ、氷」
「氷!?」
「で、こうやって引っ張って戻して開ける」
「氷をコップに入れて・・・中身を注ぎます」
パムとミードリが手本を見せている。
「うぉ・・・緑色のエールだ」
「こっちは赤黒いエールよ」
ヤヒスとヴィーシャは顔を見合わせている。
「んーーーー美味いのう!!」
一足早く飲み物を口にしたフィスは満面の笑みを浮かべている。
その他の面々も順次口にして驚いている。
「人がたくさん増えたから女子部屋の拡張と男子部屋の増設もしなきゃ・・・女子部屋は以前作ったのを拡張して・・・」
美咲は部屋のセットをモニター上でぐるぐる回しながら素早く何やら作業をしている。
「よし・・・じゃあ男子部屋」
美咲は何かパッケージングされた建築を選んで拡大している。
「おいおいおい!!見えたぞ今自衛隊官舎って!!!差が過ぎるだろう!!」
「チッ、バレたか・・・いいじゃんあれでも」
「旅館の和室の・・・一人デカいのがいるから6人部屋くらいにしてくれ」
「はいよ、パッケにちょうど良いのがあるわ、はいドーン」
「ふぃありがとうな、ところで君は何でセーラー服姿なんだい?」
そう問われた美咲は椅子にふんぞり返って言った
「私は学生なワケでして、学生は学生らしくですよ・・・」
「・・・ジャジャの奇妙な冒険第三部、ダークブルームーン」
「イェエエエエエ!!」
ピシ!ガシ!グッグ!
美咲とマサカツは何やら意気投合しているようだ。
「なにあれ・・・」
「さぁ・・・美咲さんはマサカツと同じ違う世界からやって来た人だから気が合うのかも」
ヴィーシャとヤヒスはそれを遠巻きに見てぽかんとしている。
「フーム・・・パム達が生きていたと言うことは兵士達もどこかにいると言うことなのか?」
「そうだよ、彼らはそろって陸上自衛隊駐屯地セットに送り込んだよ、兵士や食堂やら細々した物はここの文化風にアレンジしてあるよ、食事が美味しいからみんな大喜びして訓練も嬉々としてやってる」
「ん?リクジョウジエイタイ??何でも練兵場のような所か?」
「まぁーねぇー」
リャヒの言葉に適当な感じで美咲が答える。
「あっそうだ、姫様はすぐソヴィレバーレに帰還した方が良いのではないですか?」
ヤヒスの質問に姫はにこにことした笑みで返事とした。
「姫はね、ここが快適だから帰りたくないんだってさ」
美咲はため息をついて椅子の上から振り返った。
「他国の姫君に恐れ多いが・・・両親家臣みな心を痛めているのではないか?」
リャヒがそう言うと姫様は
急に真面目な顔になって言った。
「私は籠の鳥、自屋と一部の部屋を移動して、習い事や行事があれば持ち出されて笑顔を振りまくだけの存在なのです、同時にお飾りで美咲さんの言うようにパッケージされた私がいればそれで良いのです、今が・・・楽しくて・・・王国にとっても私が重要な存在であることは重々に承知しています、それでも」
姫ははらはらと涙を流した。
「私はあの黒い板に言われた、魔王となって姫をさらえと、何でそんな古典RPGみたいなことをしなければならないのかわからなかった、だけど姫をここに連れてきて一緒に暮らして、ここに来た意味が分かったような気がした」
姫様と美咲の言葉に辺りは静まり返った。




