失踪事件①
勇者パーティークエストを片付けて、冒険者ギルドに顔を出していた黄昏パーティー一行は、掲示板をのぞき込み、クエストを吟味していた。
「行方不明者・・・ふうん、穏やかじゃないね」
マサカツがそう言うと他の面々はマサカツに顔を向けた。
「私のトコにもあるわよ、行方不明者」
「俺のトコもさ」
ヴィーシャとヤヒスが顔を見合わせると他の者も自分が確認した中に行方不明者捜索の依頼があることが分かった。
「ふむ、これだけあると言うことは根元は同じ、同一犯の可能性もあるな」
「そうだの、タイミングが揃い過ぎておる」
リャヒとフィスも顔を突き合わせて会話する。
「よ、黄昏の、行方不明者捜索が多いだろ、冒険者の間でも共通した事件だと噂されているよ」
「噂になるくらいならクエストを受けたらどうなの?」
ヴィーシャの疑問に男が答える。
「みーろよ、報奨金、少ないだろ?それに人探しは面倒なんだよ、時間も手間もかかるうえに報奨金も少ないじゃぁそりゃ受けないわな」
「受けよう、行方不明者捜索のクエストを全部」
「まぁ・・・そうなるとは思っていたわ」
ヤヒスの発言にヴィーシャがためいきをついた」
その後クエストを全部受け、ギルドのテーブルでミーティングをした結果、ある程度の方向性が決まった。
「聞き込みをするしか無いわね、まず依頼を出した人と、それに全員担当地区を決めて町中に」
ヴィーシャの一言に全員が帳面とペンを手に街路に散っていった。
(とは言ってもどう言う人たちに聞き込みをすればいいんだ・・・噂話って言うとおばさんって良く聞くけど)
ヤヒスは難しい顔をして市場の辻を歩いている。
「おーい、ヤヒスじゃねぇ、どしたそんな難しい顔をしてよ」
「ああ、金物屋のおっちゃん、景気はどう?」
「あぁ~あ、いつも通りさ金物屋なんてのは、そうだろ?」
ヤヒスは少し笑みをこぼし金物屋の親父に大量失踪事件の話をした。
「うーん・・・失踪じゃないけれどよ、妙な噂があったぜ」
「えっどんなの?」
「ああ、その日暮らしの連中の間で三食寝床付きで金払いもいい仕事があるって噂があってよ、そいで働きに出ていった連中がいるって話だぜ」
「うーん・・・ただの日雇い労働の話しか、ありがとうおっちゃん」
「なぁに、また武勇伝聞かせてくれよな」
「ははは、またね」
ヤヒスはその後くだもの屋の店先に集まっている女性連中に声をかけた。
「失踪事件?わかんないねぇ」
「第一アンタ日雇い人や旅人が一人二人いなくなっても誰も気付かないさ」
「そんなことより今度、王子が平民に向けての謁見会をするって聞いた!?」
「聞いた聞いた!!男前なのよねぇ~~」
「絶対応募するわよねぇ~~~」
女性連中はヤヒスを無視して男前の王子と謁見できるチャンスをモノにする話題で持ちきりになった。
「はぁ・・・どうにもうまくいかないなぁ」
ヤヒスが肩を落としていると後ろから声がかかった。
「む、ヤヒスではないか、調子はどうか」
「あぁリャヒじゃないか、あれ?気付かないうちにリャヒの担当区域に来ちゃっていたのか、はぁ、それがさっぱりさ」
「ふむ、そこなご婦人方、聞きたいことがあるのだがっ暇であるか」
「ああ・・・その人たちならさっき」
「なんだい?暇じゃないよ・・・はぁ、色男・・・」
「え?あっ・・・男前じゃないの」
「え?あらホント!」
「なになに?効きたいことがあるの?アタシが教えてあげるよぉ~~」
「ちょっと!アタシが声かけられたんだからね」
「アタシよ!あっそれでどんなことが聞きたいんですか・・・」
ヤヒスは目を細めてそのやり取りを見ている。
「なに、大量失踪事件の情報が欲しくてな、力になって欲しい」
リャヒがほほ笑むと女性たちは恍惚とした空気に包まれた。
「も、もちろんですわ」
「私たちと話を聞いて周ればきっと何かわかるはずよ!」
「行きましょ行きましょ」
リャヒを取り囲んだ女性の群れはそのまま市場を移動していった。
「ッゥ~~~・・・」
ヤヒスはぐったりとうなだれ、ホームへの道をとぼとぼと歩いて行った。




