犬の導き②
犬の尾が揺れるのを目印にしてじわじわと枝道を歩き、日が高くなり始めた頃に、畑が広がり始め、小さな農村が遠くに見えてきた。
そうしたところで犬は細道をそれて藪の中に入った。
「おっ、目的地はあの農村だと思ったけれど違うのかな」
ヤヒスはそう言いながら藪に入ると、犬は低い姿勢でしょぼしょぼとした目を鋭く見開きながら農村を見つめていたため、ヤヒスも真似をして膝を付くと、他の面々も同じように膝を付いた。
「むう、これはどういう状況だ?あの農村に用があるのではないのか?」
リャヒがそう言うと皆口々に疑問をつぶやき始めたが、そんな中でヤヒスが言葉をもらした。
「・・・おかしい、農家ならこの時間は畑に出ているはずだし、そうでなくても見える範囲に作業をしている者がいない、チヌックに探らせる、チヌック、農村の様子を観察してきてくれ、おかしいと思ったところは細かく見て来てくれないか?」
「は、我が主、おおせのままに」
チヌックはヤヒスの肩から農村の上空に飛び上がっていった。
いくぶんか時間が経過したころ、チヌックがヤヒスのそばに降り立った。
「結論から言います、村は賊に占拠されております」
「ふぅ、やっぱりそうか」
「ちょっと待って!?じゃあこの犬は村を救うために私たちの所まで来て、ここに導いたって言うこと?」
ヤヒスとチヌックの会話を聞いてヴィーシャは驚きの声を上げた。
「ワシも信じられんが状況はそう言っておる」
「ああ、状況的にそう見るしかないが、どうやって俺たちを選んだんだろう・・・」
フィスとマサカツは顔を見合わせた、全員が村を見つめる犬の背を眺めながら困惑顔をしている。
「マサカツ、ペンと帳面を」
「ほいよ」
ヤヒスはマサカツに筆記具を求めると、彼は腰のポーチから帳面とペンを取りだして渡した。
「チヌック、村の見取り図と、族の配置を出来るだけ詳細に」
「は、お任せを」
「器用に図面を描いていますね・・・良く考えたらチヌックに比べれば村の危機を知らせに来る老犬なんてのは、そう珍しくないのかもしれませんね」
ヤヒスとチヌックのやり取りを見ていたミードリがため息をつきながら言った。
「いや、いやいや、このいぬっころはだいぶ珍しいと思うがのう、この一団がちょっとおかしいだけだわい、ちなみにワシももっぱら珍しい部類に入るのをわすれてもらちゃぁいかんでな」
フィスは犬を指さしながら少しあきれたような表情をした。
「うん、うんうん・・・みんな、図面が完成したよ、見張りが別々に一人づつ、比較的大きな家に族が8人で合計10人、この家に村人が全員押し込められているらしい、しかし問題は俺たちが武器を持っていないと言うことだ、ミードリのロッド以外ね」
「ロッドで一人ひとり殴ってまわるかい?」
「たわけたことを、こんな奴らはワシ一人で片付けてくるわい、合図をしたら村に入って来てくれよ」
そう言うとフィスはましらのごとき素早さで農村に迫り、跳躍して農家の屋根に飛び乗った。
「・・・フィス一人で十分そうだな」
マサカツがそう言うと。それまでおとなしくしていた犬がのそりと動き出し、のろのろと農村に向かって歩み出した。




