シルフの水膜②
目に見えない魔物を討伐するクエストを完遂した黄昏パーティー一行は、チヌックで一路王都ソヴィルバーレに向かっていた。
「もう夕暮れね、このままだとソヴィルバーレに到着するのは明日の早朝になるわよ」
「野宿だねぇ・・・だけど雲行きからと、風が湿り気を帯びているので雨になると思う」
「雨は困りますね・・・何かせめて廃屋でもあればいいのですが」
ヴィーシャとヤヒスのやり取りを聞いてミードリが顔を曇らせる。
「大丈夫でしょ、さっき手に入れたシルフの水膜があるよ、説明通りなら優秀な天幕になるはずさ」
「むぅ・・・本当に大丈夫なのかマサカツ」
リャヒはいまいち信用できないと言う表情でマサカツの言葉に答えた。
「古代の異物は想像よりも、現代よりもはるかに優れたものがあることが少なくない、駄目だったらそれまでのこと」
パムはシルフの水膜に望みを見出しているようだ。
「うん・・・あそこに大木の群れがあるね、チヌック、あそこに降りてくれないか」
「は、我が主」
チヌックは地上に向かって滑空し、大木の元に降り立った。
全員が地上に降りてリュックを開け、各々何がしかの道具を取りだして野宿の準備をしている。
「んー・・・ここなら木の根も張り出していないな、良し、ここにしよう」
「そうだね」
マサカツとヤヒスは白い板を取りだして無限水筒から水を垂らした。
板は水蒸気を上げてふくらみ、カイコまゆの様な形に膨らみ、ヤヒスとマサカツは推したり引っ張ったりして試したが、存外頑強で確かに大風にも耐えそうな気配がある。
「よし、耐水性も試してみよう」
マサカツはそう言うと無限水筒からどばどばと水を出してシルフの水膜にかけ出したが、中で様子を見ているヤヒスが言うには中から見ると水が弾の様に弾かれて落ちていくと言うことだった。
「うん、これなら良さそうね」
様子を見に来たヴィーシャが感心した表情で眺めている。
「ですが、どうも出入りに難がある気がしますね、普通の天幕の様に大きく開口して出入りができると助かるのですが」
ミードリがそう言うと、横にいるパムもうなづいている。
それを聞いたマサカツはしばらく考え込んだ様子を見せると。
指を使って膜に大きく四角形を描いた、するとその部分だけ空間が開いて出入りできそうな様子だった。
「む、これはすごいな、不可思議である・・・古代の文明とはいかほどの技術を持っていたのか想像の外にあるな」
リャヒはそう言うと水膜の中に入って行った。
フィスもそれに続き、中の仕切りに大きく丸を描いた。
「ほぅ・・・描いたとおりに空間が開くのう、これは出入り自在だのう」
その後、各々が水盤に対し、色々と試してみたが、押すと空間が伸び、引っ張るとしぼむことが分かった。
「すごいわね・・・これはすごいわ・・・」
ヴィーシャは笑顔で水膜から出入りしている。
そのうちに生活用品を中に運び込み、魔石コンロを操作していたところで、ぽつぽつと雨が降り出し、その内には規模の大きな降雨となり、風も出てきたが、シルフの水盤は少し揺らぐ程度で、雨は全く侵入してこなかった。
「うぅ~~~すごい、フライパン、水筒、水盤、野宿がどんどん快適になっていくぞ」
ヤヒスは湯を沸かしながら満面の笑みでそう言った。




