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犬の導き③

フィスが動き出すと、賊の討伐に向かったのを察してか、犬は村の方にのたのたと歩き出した。

「ねぇ、あれは放っておいて大丈夫なの?」

「む、よろよろの犬が来たとして賊は気にも留めんだろう、もっともあの歩き方では到着する前にフィスは賊をやっつけるだろうが」

ヤヒスの疑問にリャヒが答えてしばらくすると、農家の屋根に上ったフィスが手を上げて合図してきた。


「走るわよ!!」

ヴィーシャがそう叫ぶと全員駆け出し、のたのたと歩いている犬を追い越して村に駆け込んで行った。

村に入ると、その中央でフィスが賊の武器をべきべきと破壊しており、その中の一つである短剣を地面に投げ捨てて彼女は言った。

「リャヒ、そこの小屋にいる村人の捕縛を解いてやってくれ」

リャヒは素早く小屋に入りこみ、縛られた村人を解放していく。

ヤヒスは要領よく納屋を探し当てて縄を見つけると、ヴィーシャと共に賊を縛り上げて行った。


しばらくすると村人は訳が分からないと言った様子で村の中央に集まりだした。

「あの・・・冒険者の方ですか?」

「そう、王都から来た」

「村人は全員捕縛されていたはずですが・・・誰が助けを呼びに?」

「犬、犬が家に来てここまで導いた」

「犬・・・?」

パムは村人とやり寄りしているが要領を得ないと言った様子である。


「犬って・・・どんな犬ですか」

「ええ、とても年寄りの犬で、歩くのもよろよろの、すごく時間をかけてここまで来たんですよ、その辺りにいるのでは・・・あっあそこに寝ていますね」

「カイ!!」

村人の女性がそう叫ぶと犬の方に走り出した

「ありゃぁ確かにカイだ、でももう死にかけた犬ですぜ?それが王都まで・・・」


ヴィーシャとヤヒスが家から出てくると犬を抱きしめて叫んでいる女性が目に入った。

「カイ!カイ!あなたが冒険者の人たちを呼んでくれたの!?」

カイと呼ばれた犬はその女性の顔をぺろぺろと力なく舐めたかと思うと急にぐったりと力が抜けてしまった。

「カイ!カイ・・・呼吸も心臓も止まっている・・・何てこと、私たちを助けるために、死にかけの身体で・・・ウッウウウ」


「その犬・・・カイは俺たちの家の前に寝転がっていたんだ、その、何かわからなくて様子を見ていたら彼女のブーツをしきりに引っ張って、ついてこいって言っているようでさ・・・ゆっくりした旅だったよ」

「グス・・・グス・・・」

ヴィーシャはかすれるような声で泣いている。

「そうか・・・君も犬を亡くしているんだったね」

しばらくすすり泣きが響き村はしんとした空気に包まれた。


「でも・・・どうして私たちの家の前にいたのかしら、グスッ」

「この村は5年ほど前まで良く冒険者が通りかかっていたんです、カイは人懐っこくて特に冒険者が好きだったわ、王都にも何度も行ったことがあるの、私に付いていて迷子になったりしないの、勝手にものを食べたりもしないのよ、すごく賢い子だった・・・ねぇあなた達すごく強いんでしょう?カイはそれもわかるの」

「考えにくいことだが、現実だからな、何か良くわからないことから冒険者の力量を計ってウチまでたどり着いたと考えるしかない」

ヴィーシャと女性の話しからマサカツが推測を立てた。


「ねぇ、カイを触っていいかしら?」

ヴィーシャがそう言うと女性はうなづいたので彼女はかがみ込んでバサバサの毛を撫で上げた。

「私にも・・・犬がいたの、親友だったわでも、ウッウッウッ、このカイもウッ、なんて賢い、ウッ、子だったのスンスン」

ヴィーシャと2人で人目をはばからず泣いていると、村中が涙を落とし悲しみに暮れた。


その翌日、ヤヒス達がソヴィルバーレに帰ろうとしていた時、村の者が集まってきて助けてくれた礼だと、金品を差し出してきたが、依頼を受けたわけでもないので黄昏パーティーはそれを受けなかったが、村人はそれを譲らない姿勢だった。


「うん、そうだな・・・石碑を作って欲しい」

「石碑・・・?」

「今回一番活躍したのは犬のカイだ、だから彼の名を刻んだ石碑を建てて欲しい、その金品は盗賊の持っていた物だろう?それでカイの話しが後世まで残るように、名を刻むんだ」

マサカツは村人にそう提案した。


「うん、どうせ盗賊からまきあげたあぶく銭だ、ええことに使う方が良かろう」

「んだ、カイのおかげだ、ワシゃ石碑を建てることに賛成じゃ!!」

「お、俺も、語り継ぐのが良いと思う」

村人はうなづいたりどこに石碑を作るのが良いか話し合い、早くも石碑を建てることに話が動き出していた。


「ふぅ、話がまとまったようで良かったわ、石碑とはさすがマサカツね」

「うん、ああ、俺のいた国では人間でも動物でも何かを救ったり、それで命を落としたりした者の石碑をつくるのが良くあることなんだ、それでね思いついてね」


マサカツは遠い故郷を思い出すかのように空を見上げた。

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