海龍を鎮めろ③
ヤヒスは水夫の男を目覚めさせるために船に積んであった桶に海水を汲み、男の顔にぶちまけた。
「うぅういっはぁ!!!ほぉ?ほぉ?海龍だ!!!オメェらも逃げろ!!」
「おっちゃん、海龍はもうどこかへ行ったよ」
「・・・ほうだか、ワシはああ、気ぃ失っていたのか・・・しかし海龍の顔がこんな目のまぇに、ワシゃ死ぬかと思ったよ」
「でも死んでませんし船も無事ですよ」
「つまり海龍は人間に危害を加えないってことだわ」
ミードリとヴィーシャは落ち着かせる様子で水夫に話しかけた。
「うう~~~む、確かにそうだ、あの状態から何も起こってないとなると本当に人間に危害を加えないと言うことになるのう・・・こりゃ漁師仲間に急いで知らせなきゃいかんぞ」
「む、だがその前に冒険者ギルドで今回あったことを証言して欲しい」
「酔っ払いの借金まみれが証言して信用してもらえるものかな・・・」
リャヒとマサカツは腕組みして互いに話し合っている。
「失礼なことを言うでないわ、ワシゃ漁師仲間の中でも最古参になるし誰でも知っておる、ギルドの奴らも知らんわけでは無いわ!!」
「では、船を港に戻してくれんかのう、」
「はっ、そうじゃそうじゃ!!」
フィスの言葉で我に返ったのか水夫は船先を艪を切り返して港の方に向かった。
彼は行きと同じく陽気に歌を歌いながら港にふねを滑らせていく。
やがて港にたどり着くと、多くの人たちが集まっていた。
「ヤス爺!!沖に出て無事に帰ったんか!?」
「信じられんのう」
「いや、ワシはしばらく見ておったが海龍の出るあたりまでは進んでおったぞ」
「そこの冒険者が退治したのか・・・?」
港に集まった人々はてんで勝手なことを言いだして始末に負えない。
「俺たちは何もしてないよ、とにかく海龍はもう人を襲わないんだ」
「ああそうだ、ワシの顔のこんな目の前に海龍の顔がこう、ぬぅあ~~~っと近づいて来たんだぞ、ワシゃ気ぃ失っちまった。
「大分大げさに話すなぁ・・・」
「うむ、だがまんざら嘘でもないからな」
マサカツとリャヒはこそこそと話し合って様子をうかがっている。
「はい!落ち着いておちついて!!!まずはこの人を証人として冒険者ギルドに連れて行くのよ!!道を開けて!!」
ヴィーシャが手をパンパンと鳴らすと黄昏パーティーは群衆をかき分けて冒険者ギルドへの道筋を進んだ。
「大分大げさなことになっておるのう…後ろからついて来る者も何人かおるぞ」
「それだけ漁師は苦労していたし、ジャパンの悩みどころだったんだね」
フィスはため息をついたが、それに対してパムは冷静に言葉を返す。
やがて冒険者ギルドにたどり着くとヴィーシャを先頭に中に入って行った。
「おや?海龍の依頼を受けた娘だねぇ、海龍は退治出来たのかい」
「退治はしていないわ、だけども人間を襲うことは無いわよ、それに関してはそこのヤス爺って人に聞いてもらえる?」
「あら、あんたかい、いつも話が大げさだからねぇ・・・信用できたもんだか」
受付嬢はため息をついた。
「おい、やっぱりこうなったぜ」
「フゥーむ・・・ここで証言が通らなければ苦労した意味がないな」
マサカツとリャヒがひそひそと話していると、ヤス爺は身振り手振りで自分の身に起こったことを話しだした。
「おい姉ちゃん!!俺はヤス爺が沖に出て帰ってくるまでを見てたぜ!!」
「お、俺もだそう遠い距離までじゃねぇけどよ、船を出すのを見たぜ」
「だいいち借金まみれのこいつが漁に出られなくて一番困窮してやんだ、嘘は言わねぇぜ!!」
「フゥ~~・・・」
受付嬢は煙管から紫煙を登らせながら言った。
「そうまで言うならアンタがたで沖まで船を出しとくれよ、それでちゃぁんと全員帰ってきたら証明になるだろ?それと黄昏とか言うパーティー・・・その段になって海龍のせいで人が死んだら相応の罰を受けるよ?」
「ふん、あやつはワシと約束した、二度と人を襲わんとな」
「うん?アンタ海龍と話をしたみたいなことを言うねぇ?」
「当り前じゃワシはドラんんぐ」
「魔物と会話できるスキル持ちなんですこの子」
ミードリがフィスの口を押え適当な言い訳をした。
「へぇ、そう言うスキルがねぇ・・・とにかく漁師のアンタらが怖くって海に出られないってんなら証明は出来ないねぇ」
受付嬢の言葉に漁師は憤慨している。
「にゃぁにおう!!なめるんじゃぁねぇゼ!!」
「ああ!!漁師にも意地ってもんがあらぁ!!見とけ!!」
漁師たちは冒険者ギルドから走り出して、銘々の船に散っていった。
「まったく血の気が多くてこまるねぇ、冒険者も漁師も・・・さ、アンタ方、港に行くよ、キヨちゃん任せるよ」
受付嬢はそう言って暖簾をくぐって外に出た。




