シルフの水膜①
黄昏パーティー全員で洞穴に入ると足元はぐしょぐしょでくまなく黄色に染められている。
「あっ扉がある」
「ボスでもいるのか別のフロアに続くのか」
ヤヒスの言葉を聞いたパムが少し警戒した様子を見せた。
「んじゃ扉を開けるぞい」
フィスはそう言ってドアの取っ手を持ち思い切り引きちぎると、それは洞穴の中央付近に大きな音をかけてころがった。
「フィスにかかっては鍵があっても無くても関係なさそうね」
「そうですね・・・もし今のも頑丈な鍵と扉だったとしたら設置した人が少し気の毒になります」
ヴィーシャはあきれた顔をして、それを聞いたミードリは少し笑った。
「うむ、ん?小部屋にチェストが置いてあるぞ、それも小さなものだ」
リャヒが中に入りチェストを持って外に出てきた。
「ふーん・・・なにかあるかもしれないから開けた場所、岩棚に出て開けて見よう」
マサカツがそう言うと全員その通りであると言うような言葉を発した。
「よし、さてここらでチェストを開けてみよう」
ヤヒスはかがみ込んでチェストのボタンを押してチェストを開いた。
「ん・・・手のひらほどの白い板が入っておるのう・・・なんぞ?」
「紙も入っているぞ」
フィスは目を細めてチェストを見つめ、マサカツは紙切れを取りだして広げた。
「古代語ね、今では消えてしまった技術かもしれないわ」
「ふむ、此はシルフの水膜なり、板に水を灌ぐと天幕となり、豪雨、豪風に抗うこと強烈なり」
「どういうことでしょうか・・・」マサカツが読み上げた紙切れをのぞき込みながらミードリは怪訝な顔をした。
「水をそそぐと天幕になる、そう言う風に解釈できる」
パムは板を手に乗せてそう言った。
「なら試してみようよ」ヤヒスの一声から、板切れに水をそそぐことになった。
岩棚の開けた場所で板切れに水をそそぐと、それはゆっくりと膨らみ、白く大きなまゆの様な形の大型の水膜になった。
マサカツは水膜の接地部分に手をやり、何事かいじっている。
「すごいな・・・ピンピンに岩棚に固着している、これなら大風にも耐えるだろう」
「ねぇでもこれどうやって入るのよ、くくり紐もボタンも無いわよ」
ヴィーシャがそう言って水膜に触れると、手がそのまますっぽりと水膜に貫通していった。
それを見たリャヒは歩き出し、そのまま水膜に飲み込まれた。
「なっ!?すっぽりと包まれるように中に入れたぞ!?」
水膜の中からリャヒの声が聞こえてきたので、全員すぽすぽと天幕の中に入った。
「すごいですね・・・天井は立ったまま入れますし探っただけでも三室あり、全員寝られます」
「どう言う仕組みなんだ?全く理解できない」
ミードリと向き合ったマサカツは困惑の声を出す。
「のうのう、天井と裾の方に穴が開いておるぞ、水が漏るんじゃないかのう?」
「空気穴じゃないの?それに穴の部分は膜が二重になっているよ」
フィスはヤヒスの顔を見て天井を指さし、それを見たヤヒスは質問に答えた。
その後全員外に出てシルフの水膜を見定めたが、マサカツが疑問符を発した。
「これ・・・どうやって畳むの?」
全員が「あっ」と言う表情に変わり水膜を観察し始める。
「ねぇねぇ、ここにある赤い丸印は何なのかしら?押してみていい?」
ヴィーシャがその赤丸を押すと、水膜から水蒸気が上がり始めたかと思うとそれは小さく収縮し、やがて元の手のひら大の白い板になった。
「こ・・・これはすごい、仕組みは全く分からないが野宿が劇的に改善される」
マサカツは板を拾い上げて振り返り、仲間たちを見やった。




