海龍を鎮めろ④
漁師たちは我先にと港に飛び出して行き、受付嬢はカラコロと履物を鳴らして気だるそうにその後を追っていく。ヤヒス達はそのまたあとを追い、港へと到着した。
そこからは何隻もの船が沖に漕ぎだしていく様子が見て取れた。
「ふぅ~・・・なんだか楽しそうじゃないか、ずっと漁に出られなかったんだもんねぇ、ところでアンタ達はどうやって海龍を鎮めたんだい」
受付嬢は煙管をもてあそびながら聞いて来た。
「ム、これである」
リャヒはリュックから銛を二本取りだして受付嬢に見せた。
「これが海龍の尾の付け根に刺さっていたんだ、誰かの悪戯か何か知らないけれど・・・だけどその誰かを探すとなると面倒なことになると思うんだ、犯人探しに疑心暗鬼、最悪刃傷沙汰になるよ、だから・・・」
受付嬢は紫煙をくゆらせて何か考えている様子である。
「アタシは何も見てない、聞いてない、そう言うことだろう?」
「助かるよ」
「なにね、アタシも面倒ごとは嫌いさね」
それを聞いたヤヒスは二本の銛を桟橋から海に放り投げた。
しばらくして何隻かの船が港の戻ってきて、がやがやとやり取りしている。
「どうだったんだい?」
受付嬢は嬉しそうに声をかける。
「出てこねぇ!!襲われねぇ!!ヤス爺の言った通りだ!!」
「だぁから言ったろうが、ワシの言うことに間違いないとな!!」
そんな中受付嬢がコソッと耳打ちして来た。
「さてアンタたち、ここからは逃げた方が良いよこんなことになると、アンタらを祭り上げて三日三晩酒盛りすることになるさね」
「うっ、それは勘弁願いたいわ」
「じゃあついて来な」
ヴィーシャの言葉を確かめると受付嬢は小走りに冒険者ギルドに向かいカラコロと履物が子気味いい音を立てた。
「はいヨ120万ゴールドね、助かったよ・・・このままだったら漁師は荒くれて観光業も衰退するところだった」
受付嬢は出口まで見送ってくれて、それに手を振って答え街道を急いだ。
あたりは夕暮れてきたので、今日は野宿をすることに決めて「シルフの水盤」を広げた。
水盤は極薄の幕が雨も風にも頑強に耐え、収納すると手のひら大になる驚愕すべき天幕である。
天幕の中に車座に広がった黄昏パーティー一行は、ヤヒスの魔石コンロで芋や根菜でスープを作り、パンとチーズと言う少々貧相な食事をとっていた。
「このチーズはうまいのう」
「うむ、スープもうまいぞ、さすがヤヒスだ」
フィスとリャヒは会話を交わし、パムとミードリはもつもつと食事を進めている、よほどお腹が空いていたのだろう。
「こうなると旅館での食事と温泉が思い出されるねぇ」
「おい!変なこと言うなよ!思い出さなくてもいいこともあっただろ」
マサカツとヤヒスはおそるおそるヴィーシャの方を見やった。
「ん?なにかしら?」
ヴィーシャは怪訝そうな顔をしていたが、すぐに意図を察知した。
「んもー・・・そんないつまでも怒っていたりしないわよ、だいいちお風呂の構造が変なんだもの、仕方ないわ」
そこで一行は笑って食事のにぎやかな空気が天幕を包んだ。




