温泉施設を作れ⑦
「あ~~今日は昨日掘った水路に石を詰め込んでいく、これくらいの石だ」
ガンズは大人の手のひら大の石を掲げて見せた。
「岩稜地帯から運んで水路に詰めていく単純作業だ、二班に分かれる、石を取りに行く班と石を敷き詰めていく班だ」
さっそく二班に分かれて作業が開始された、北人たちはその頑強さで重い石を背負い籠に詰めてどんどん下山していき、小山になった石はあとからあとから流路に敷き詰められていく、彼らは疲れを知らないかのように笑顔で作業している。
「頭ぁ北人も獣人もすごい力と速さですぜ、こりゃかなわねぇですよ」
「う~~ん全くだな、一人二人人足として連れて帰りたいぜ」
暗渠の工事は流路に土をかぶせて踏み固めるところまで進み、夕方になる前に終わった。
夕食はまた食堂で取ることになった。
すると昨日とは違い北人と獣人が話しかけてきた。
「ガンスどん、ワシらも工事に参加させてくれてありがとう」
「ほうだわ、やりがいがあった」
それを聞いたガンスは質問をした。
「あんな泥まみれで疲れる作業を喜んでやっていたが、どう言う具合なんだい」
「ああ、ワシらのんトコにようやく風呂が出来る、しかも温泉だ、他所からも来てワシらの温泉を見て大したもんだと思う、そう言う作業に自分が関われるのはワシぁ嬉しいんだ」
「ああそうだ、爺になって孫に自慢できるだぞ、俺はあの温泉施設を作るのを手伝ったんだぞって」
他にも2-3話をして二人は去って行った。
「頭、俺はこんなに歓迎される現場は初めてだ」
「ああ、俺もだ、はっはっは、こりゃあ下手な仕事は出来ねぇな、もとよりそのつもりだが」
翌日からは基礎の工事が始まった、あらかじめ用意してあった岩を選定してガンスたちはしっかりと基礎を組んでいく。
「う~~む、噂では聞いていたがこれはいい材だな、作り甲斐がある」
「やりがいがありますね」
人足たちはそのようなことを話しながら作業を進めて行く。
それから一か月、温泉建屋はほぼ完成を迎えていた。
「ふむふむ・・・重厚感があり屋根や柱に意匠も彫り込まれて何とも良い格好だ」
「リャヒの旦那、もうちょっとで完成ですぜ、そうなると施設名を彫り込んだ看板を掲げることになる、どんな名前にするね?リャヒの湯とかプルツ温泉とかよ」
リャヒが建屋を眺めている所に、ガンスが近寄ってきて話しかけた。
「む、名前か?それは作業が始まった時にもう決めてある」
「ほう、どんな名前なんで?」
「ガンス温泉だ」
リャヒは建屋を見上げながらそう言った。
「え?が、ガンス温泉??俺の名前を付けるんで??馬鹿言っちゃいけねぇよ、俺らみたいな人足の名前を付けるなんざ・・・」
「馬鹿ではない、この建物はお前がいなければ完成しえなかった、それも格安でうけてだ、そのような者こそ名を冠するに値すると我は思う」
「・・・俺たちはよ、どんなに手を込んだ物を作っても、どんな難しいものをつくっても、ただの人足扱いだ、名前すらあ呼ばれねぇ『お前』とか『貴様』とかそんなだ、つまらん仕事をしている者として見下されてんだ・・・ウッ・・・ウゥ・・・ありがとうよ・・・ありがとう・・・」
「何を言うか、互いを尊重し合わなくては良い国は作れぬ」
「そうだな、そうだそうだ、じゃあガンス温泉で看板を作っちまうけど間違いねぇな?」
「ああ、よろしくたのむ」
二人はしばらくの間、笑顔で建屋を眺めていた。




